寒い時には体の首ってつくところをあたためるといいよ!


 P3~4
 
「うう、寒い寒いーっ。」
 冬島が近くなってきたある晩、夜番のゾロに夜食を届けに来たサンジは、飛びつくようにゾロにしがみついてきた。
 その体は、確かに随分と、ひんやり冷たくなっている。
 サンジはいつものスーツの上に、厚手の上着を羽織ってはいたが、展望台に登ってくるわずかの間にも冷え切ってしまったのか、歯ががたがた鳴っていた。
 ゾロも毛布に包まっていたくらいなので、細身のサンジにはますます寒さが堪えたことだろう。
「ほら、来い。」
 前で合わせていた毛布を開いてやると、サンジは震えながら中に入ってくる。
 まずはしっかり上半身をくるみ込んでやると、サンジはぎゅううとゾロに抱きついて、密着してきた。
「はー、ゾロ、あったけえ……。」
 サンジはまだ寒さに体を強張らせているものの、ゾロの肩に顔を押し付け、背中に回した手の先を、腹巻の中に突っ込んで、少しでも暖を取ろうとする。
「つめてっ、……ったく、氷みたいな手ぇしやがって。」
「あっためてー。」
 ゾロの口からは思わず苦情が洩れるが、一生懸命くっついてくるサンジを突き放すことはせず、肩や背中をごしごしとさすってやる。
 体の心まで凍えきっているようで、ゾロもサンジの冷たさに何度も震えてしまったが、少しでも自分の体温を分け与えようとした。
 毛布から脚がはみ出しているのに気付き、ゾロはそちらも毛布で覆ってやろうとする。
「もっとこっちこい。」
「んー。」
 胡坐をかいたゾロの脚の上でサンジはもぞもぞと身動ぎ、毛布の中から、ぽいぽいと靴が蹴りだされる。
 サンジはゾロの膝の上でしばらくごそごそしていたが、深く脚を降り曲げて、足をゾロの太腿に揃えて乗せたところで落ち着いたようだ。
 爪先は随分と冷たく、サンジは足の裏で何度もゾロの腿を踏んで、少しでもあたためようとしているらしい。
 サンジは尻をゾロの組んだ脚の間に落とし、長期戦の様子である。
 今夜はここで寝るつもりなり、それはそれで構わない。寒がりで冷え性の恋人を、一晩だっこしてあたためてやるくらいの甲斐性はゾロにはたっぷりとあるし、ゾロの方だって一人でいるよりはあたたかい。とはいえゾロには、あまりにも寒くなったら、トレーニングで体をあたためる方法もあるのだが。
 もしサンジが何かしたいつもりがあるようなら、それはそれでやぶさかではないのだが、今はとにかく、サンジをあたためてやることが先決だ。
 ゾロは手を伸ばして、サンジの足の先をぎゅっとつかんだ。
「ふわっ!?」
 驚くサンジに構わず、靴下の上から、足の指をむぎゅむぎゅと揉んでやる。
「ひあっ、ふはっ、くすぐってえって!」
「つめてえんだよ。」
 サンジの足指が、激しく曲げ伸ばしして逃げようとする。
 しかし、普段はとても器用に動いて、ゾロに悪戯をするサンジの足指も、靴下の中では攻撃力が半減以下だ。
 体の末端は冷たくなりやすい。
 サンジの手の方はゾロの腹巻の中にあるから問題ない。なのでせっせと足先をあたためてやっているのに、サンジはくすぐったそうに笑って、何度も身をよじっている。
 けれどもいつのまにか、歯は鳴らなくなっているようだ。いくらかサンジもあたたまってきたらしい。
 先刻までは青かった唇に、自分のそれをふれさせる。
 ぐりぐりと軽く押し付けて、上下を交互に軽く挟み、少しだけ吸ってやる。何度かくり返すと、サンジが舌を伸ばしてきたので、もういいかと顔を離した。
 予想通り、色の薄いそこも、赤みを取り戻してきている。
 サンジはもっとキスをしたそうな、甘えた様子でゾロに顔を擦りつけてきていたが、急を要するほどはもう冷えていないだろう。
「そろそろ、メシ、いいか。」
「お、おう、そうだな。先にメシな。」
 サンジはゾロとべたべたするのが好きだが、何か食べさせるのもとてもとても好きなのだ。
 サンジは笑顔でいそいそと、夜食運搬用の小さなバスケットを引き寄せた。
 毛布の中から片腕だけ伸ばして、せっせと支度をする。
「まずは手え拭けな。」
「めんどくせえ。」
 ゾロが無精がると、サンジはおしぼりでゾロの手を拭いてくれるので、それを目当てに今夜もそう云う。ゾロの密かな楽しみである。
「よしっと。ほい、おにぎり。今夜は、おかかと昆布のつくだにとたくあん刻んだ奴な。悪いな、そろそろ、あんまりいいもん残ってなくて。」
「んなことねえ。これも好きだ。」
 食材が少なくなってきてはいるようだが、ナミの予想では、明日明後日には次の島が見えてくる筈だ。なのでサンジもとりたてて不安がる様子は見せていないが、そんなサンジをなだめる為に云った言葉ではもちろんない。
 豪華系なおにぎりも、地味系のおにぎりも、それこそ海苔さえ巻かない塩にぎりだって、サンジが作れば本当にうまいのだ。
 サンジははにかんで、ゾロの肩に頬をぶつけてくる。
「じゃあどうぞ。」
「おう。いただきます。」
 出した手におにぎりが乗せられ、サンジはゾロの膝に乗ったまま、小さな水筒に入れた熱いスープを注いでくれる。
  

既にできているサンゾロです。ゾロがサンジをあたためてあげているうちに、段々脱線してくるいちゃらぶいえろ本です。




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