闇巫女

(萌雀タイトル:闇の俺の巫女さん
  

  

 人里離れた山奥。朽ちかけた社が、鬱蒼と生い茂る草木の中に埋もれている。
 時折僅かな風音がする以外、しんと静まり返った闇の中。
「んっ……はぁ……あっ!」
 俺の上で、月光に照らされ妖しく蠢く白い身体。
 その秘唇は俺を捕らえ、優しく、しかし決して逃がさぬ様包み込む。
 彼女は、この忘れられし神社の、巫女。
 忌み嫌われ、追われしものの、裔。
 これは、彼等まつろわぬものを慰める、交合の儀式なのだ。
 封じられ、名を奪われた旧きカミ。
 彼等が代わる代わる俺達の中に入り込み、震え、叫び、歓喜した。
 恍惚の境地にいる俺達は、ただ、それを眺めているだけであった。
 そして、『祭り』は唐突に終わりを告げる。
 彷徨える全てのモノ達が、俺達二人の中に入り込んだのだ。
 熱い。
 身体が燃える様だ。
 あたかも、魂が燃える様に。
『――――――!!』
 声にならぬ叫び。
 俺達の、そして、モノ達の、声。
 二人の身体が淡い光を発し、そして再び唐突に光が消えた。
 辺りは再び、静寂に包まれた。
――感謝する、我等が裔よ。力を奪われた身とはいえ、これからも汝等を守護すると誓おう……
 闇に、いんいんと響く声。
 彼等の気配が急速に消えて行く。
「睦月……」
 俺は、気を失った彼女を揺り起こした。
「あ……」
「大丈夫か? もう、彼等は帰った」
「ごめんなさい……」
 彼女の瞳から、清冽な涙が溢れる。
「大丈夫だ。俺がいる」
「いいえ……。また、貴方を巻き込んでしまって……」
「何を言う」
 俺は、彼女の涙を拭いつつ微笑んでみせる。
「睦月は、俺のものだ。だから……気にするな。苦しみも、二人ならば分ちあえる」
 俺は、再び涙を流す彼女を抱き締めた。
 中天にかかる月が、俺達をただ見下ろしていた……

  

  

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