仮面の日々こわれるまで

  
「ふぅ……」
 私はキーを叩く手を止め、一つ大きく伸びをした。
 取引先へのプレゼンの為の資料作り。
 しかし、期日は迫るが、思う様に進まない。今日もまた、残業。
 いらつきを鎮める様に、マグカップのコーヒーを一口すする。生温い、ほろ苦い液体が口中に広がる。
「疲れてるのか? 今日は切り上げたらどうだ?」
 奥の机から、課長の声。そう言う彼の顔にもやや疲労の色が見える。
「大丈夫です。もう少しできりがつきますから」
 ここで、はいそうですかと言って帰る訳にもいかない。上司も残業しているという事もあるが、何より……
「まっ、コイツは結構頑丈ですから、24時間コキ使っても大丈夫でしょう。大体色気も何もない、仕事一筋の女ですから」
 ……などとほざくのは、同期の佐伯。私を勝手にライバル視しているのか、何かにつけて私に嫌みを言うこの男の手前、弱みを見せるつもりはない。仕事の上では、この男に負けたくはないのだ。それに……
 まだ何か言っている佐伯を無視し、キーに指を走らせる。
 そして、そうしながらも、左手をスカートの中に潜らせた。
 左の太腿に、ストッキングに挟まったものがある。ピンクローターのコントローラーだ。
 そっとスイッチを入れると、私の熱くぬかるんだ秘所で微かな唸りを上げ始めた。
「……っ!」
 微かに上がる嬌声。慌ててかみ殺す。
 誰も気付いた様子は無い。課長も、佐伯も……
 密かにほくそ笑むと、更に振動を強くしていった。
 痺れる様な快感が、背中を駆け上がっていく。

 ……これが、私の本性。
 仕事に生きる振りをしながら、淫らな行為にふける自分。
 仮面の下の、私。
 この日々は、一体何時まで続くのだろう。
 きっと、私が壊れてしまう時まで……

  

投稿日:2004/09/25(Sat) 10/08改訂版掲載