サンジ×ゾロ 未来ネタ 

 あれから何年もの月日がたち、麦わら一味の面々も、夢を叶えたり、まだその途中だったり、色々しています。
 特にナミの世界地図を描く夢などは、それこそ世界中をあちこちぐるぐる、文字通り一周しなくてはならないのでまだまだ先が長かったりするのです。
 そんなこんなのうちに、今では船も大きくなり、下っ端も増えた麦わら一味。
 サンジは今では料理長と呼ばれています。一味の増加と、増すばかりのルフィの食欲、何より、オールブルーを見つけたコックの腕に魅せられる者も少なくなく、ルフィが乗船を許可した何人かが、サンジの下で働いていました。
 もちろんルフィは海賊王に、その隣に立つゾロも、大剣豪の称号を手に入れていました。
 隣に立つと云っても、もちろん比喩です。今でも戦闘となれば真っ先に飛び込んでいく2人ですから、もちろんそういう時は隣合い、背を任せ合っておりますが、平常時ともなれば、ゾロは隙あらばいそいそと、休憩中のサンジの隣に寄り添ってくるのでした。
 さすがにもう若い頃のような喧嘩三昧はおさまり、今では誰の目からも一目で判るほどのいちゃらぶバカップルです。
 手すりに持たれて一服するサンジの横に寄り添うゾロは、その細い腰にたくましい腕を回して密着しています。
 ゾロが何やらぼそぼそと話しかけるたびに、サンジが目を細めたり、唇の端を和らげたりするのを、新入り達が下の甲板から羨ましそうに見ていました。
「いいなあ、大剣豪……。」
「ゾロさんは毎晩あの細腰抱いて寝てるんだよなあ……。」
「うらやましいなあ……。」
 めっきり戦闘に出ることの減ったサンジはますます白く、随分と伸びてきた金髪を首の後ろで無造作に縛っています。ゾロがますますたくましくなり、背も更に高くなったせいで、余計にサンジはほっそりと見えていました。
 もちろんこの船には、相変わらず美しいナミやロビンもいるのですが、サンジの人気も劣らず高いのでした。
「あ、ちゅーした……。」
「大剣豪いいなー……。」
「サンジさん可愛いなー……。」
 などと、新入り達はいちゃついている大剣豪と料理長を見ながら、真っ赤になって呟いています。
 そして更にその後ろで、悪い笑みで見ている先輩達がいるのでした。


 その数日後です。
 巨大な海王類を倒した麦わら一味は、大きな満月の下、楽しく宴会を開いていました。
 サンジは一通りの料理を出したところで、後は他のコック達に完全に任せ、ゾロの隣でまったりしています。
 数杯を干す頃には、それほど酒に強くないサンジは、頬を染め目を潤ませ、ますます悩ましい風情になっていました。
 ゾロにもたれて体重を預け、うっとりと微笑む表情は艶めかしくて、若い者達の目の毒です。
「ゾロー。好きぃ……。」
「おう、知ってる。」
 甘えるサンジの頭を撫でるゾロは、やにさがったような表情です。ゾロはサンジのことがとっても可愛くて仕方ないのです。
 甘やかされて御機嫌なサンジは、ゾロに好き好き云いながらどんどん体重をかけ、そのうちゾロの膝の上によじ登り、ゾロが空にしたジョッキを奪って転がしてしまうと、両手でむぎゅとゾロの顔をつかみ、うちゅーとキスをしました。
 ヒューヒューと、あちこちから口笛やヤジが飛びます。
 その歓声に押されるように、サンジはゾロに熱烈に口づけ、その白く細い器用な指でゾロの体を撫で始めました。
「こら、もう酔ったのか、コック。……おいこら、……ちょっとま……んんっ、……おいっ、あ、あ、や……ああっ。」
 すると突然、ゾロが激しくうろたえだしました。
「ゾロおー、大好きだよおー。」
 ゾロは一生懸命サンジを押しのけようとしますが、サンジはゾロにちゅうちゅう撫で撫で、次第にゾロの体が傾いていき、そのうち後ろにぱたりと倒れてしまいました。
「コック…っ、やめろ、んぁ、や…だ、やだっ……。」
 改めてゾロの上に乗っかったサンジは、ゾロのあちこちをさわさわと撫でています。ゾロももがいてはいますが、抵抗とは全く思えない程度の反応です。
 え、な、何!? と、新入りさん達はうろたえた顔を見かわしあいました。
 いつも色っぽい料理長のサンジさん。しかしそのサンジに、大剣豪のゾロがもっと色っぽい表情を引き出されているのです。
「よーしおめえら、後ろ甲板に移動するぞー。」
 にしししと笑って、海賊王が皆に声をかけました。
 甲板からはたくさんの腕が生えて、せっせと皿や酒樽を運び始めます。ロビンです。
「ちょっとあんたたち、ロビンにばっか働かせるんじゃないわよ! ほら、運んで運んで!」
 そして、ナミの号令の元、船員たちは皿やグラスや酒樽酒壜を持って、笑いながら移動をはじめるのでした。
 その頃にはもう、ゾロは大変あられもないことになってきています。
「ほら、行くぞ。」
 立ちつくす新入り達の背中をばしんと叩いたのは、彼らよりも少し先輩のクルー達でした。
「びっくりしたろ。実はなー、あの2人ってああなんだぜ。」
「そうそう、大剣豪が料理長の細腰抱いて寝てるんじゃなくて、サンジさんがゾロさんの太腰抱いて寝てるんだなー。」
「まあ皆が通った道さ。……おまえらもこの洗礼を受けてこそ、真の麦わら一味だ。失恋を乗り越えろ。」
「先輩…!」
 サンジに憧れていた者達にとって、この衝撃的な光景は、大変にショックなものではありました。
 けれど、実はこんなことは、今までにも何度もあったことなのです。
 一味に入り、サンジに懸想する者は大変に多いのですが、いつもその隣には大剣豪がぴったりくっついていて、けれどもそのお似合いぶりにはただ羨望するしかありません。
 しかしこうして、ひと月に一度くらい、サンジが酔った勢いでゾロを押し倒してその場でおっぱじめてしまうので、毎回その場で事実が判明し、ショックを受ける新入りが後を絶たないのでした。
 サンジに抱いた恋心は、ゾロの存在によりすぐに失恋を味わうことになるのですが、何だか改めてまた失恋をしたような複雑な衝撃に、新入り達は涙目です。
 ちなみに長くいる者たちは、既にすっかりサンジの横行に慣れ切っているので、始まったらさっさと移動をするのでした。
 後ろ甲板の方が前甲板より広くてキッチンに近いのに、前甲板で宴会をはじめるのは、そのためでもあったりするのです。
 そして何でゾロがろくな抵抗をしないのかというと、決してサンジとの仲を皆に見せつけたいとか知らしめたいとかではなく、サンジの芸術的天才的なテクニックに開発に次ぐ開発を長年続けられ、乳首一つまみで腰砕けになるようなそんな体になってしまっているだけなのです。
 でも、料理長に極甘な大剣豪は、翌日の詫び一言とちゅうひとつで、あっさりといけない恋人を許してしまうので、やっぱりわざとなのかもしれません。
「よーし、今夜は飲むぞー!」
「おー、飲め飲め。」
 自棄になって叫ぶ新入り達に、先輩達は笑って答えました。
 こうして新入り達はまた、麦わら一味に馴染んでいくのでした。
 
2010/12/13 



TOP