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「ウソップ。私、あなたを好きになってしまったの。」 突然ロビンに膝つき合わせてそんなことを云われたウソップは、文字通りひっくり返りました。 「ロ、ロ、ロビンくん、何を突然そんなお茶目を云っているんだねっ!」 「お茶目じゃないわ。司法の塔からの長遠距離狙撃で私を助けてくれたあなたは、とても素敵だった…。」 うろたえるウソップの手を取り、ロビンは熱っぽく語ります。 「あの時私は、自分に当たるかも知れないなんて髪一筋も思わなかったわ。あなたを信じていたから……。」 男・ウソップ。女性からの愛の告白など、生まれて初めてです。 真っ赤になって汗をだらだらと流しながらへたり込み、尻でずりさがるウソップに、ロビンもずりずりとついてきました。 「私では駄目かしら。年上の女は嫌い…?」 「い、いやいや待ってくれロビン! あれ、あれはっ、えーと、おれじゃなくてそげキングだ! 吾輩ではないのだよ!!」 動揺のあまり言葉遣いがおかしくなりながらも、ウソップは必死です。 「ウソップでしょう?」 「いやっ、あれはおれの親友、狙撃の島からやってきた、そげキーングっ!」 意味もなくウソップは、びしっとポーズを決めて見せました。 「……そう。」 「そう!そうなんだよ、判ってくれたかね!」 「ええ、判ったわ。なら私、そげキングにラブレターを書くわ。ウソップ、ぜひ届けてね。」 ロビンはにっこり微笑みます。 「えええええー!!!」 ウソップはますますパニック一直線でした。 「ロロロロビンさん! そのような不純異性交遊はよくないと私は思います!」 「不純じゃないわ。私は純粋にそげキングが好きなの。今すぐラブレターを書いてくるから待ってて。」 「いやいやいやいやいやいや、そのようなことは!!」 「駄目なの? そげキングは私みたいな女は嫌い?」 「いやいやいやいやいやいや、そのようなことは全く!!」 そんなふうに一生懸命云い募るロビンを、必死になってウソップが宥めようとしていると。 「どーしたんだー、ウソップ。何騒いでるんだ?」 楽しいことなら混ぜろとばかりに、ルフィがやってきました。 「ルフィ……っ!」 そのルフィに、悲壮ぶりっこのロビンがすがりつきます。 「どうしたロビン!」 クルーの皆が大好きな船長のルフィは、当然ながらびっくりして、ロビンを抱きしめました。 「何があったロビン、……ウソップに苛められたのか?」 「そうなの。」 「ウソップ……。」 「いやいやいやいやいやいや、そのようなことは!」 睨みを利かせるルフィに、ウソップは必死になって首と手を振りましたが、ロビンはくすんとすすりあげる真似をして、ルフィに訴えました。このような仕草に、ナミの教育がよくあらわれています。 「私、そげキングが好きなの。だから彼の親友のウソップに、ラブレターを書くから届けてと頼んだの。でもウソップは駄目だと云うの。」 「なんだとおっ!!」 ルフィはたちまちに激昂しました。 「ロビンの告白を断るなんざ、そげキングの奴、いくらヒーローだからって許せねえ!!」 「いや、まだ断ってねえから!」 今すぐにも殴りこみに行きそうな剣幕のルフィに、ウソップは慌てて云いました。 「だったらラブレターくらい届けてやれよウソップ! 大丈夫だロビン、おまえは綺麗で頭がよくてすげえかわいい。そげキングの奴だっていちころだ。」 「……本当? ルフィはそう思ってくれる?」 「当然だ! ……ああでも、ロビンはうちの大事な考古学者だ。そげキングの嫁には出さねえぞ。あいつにうちに来てもらえ。」 「いや、あの、ルフィ……、そげキングは正義の味方、世界中の悪を懲らしめる為に今日もグランドラインのどこかにー……。」 ウソップは弱々しい声で訴えますが、ルフィは全く聞いていません。 「そげキングだって、ロビンに惚れねえ筈がねえ。だから安心しろ、ロビン。おめえのラブレターは、ウソップがちゃんと届けてくれるからな!」 「ええ、ルフィ!」 「あのー、ちょっと待ってー………………。」
こうしてウソップは、船長命令により、ロビンのラブレターをそげキングこと自分に届けることになりました。 ロビンからの手紙は頻繁に届けられ、そして今では、同じくらいの厚さの手紙が、ロビンの元にも頻繁に返ります。 遠距離恋愛の振りをした、ロビンの超近距離恋愛は、順調に進んでいます。 ルフィの予言は、当然のように当たったのでした。
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2010/12/19 |
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