マイメロちゃんとサンゾロとウソロビ 

 今日も元気に、ゾロとサンジが喧嘩をしています。
「うるせえ、この素敵眉毛!」
「何だと、てめえ、クソはらま――――」
「素敵なの?」
 そこに、可愛い可愛いマイメロちゃんの、とってもとっても可愛い声が響きました。
 サンジとゾロは、びっくりして固まります。
「よかったわね、サンジくん。ゾロくんが、サンジくんの眉毛、素敵だって。」
 マイメロちゃんは、にこにこしながら云いました。
「えええええ、違うよマイメロさん、そういうんじゃなくって……っ。」
 サンジは慌ててマイメロちゃんに訂正をしようとし、ゾロにも何か云えと目線を向けました。
 そしてそのゾロは、顔を真っ赤にしていました。
「違うの?」
 そんなゾロに、マイメロちゃんは全く気付かず質問します。
「ゾロくんは、サンジくんの眉毛を、素敵だと思ってるんでしょ?」
 全く悪気のないマイメロちゃんはにこにこ。
「そっ、それは……、そりゃあ……、素敵だけどよ……。」
「ほらね! 良かったわね、サンジくん。ゾロくんに褒めてもらえて。」
 ゾロの顔は、赤いペンキを塗りたくりでもしたかのようになっていました。今ならきっと、トマトにも勝てます。
「えっ、あの、違、やー、えーと、その……。」
 そしてサンジも、ゾロにつられたように、ぽわーと赤くなり始めました。
 半ばやつあたりのように、サンジはきっと、ゾロを睨みます。
「何だよっ、赤くなってんじゃねえよ、てめえなんか、てめえなんか……、素敵腹巻のくせに…………。」
 サンジの顔も、火がついたように真っ赤になりました。
 悪魔の実も食べていないのに、何故か発火能力があるっぽい感じのサンジです。
 このままだと本当に、顔から火を吹くかもしれません。
 あらまあたいへん。布と綿でできているマイメロちゃんは、側にいるととても危険です。
「すってーきまーゆげーとすーてきーはらーまきー♪」
 けれどもマイメロちゃんは、トマトのようなゾロと、焚火のようなサンジに構わず、とろけるような甘い声で、適当な歌を歌いだしていました。
 あとでブルックさんに、きちんとした形の歌にしてもらいましょう。


「あうー。」
 そんな3人をちょっと離れたところから見て、ウソップはあーうーうなっていました。
 何だかすごいシーンを目撃してしまいました。
 そんなウソップの肩甲骨のあたりから、二本の腕がにょっきりと生えます。
 その腕がぎゅっとウソップを抱きしめました。
 ロビンです。
「人が恋に落ちる瞬間を、初めて見たわ……。」
 ロビンは、ため息をつくような、どことなく笑いをこらえているような声で云いながら、ウソップに近寄ってきました。
 ウソップも、苦笑でロビンに答えます。
 すると、ウソップの胸からもう一本腕が生えました。
 その手は指を一本ぴんと伸ばして、ウソップの鼻をぎゅっと押し下げ、離して、揺らします。
「素敵っパナ。」
「あ?」
 ロビンが何を云いだしたのか判らなくて、ウソップはきょとんとしました。
「素敵長っ鼻。」
 もう一度云ったロビンの手が、ぱっと開きました。
 その手のひらに、唇が咲いています。
 手が近付いて、ウソップの唇に、咲いた唇をちゅっと押しつけました。
「いやー、ロビンくん。そういうことは、ぜひ直接やってくれたまえ。」
 ウソップは照れたのを誤魔化すように、意味もなく胸を張りました。
 ロビンはふふっと笑います。
「……ねえ、ウソップ。」
 それから、ねだるような声で、ウソップを呼びました。
 自分にも何か云って欲しいのです。
 恋人のそんなおねだりに、答えないウソップではありません。
 ウソップは特に迷いもせず、きっぱりと云いました。
「素敵ロビン。」
「……え……?」
「ロビンはどこもかしこも素敵だからな。一箇所なんて選べねえよ。」
 ウソップは真顔で、まっすぐにロビンを見つめてそう云いました。
 ゆっくり瞬きしたロビンの顔が、先刻の、サンジやゾロに負けないくらい赤くなります。
 ウソップから生えていたロビンの腕が、花弁を散らして消えました。
 そうして、飛びついてきたロビンの本物の腕が、ウソップをぎゅうっと抱きしめたのでした。
 
2010/10/06 






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