マイメロちゃんとカノンちゃんとサガちゃんとピアノちゃん | |
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カノンちゃんとマイメロちゃんは、嬉し恥ずかしいちゃらぶな恋人同士です。 女神がある時、カノンちゃんに演劇のチケットをくれました。 「お子様向けでミュージカル仕立てで楽しい話だから、ぜひマイメロさんと、お友達を誘って見に行くといいわ。」 「わーい、ありがとうございます、女神!」 渡されたチケットは4枚。 カノンちゃんは満面の笑みで、女神にお礼を云いました。 可愛いお気に入りのカノンちゃんがとても嬉しそうに笑ったので、女神もとっても御機嫌です。
しかし。 カノンちゃんは、マイメロちゃんと歌ちゃん、それから、歌ちゃんに彼氏でも友達でも誰か連れてきてもらって、4人で行こうと思ったのです。 けれどもその日は歌ちゃんのお友達の誕生パーティがあるので、どうしてもいけないとのこと。奏さんや琴ちゃんにも聞いてみましたが、パスされてしまいました。多分御用があったのでしょう。彼女達が、うさぎのぬいぐるみを連れた超絶美形の外国人と一緒に舞台を見るのを、色々な意味で忌避したとは、カノンちゃんは知る由もありません。 それに今優先すべきは、チケットあと2枚をどうするかということです。 「あのね、ピアノちゃんが来てくれるって。だからカノンさんも、誰かもう一人連れて来て。おねがい。」 1枚は、マイメロちゃんがお友達を連れてくることになりました。 カノンちゃんはどうしようと思いましたが、とりあえずサガに声をかけてみると、喜んでOKしてくれました。
そして当日。 カノンちゃんはサガちゃんとおそろいのスーツを着て、ばっちり決めていました。 前に女神が作ってくれた、一張羅のスーツです。カノンちゃんは、日本の格安スーツ屋さんの、2枚目は半額のとかでも全然構わなかったのですが、カノンちゃんとおそろいを着たかったサガちゃんと、カノンちゃんを飾り立てたい女神に押し切られたのでした。 でも、作ってもらってよかったなあと思うひとときです。 可愛いマイメロちゃんと観劇デートなんですもの。 お子様向きとはいっても、女神がチケットをくれたくらいですから、一流劇場の有名な劇団の作品です。 良い格好をした人がたくさん来ていましたが、その中でも、サガちゃんとカノンちゃんの回りには空間ができて、非常に目立っていました。 ひとりでも人の目を引く美丈夫なのに、全く同じなのが2つも並んでいるのですが、人々が呆然と見つめるしかないのも無理はありません。 ちなみに今日は、マイメロちゃんがマリーランドからくるピアノちゃんと待ち合わせて、それから2人で劇場に向かうとのことだったので、双子は先に来て、2人の到着を待っていたのでした。 「マイメロちゃん、今日も可愛い!」 ふわふわパラソルで飛んできたうさぎさんとひつじさん。その片方、カノンちゃんの意中のマイメロちゃんを見た途端、カノンちゃんは頬を染めて満面の笑みになりました。 「とっても素敵な耳飾りだね。マイメロちゃんにとっても良く似合ってる。」 「ふふ、カノンさんありがとー。カノンさんのスーツ姿もとってもかっこいいわ。」 「えへへ、マイメロちゃんありがとー。マイメロちゃんとデートだから、がんばって着てきた!」 きゃっきゃと幸せそうな恋人同士の図です。たぶん。 今日のマイメロちゃんは、いつもよりも大きくて豪華な花飾りを耳に付けてきていました。 「あっぱめー。」 幸せそうな弟の様子に、立派になって、カノン……と目を潤ませていたサガちゃんは、ふわりと足元に着地したピアノちゃんの声に我に返りました。 「失礼しました、……ミス。ピアノさんですね。」 「あぷー。」 サガちゃんはピアノちゃんに膝をついて御挨拶します。 「私はサガ。マイメロさんとお付き合いさせていただいているカノンの兄です。」 「うぷー、あっぱー。」 「いえいえこちらこそ。今日はどうぞよろしくお願いします。」 にこやかに、サガちゃんとピアノちゃんも挨拶を交わしています。 ピアノちゃんは、マイメロちゃんの頭巾より薄いピンクの、ふわふわもこもこのひつじのぬいぐるみさんです。 その時、開演の案内の放送がかかりました。 「まずは中に入ろう、カノン。飲み物やパンフレットを買ったりもするのだろう?」 サガちゃんはピアノちゃんを失礼して抱きあげ、カノンちゃんをつついて促すと、4人での挨拶は後回しにして、会場の中へと向かいました。
