サンジ×ゾロ パラレル練習 3 

★☆★とりあえず現在人っぽい


 サンジとゾロは初々しい恋人同士です。
 少し前にようやく想いを打ち明け合って、幼馴染から恋人になった2人は、夜になっても別れがたく、サンジの家の前でいちゃいちゃとくっついていました。
 とても寒い夜ですが、2人でいればとても暖かいのです。
 でももう本当に遅くなってきたので、そろそろ、ぼちぼち……と、十回以上も云い合ってはいたのですが、今度こそ本当におしまいにしようと2人は決めました。
「ん。」
 目を細めて、自分の口の下に指を当てて、ほんのちょっと唇を突きだして、サンジはおやすみのキスをゾロにねだります。
 ゾロは真っ赤になりましたが、サンジの唇に吸い寄せられるように、そっと唇を重ねてくれました。
 まだそっとふれあうキスしかしていない2人ですが、唇のやわらかい感触にうっとりして、何度もふわふわとキスをしていました。
「何してやがる、てめえら。」
 いきなり低い声がして、サンジとゾロは、びくっとして飛び離れました。
 あんまり遅くまでいちゃいちゃしていたものだから、ゼフがバラティエから帰ってきてしまったのです。
 サンジはまだゼフには、ゾロと恋人同士になった話などしていません。素直になるのが恥ずかしいお年頃でもあるのです。
「何でもねえよクソジジイ!」
 真っ赤になってあわあわしているサンジの肩を、やはり赤くなったり青くなったり忙しかったゾロが、突然ぐいと引き寄せました。
「御挨拶が遅れましたが、サンジとは真面目につきあってます!」
「ぎゃああああ。」
 真っ赤な顔をしながらも、ゼフに向かってきっぱりと云い放つゾロに、サンジは悲鳴をあげながらも、こいつかっこいい…、と、密かに胸をきゅんと高鳴らせました。
「……真面目なのか。」
「将来は結婚も考えてます!――――お義父さん!」
「きゃああああ。」
 何かもう穴を掘ってでも入りたいような気分のサンジでしたが、それと同時に、ゼフにゾロが蹴られるのではないかと不安にもなりました。
 そしてゾロは。
「一生大切にします。サンジを、婿にください!」
 と、叫んだのでした。
 サンジはびっくりしました。
 ゼフもびっくりしたようです。
「えええええええ!?」
「何だと!?」
 親子は声をそろえて叫びました。
 大音量にゾロは一瞬ひるみ、それから、信じがたいものを見るような目をサンジに向けます。」
「な、なんでてめえまでびびるんだよ、……なあ、違うのか!? てめえはそうは思ってなかったのか!?」
 ゾロは泣きそうな顔でサンジの服の胸元をつかみあげましたが、サンジは口をぱくぱくさせるだけで言葉が発せません。
 それを見たゾロの目からは、ぽろぽろっと涙の粒が零れ落ちました。
「おれはてめえにもてあそばれてたのかよ。……サンジの馬鹿野郎!!!!」
 ゾロはうわああんと泣きだすと、そのまま走り去ってしまいました。
 その場には、ぼーと立ち尽くしている、ゼフとサンジの親子が残されました。
「……あれが嫁か。」
「うん、そうみてえ……。」
「……てめえが嫁じゃねえのか。」
「うん、おれもそっちかと思ってた……。」
 ぼんやりと交わす会話は、驚きの理由です。
 2人とも、サンジが嫁の方だと思ったので、ゾロの言葉にびっくり仰天してしまったのです。
「チビナスが婿に行くのか……。」
「そしたらおれ、ゾロんちからバラティエに出勤するのかな……。」
「あれんちに住むなら、交通費はいらねえな……。」
「うん、徒歩通勤する……。でも家族手当は貰えるなら欲しいです……。」
「考えておく。あれは、道場継ぐのか……?」
「そうだと思う……。ジジイ、それより、結婚式どうしよう……。」
「うちでやればいい。面倒だから断ってるが、時々レストランウエディングの相談があるだろう……。」
「やってもいいならしたいなあ……。でも、ゾロだと、お式は和風じゃないとかもしれないし……。」
「そしたらそこの神社で式あげて、うちで飯にするか……。」
「ドレス姿も見てえけど、ゾロの高島屋も、素敵だろうなあ……。」
「文金高島田だ、こののーたりんチビナス……。」
「ちょっと間違っただけだクソジジイ。ゾロんち次第だけど、人前式もいいよなあ……。」
「教会なら口きいてやれるから、早めに云え……。」
「ありがとジジイ。式はともかく披露宴はうちでやりてえな……。」
「当然だろうがこのクソチビナス……。」
「料理はジジイが作ってくれるよな……?」
「当然だと云ってるだろうが。さっさとメニュー考えやがれ……。」
「ゾロの親戚のこと考えると、和風フレンチとかがいいかなあ……。」
「箸も出してやるから心配するな……。」
「おー。ケーキはおれが作るよ……。」
「浮かれて10段重ねとか作るんじゃねえぞ……。」
「判ってる、ちゃんとその場で切り分けて食べられるの考える……。」

 とてもとても寒い晩です。
 けれどもゼフとサンジは、ぼんやりと突っ立ったまま、その場で会話をつづけていました。
 半ば呆然としながらも、それでも着々と、将来設計や結婚式の計画を立て始めています。
 しかしあいにくこの場には、この、どこかすっとぼけた似た者親子しかいませんでした。
 なので残念ながら、誰もこの2人に突っ込んでくれる人がいなかったのであります。
 ……早く、ゾロを追いかけてやれと……。
 けれどもこの残念な親子は、その後も長々と、それこそ将来のゼフの老後問題までを突っ立ったままで話し続け、翌日は2人とも、高熱を出して寝込んでしまったのでした。
 真冬の夜中にいつまでも屋外で話しこんでいれば、馬鹿でも風邪をひくのでした。
 
2010/12/26 



TOP