つつきあい おつきあい


 P4 

 ゾロとウソップは、おつきあいをすることになった。
 今まで特に意識をしたことはなかったが、一緒にいるとほんわかするし、なんとなく嬉しいし、ちょっとだけきゅんとする。
 自分のそんな気持ちに気付くことができて、よかったと思う。
 しかし。
「つきあうって、何をすればいいんだ。」
 今までゾロは剣一筋だったので、誰かと交際などしたことがない。
「いやー、おれも誰かとつきあったことないしなあ……。」
 尋ねるゾロに、ウソップも困ったように答えた。
「とりあえず、つつきあってみるか?」
 ウソップはぴんと伸ばした人差し指で、ゾロの腕をつんつんとつついてきた。
「つが一つ多いんじゃねえのか。」
 ゾロもそう云いながら、ウソップをつつき返す。
「……すいません、もちょっとそーっとお願いします。」
「このくらいか?」
 ウソップの肩を、もひとつ、つん。
「やー、もっともーっと、そーっと。」
「こうか。」
 ゾロは指を向ける方向を変え、人差し指より長く伸びているウソップの鼻の先に、自分の指先をそーっとくっつけた。
 ここなら面積が狭いから、そろりとつつけるだろうと、その程度の気持ちだったのだけれど。
「………………。」
 何やらいきなり、ウソップが、ふうっと真っ赤になった。
「ど、どうした?」
「い、いや、別に……。」
 ウソップはふるふると首を振って、それから、一歩だけ後ろに下がった。
 ので、ゾロは一歩、ウソップの方に進む。
 と、更にウソップが離れた。
 ゾロもまた進む。
 そんなふうにどんどん移動していくうちに、ウソップの背中が船の柵にぶつかった。
「…………何してんの、おまえら。」
 そこに、呆れ切った声をかけてきたのはサンジだった。
「おやつ、呼びに来てやったんだけどさー……、つい見入っちまったじゃねえか。早くダイニング行け、もうねえかもしんねえけど。」
「んなっ、ひでえよサンジ、早く声かけろよ!」
 サンジの言葉に、ウソップは血相を変えて走っていってしまった。
 今度はゾロは、何となくウソップを追えなかった。
「……おい。」
 その代わりに、ぎろりとサンジを睨む。
「しらねーよ。てゆーか、てめえら何やってんの。ウソップ苛めんじゃねーよ。」
  
P7

 なのでゾロは、ますますしっかりとウソップを抱きかかえる。
「そうか。おれもあったかい。」
 ウソップがゾロの背をぎゅっと抱きしめたので、ゾロもますます暖かくなった。
 体だけじゃなくて、気持ちもなんだか暖かくなるのが、ゾロはとても気に入った。
 それはどうやらウソップものようだ。
 それ以来、寒くなくても、ゾロとウソップは、抱き合ったりして、体をくっつけるようになった。



 壁にもたれて座ったゾロの膝の上に、ウソップが更に座るのが、最近の二人のお気に入りの体勢である。
「あら、仲良しさんね。いいわね。」
 そんな二人を見て、ロビンがにっこり笑ってくれた。
「いいだろ。」
「うらやましいわ。」
「貸さねえぞ。」
 ゾロはむぎゅうとウソップを抱きすくめて、ロビンに宣言した。
「……私、ウソップを膝に乗せたい訳ではないのだけれど……。」
「当たり前だろ、何云ってんだよゾロ!」
「ああ……、すまねえが、ここはウソップ専用だ。」
「ゾロの膝に座りたい訳でもないのよ……?」
「じゃあ何がしたいんだ。」
「仲が良くてうらやましいわねって云ってるの。」
「いいだろ。」
「いいわね。」
 ゾロはわしわしと、ウソップの頭を撫でた。
「良くない!!」
 そこに、暗雲を背負って現れるのはナミである。
 いつもながらに雄々しい姿だ。
「あんた達ね、人前で恥ずかしげもなく、いっちゃらべったらしてるんじゃないわよ!」
「恥ずかしくねえし。」
「……おれはちょっぴり恥ずかしいんですけど……。」
「いいから隠れてやりなさい! ロビンもにこにこしてるんじゃないわよ! ばかあああっ!!」
 ナミがクリマタクトを振り上げ、空気がびりびりする。
 雷の落ちる気配である。
 これがナミの場合、本当に文字通りなので恐ろしい。
「逃げるぞゾロ!」
 ウソップはゾロの腕をつかんで、大慌てで逃げ出した。
 ロビンはそれを見ながら、楽しくてたまらないというように、くすくすと笑っていた。




Back