観劇の後には、女神が近くの高級レストランのディナーを予約をしておいてくれました。 美しい双子とぬいぐるみの組み合わせは、ここでも注目を集めます。 けれどサガちゃんは人目を集めるのには慣れていますし、いつでも堂々としています。カノンちゃんも、マイメロちゃんが可愛いから皆見てる…!としか思いません。 おいしい御飯と、楽しいミュージカルの余韻に、サガちゃんも非常に御機嫌で、4人の食事と会話は楽しく和やかに進みました。 しかしここで問題がひとつ。 カノンちゃんにはピアノちゃんの言葉が判りません。 マイメロちゃんが合間合間に、慣れた様子で訳してくれていますが。 「なるほど、そうでしたか。……あなたは演劇に造詣が深くていらっしゃるようだ。」 「あっぱめー。」 「ピアノちゃんのポエムはマリーランドで一番なのよ。お芝居にも詳しいの。前に、歌ちゃんの学校の文化祭でもね……。」 マイメロちゃんはカノンちゃんに、その時のお話をしてくれたりしました。 そしてその間にも、おいしいお食事は進み、サガちゃんとピアノちゃんの会話も随分と盛り上がっているようです。 どうやらサガちゃんの言葉を聞いている限りでは、随分と難しい演劇論などにも至っている様子。 カノンちゃんにはあんまりよく判りません。マイメロちゃんも同じく判っていませんが、 「ピアノちゃんとサガさん、仲良くなってくれて嬉しいわ。」 とにっこり微笑むマイメロちゃんに、カノンちゃんはうっとり見惚れているのでした。
「今日は楽しい時間をありがとう、レディ・ピアノ。」 帰りは暗くなってしまったので、まずは美紀ちゃんちに泊まるというピアノちゃんをお送りしました。 その頃にはもういつの間にか、サガちゃんはピアノちゃんをそう呼んでいました。 「良い夢を。」 「ぷきゅるー。あっぱー。」 サガちゃんはピアノちゃんの手を取り、その指先らしきところにキスをしていました。 そして歌ちゃんのおうちにマイメロちゃんもお送りし、双子はぷらぷらと夜道を歩いて城戸邸まで向かいます。今夜は双子も、女神のおうちにお泊りです。 「レディ・ピアノは素晴らしい女性だな。」 サガちゃんがぽつんと、そんなことを呟きました。 「……あのさ、サガ、もしかしてさ……。」 カノンちゃんはぽりぽりと頭を掻いて、サガちゃんに答えます。 「ふっ、……この私がまさか、女性に心を動かす日が来るとは思わなかった……。」 照れくさそうな嬉しそうな、そんなサガちゃんの表情は、カノンちゃんが初めて見るものです。 「彼女は聡明で博識でありながらも、勇敢さと力強さと乙女の心を持ち合わせている女性だ。……カノン、どうかまた、私に彼女と会う機会を作っては貰えないだろうか。」 「もちろんだサガ!」 サガちゃんに頼られたのが嬉しくて、そしてサガちゃんの初恋を喜んで、カノンちゃんはサガちゃんの手をむぎゅと握りました。 例えカノンちゃんに、ピアノちゃんの言葉を理解することができなくても、サガちゃんがこれほど褒めるのですから、彼女とのお話が、サガちゃんには本当に楽しかったのでしょう。 「俺も、マイメロちゃんといてすごくすごく幸せなんだ。そのマイメロちゃんの親友だ、ピアノさんもきっと素敵な女の子だと思う。全力で応援するぜ!」 「ありがとうカノン、我が双子の弟よ!」 「サガ!」 夜道で双子は激しく抱き合いました。 そして明日から、カノンちゃんはサガちゃんと一緒に、熱心に夢ヶ丘に通うことになるのでした。 ぬいぐるみに夢中な金髪美形双子の存在は、すぐに町中に広がるでしょう。 るるちっちー。
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2010/12/21 |
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