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ゾロとウソップは、おつきあいをすることになった。
今まで特に意識をしたことはなかったが、一緒にいるとほんわかするし、なんとなく嬉しいし、ちょっとだけきゅんとする。
自分のそんな気持ちに気付くことができて、よかったと思う。
しかし。
「つきあうって、何をすればいいんだ。」
今までゾロは剣一筋だったので、誰かと交際などしたことがない。
「いやー、おれも誰かとつきあったことないしなあ……。」
尋ねるゾロに、ウソップも困ったように答えた。
「とりあえず、つつきあってみるか?」
ウソップはぴんと伸ばした人差し指で、ゾロの腕をつんつんとつついてきた。
「つが一つ多いんじゃねえのか。」
ゾロもそう云いながら、ウソップをつつき返す。
「……すいません、もちょっとそーっとお願いします。」
「このくらいか?」
ウソップの肩を、もひとつ、つん。
「やー、もっともーっと、そーっと。」
「こうか。」
ゾロは指を向ける方向を変え、人差し指より長く伸びているウソップの鼻の先に、自分の指先をそーっとくっつけた。
ここなら面積が狭いから、そろりとつつけるだろうと、その程度の気持ちだったのだけれど。
「………………。」
何やらいきなり、ウソップが、ふうっと真っ赤になった。
「ど、どうした?」
「い、いや、別に……。」
ウソップはふるふると首を振って、それから、一歩だけ後ろに下がった。
ので、ゾロは一歩、ウソップの方に進む。
と、更にウソップが離れた。
ゾロもまた進む。
そんなふうにどんどん移動していくうちに、ウソップの背中が船の柵にぶつかった。
「…………何してんの、おまえら。」
そこに、呆れ切った声をかけてきたのはサンジだった。
「おやつ、呼びに来てやったんだけどさー……、つい見入っちまったじゃねえか。早くダイニング行け、もうねえかもしんねえけど。」
「んなっ、ひでえよサンジ、早く声かけろよ!」
サンジの言葉に、ウソップは血相を変えて走っていってしまった。
今度はゾロは、何となくウソップを追えなかった。
「……おい。」
その代わりに、ぎろりとサンジを睨む。
「しらねーよ。てゆーか、てめえら何やってんの。ウソップ苛めんじゃねーよ。」
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なのでゾロは、ますますしっかりとウソップを抱きかかえる。
「そうか。おれもあったかい。」
ウソップがゾロの背をぎゅっと抱きしめたので、ゾロもますます暖かくなった。
体だけじゃなくて、気持ちもなんだか暖かくなるのが、ゾロはとても気に入った。
それはどうやらウソップものようだ。
それ以来、寒くなくても、ゾロとウソップは、抱き合ったりして、体をくっつけるようになった。
壁にもたれて座ったゾロの膝の上に、ウソップが更に座るのが、最近の二人のお気に入りの体勢である。
「あら、仲良しさんね。いいわね。」
そんな二人を見て、ロビンがにっこり笑ってくれた。
「いいだろ。」
「うらやましいわ。」
「貸さねえぞ。」
ゾロはむぎゅうとウソップを抱きすくめて、ロビンに宣言した。
「……私、ウソップを膝に乗せたい訳ではないのだけれど……。」
「当たり前だろ、何云ってんだよゾロ!」
「ああ……、すまねえが、ここはウソップ専用だ。」
「ゾロの膝に座りたい訳でもないのよ……?」
「じゃあ何がしたいんだ。」
「仲が良くてうらやましいわねって云ってるの。」
「いいだろ。」
「いいわね。」
ゾロはわしわしと、ウソップの頭を撫でた。
「良くない!!」
そこに、暗雲を背負って現れるのはナミである。
いつもながらに雄々しい姿だ。
「あんた達ね、人前で恥ずかしげもなく、いっちゃらべったらしてるんじゃないわよ!」
「恥ずかしくねえし。」
「……おれはちょっぴり恥ずかしいんですけど……。」
「いいから隠れてやりなさい! ロビンもにこにこしてるんじゃないわよ! ばかあああっ!!」
ナミがクリマタクトを振り上げ、空気がびりびりする。
雷の落ちる気配である。
これがナミの場合、本当に文字通りなので恐ろしい。
「逃げるぞゾロ!」
ウソップはゾロの腕をつかんで、大慌てで逃げ出した。
ロビンはそれを見ながら、楽しくてたまらないというように、くすくすと笑っていた。
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