ほんとのきもち


 P9

 なのにゾロは、本来ならチョッパーにだけするようなことを、ウソップに仕掛けてくるようになった。
 動物は餌をくれる人に懐くというが、ゾロの場合は、やらせてくれる人に懐いたとでもいうのだろうか。
 ゾロは大型動物なので、ウソップはたやすく押し倒されたり押しつぶされたりしてしまう訳だが、それでもちゃんと制止の言葉は聞くし、嫌がることは無理強いしない。
 それに、やはり一応ゾロは人間なので、やった後には毎回反省するのか罪悪感が沸くのか、悪かったなとかすまねえとか、ウソップの頭を撫でて謝ったりしてくる。
 謝るくらいならやるなと云いたいところだが、十九歳の性欲は、十七歳の性欲よりも上をいくのだろう。
 抑えきれないらしい衝動が可哀相なので、ウソップはいつもどーんと、気にするなと云ってやるのだ。
 ウソップは海のように広い心の男を目指している。
「こらこら、夜まで待てよ、な?」
 かと云って、昼間からいかがわしいことを仕掛けられてくるのはとても困るのだ。
 突然抱きつかれて、首や肩の後ろに顔を擦りつけられたり、唇を奪われたりすること自体は、別に嫌という程でもない。
 何度か相手をしているうちに、ウソップも慣れて、入れられることも気持ち良くなってきている。
 ゾロが挿入前に色々気をつけてくれているのもあるのだろうが、今は逆に、嬌声を殺すことの方が大変になってきてしまったくらいだ。
 唇を噛んでいたら真っ赤になって腫れあがり、元々分厚いウソップの唇がものすごいことになったのは、微妙に笑えない失敗談だ。
 それ以来は、タオルを噛んで我慢したりしている。ゾロは肩に噛みついてもいいというが、いつも上半身裸で鍛練をしている彼の肌に歯型など残したら、注目を浴びそうなので遠慮しているのだ。
 ゾロの口でウソップの口を塞いで、声を消すのに協力してくれることもあるが、むしろ呼吸の調整が自分でできなくなるのであんまりありがたくない。が、ゾロのくせに人を気遣おうとしている精神が尊いと思うので、厚意はちゃんと受け取っている。
 とにかくまあ、ウソップもゾロに使われている立場とはいえ、ちゃんと気持ち良くしてもらえているので不満はないのだ。
 しかしそれを誰かに見られてしまうのは、とってもよくないことだろう。
 ウソップもあまりゾロとの関係を人に知られたくはないし、ゾロが悪い目で見られるのも可哀相だ。
 少なくても、女達や、ウソップに対して過保護なところのあるサンジは、良く思わないに決まっている。
 いや、既にサンジは不審に思っている様子で、最近は誤魔化すのが一苦労になってきているのだ。

P27

「体洗う。」
 そのまま浴槽から出て、ゾロはシャワーを浴びながら、体を洗い始めてしまった。
 怒ったということではなさそうなので、ウソップは、背中を洗ってやるのはなかなかラブラブっぽいんじゃないだろうか、ゾロの大事な背中だし、と思いつつ眺めていたが、それよりもっと、と、違うことを思いついた。
 そうだ、あれだ。
 当たり前だがしたことなどないし、進んでやりたいことかと云われると悩むけれども、多分きっとゾロが喜んでくれて、とっても恋人らしいっぽいような気がすること。
 ゾロを誤解していたお詫びに、これならばと思えるようなことだ。
 ウソップはごくんと唾を飲むと、自分も浴槽から出た。
「……ゾロ。」
 そろりと、後ろからゾロに抱きつく。
「どうした。」
 返される声は優しくて、ウソップはゾロの肩に、すり、と顔を擦りつけた。
「なあ、ゾロの……、口でしてやったら、嬉しい…?」
 ウソップの言葉に、抱きついていたゾロの全身が、びしりと強張るのが伝わってきた。
 密着した背中から心臓の鼓動の激しさまで伝わってくるようだ。
「……今日は、本気で、積極的なんだな。」
「こういうおれは嫌か?」
 羞恥心が足りないだろうか、けれどでも、と、ウソップは思う。
 今までウソップからゾロを誘うことはなかったし、自分から何かしてやろうと思ったこともなかった。
 すれば気持ちがいいから反応はするし、望まれて握ってやったこともありはする。けれど、誤解だったとはいえ、体を提供してやっているのだから充分だと、それ以上をウソップからしてやる必要はないと、思い込んでいたからだ。
 けれど、そうではなかったから。
 ウソップもゾロに、色々したい。突然の変化にゾロを不審がらせてしまうのも困るが、でも、ウソップも、ゾロに何かしてあげたい。
「違う、ウソップ。」
 ゾロはぶんぶんと首を振り、緩んだ顔をして笑った。
「すげえ、嬉しい。」
「うし。じゃあしてやる。」
 ウソップの宣言に、ゾロはシャワーを止めて、壁を背に向けた。
 その場にウソップが膝を付くと、ちょうどゾロのものが目の前に来る。
「……あの、まだ、何もしていませんが。」
 まださわってもいないのに、むくむくと成長しているものを見て、ウソップは思わず突っ込んでしまった。




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