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2001年の短歌

Jan.2001

 確かこの頃に短歌に興味を持った。きっかけは友人の作った短歌を読んだことだった。例えばこんな歌を、いいと思った。

キスなんてしたくないのと言う人と座るベンチの落書きニャロメ  大谷良太

 そしたら大谷くんが穂村弘の「シンジケート」を貸してくれたのだった。


Apr.2001

色の白い偽学生と話す時の合言葉は「ぬけがらぬけがら」

熱を出し半年ぶりにうがいして天井隅の蜘蛛と見つめあう

曲がってくテールランプの天の川 今月一番綺麗だったもの

夕されば幾千の鳥帰り来て二年半前の罪を苛む

血を吸って膨れあがった蚤のように暗い赤した陽を見つめながら

ざっくりと四角い海苔を陽に透かし目を細めれば望郷美人

あの人がいるから帰りたくなくて木屋町辺りで桜のダンス

ターキーが瓶ごとないがもしかして持って帰ってないだろうな?

May.2001

しゃがみこむ ありとあらゆる電柱はただ一点で交わるはずだ *

あの人が残していった液体に砂糖を混ぜて凍らせておこう

ござの上で胎児のポーズ そのままの形で串に刺されて笑おう

青と白のスミレの前に膝をつき昼のうどんをそっと捧げる

咳をした覚えがないのに咳の音がしたということは誰かいるんだ

Jun.2001

ボールペン逆手で握る曇り空 うつぶせのまま畳を脅す *

ゴムプールで泳ぎ疲れた猫を詰めた鞄が肩に少しだけ重い

「そうやなあ天気悪いとテンションも下がるわなあ」と後輩を睨む

五年前「見えへんものが真実やそんなもんや」と梅田地下道

プラス、プラス、マイナス、プラス、接触/はじけるひかり、指、こめかみ

Jul.2001

スカートのもようが複雑すぎたとかそういった問題かもしれない *

「あの日はさ、帰るつもりじゃなくってさ」彼女は黙ってモルヒネの準備

睡眠を摂らないままの午後三時眼球の丸さを意識する *

君の吸うタバコがけむいだけなのに、結核かもしれないよ、なんて *

あの女が京都駅前で泣くようなたくらみを抱きガムを歯で練る

「今日もまた虫をいっぴきころしました」やたら星降るサナトリウムで

Aug.2001

八月の夜に黄色く光るのは「アリゾナ」という名のラーメン屋

それなりの読書量がもたらすものはそれなりの偏った自意識

Sep.2001

 なし。

Oct.2001

「そんなにもおねがいするほどさわりたいの?」「おねがいするほどさわりたいです」 *

舞踏家にも負けないようにできるだけ骨ばったTシャツを吟味する

蜿蜒と並び立ちたる黒ドミノのはざまはざまにエネルギー満つ

左眼の奥で五歳児が泣いているような不眠が月に一度ある

力尽き半ばあたりに抱きついて目を閉じている貝殻の塔

男たちと紫煙と牌を見下ろして辛子色の本三冊並ぶ

知らないの? 彼女の声はこの夏に五色の砂で浄化済みだよ

あぶらげもうどんもだしもまだあるがきつねうどんはもうつくらない

ただ"I can't live this life."と書きなぐるギンナンがおいしいこの秋も

弁済のしにくい物をそれとなく毀してしまう夢から醒める

「パールホワイトパビリオンにようこそ」と今日もペンギンがドアをあける

Nov.2001

「うん好きな、ヒトに、好きな、モノとかを、貸すのは好きだよ、、、それで?」

蝋燭を吹き消すくらいの空気ならまだ作り出せる喉パイプライン

落ちる葉の弾幕が濃い川べりを自転車で縫う風の強い日

あの人がいなくなった後の世界をマッチ棒で再構築する

「31615327718524 3」と名乗った

インディオのような帽子で踊ってる彼女と何がしたいのだろう?

じゃがいもを炎の上で踊らせるわりと活発なH

かろうじて「5マス戻る」をくぐりぬけ「結婚前夜」で凍る双六

敷石の硬さに溺れ只歩けば左に気をつけろと誰かが言う

なんでこの人はこんなにいつもいつも寝不足なんだろういつもいつも

「いや、だから、そういう世代、ですから」彼の眼鏡はいつも曇っている

白無垢の想い人の眼をこじあける鍵言葉キーワードは「空缶」と「咳」

「筆ペンのキャップをはずす」それだけでも十七通りのやり方がある

あざやかに覚醒しつつある頭部を揺らさぬように河原へ運ぶ

何故そんなを向けるんだ? おれはただ氷を口に入れたいだけさ

使い方を忘れた器具は冷蔵庫に入れておけばまず大丈夫です

Dec.2001

五歳児に「なんでおるの?」と訊ねられ折り紙だからと答える二月

「太陽とまむしは苦笑いをしない」東パブール族の諺

夜の書庫に白く笑うは大乱歩「妖怪博士」「二十面相」


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