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自選

2010年

熱湯を流しに捨てる昨日会った人の名前は何だったっけ


2007年

カッターで切り抜いたような月の下で眠れない私はあおみどり

再会を喜ぶ人とそのかげで走る子供を蹴飛ばす男


2004年

あのひとが人差し指で触ったらチーズのようにとろける小鼻

ジャパニーズ・フード・レセプションに立ち並ぶメニー・メニー・チョップスティックス


2003年

「二輪車は二輪」「三輪車は三輪」口ずさみつつ人を殴りぬ

辺境とか言ってみたくて原付を西へ西へと走らせています

天上から舞い落ちてきた絵葉書を右脳左脳のあいだに挟む


巻き舌が震える午前 風が少し強くなった午後、自転車を買う

キスをするために外した縁無しの俺の視力が猫を見ている


サーバーが見つかりませんサーバーが 空はこんなに晴れているのに

「サーバーが見つからない」と言う君の斜め後ろでごはんを食べる

「サーバーが見つからない」と言う君の後ろ姿を見ながら眠る

サーバーを探しに行こう 空を飛ぶ黄色いプロトコルにまたがって

一晩中することがない君のため二段ベッドでサーバーを飼う


キスをした瞬間どこか別の場所であくびのなかに吸い込まれる蚊

階段で立ち止まってはいけないという法律がドイツにあった

やみくもにかきまわしたら手の中であたたかいのは魚の卵


2002年

薄切りの食パンひとつ抜きとりて立方体をやや平たくす

「これをかぐとスッとするよ」と誕生日にもらった瓶をかいでスッとする

二百字や千字に俺の屈折したこの数年を書けと言う紙


はなみずがとまらないけどカトリック河原町教会改装中

血圧を測る如くに葬儀屋の黒い腕章膨らめばよい

「無いと困るなにかが無い」と困ってるあの子の得意技はトートロジー

てのひらをほうりっぱなしでねてるから指紋のみぞに指紋をあわす

くろーるの最後の"る"を手わたすとあの子はいつもるっこらという

くちびるがすっごくかっこよかったからわすれなぐさってもいちどいって


2001年

しゃがみこむ ありとあらゆる電柱はただ一点で交わるはずだ

スカートのもようが複雑すぎたとかそういった問題かもしれない

睡眠を摂らないままの午後三時眼球の丸さを意識する


あざやかに覚醒しつつある頭部を揺らさぬように河原へ運ぶ

何故そんな眼を向けるんだ? おれはただ氷を口に入れたいだけさ

五歳児に「なんでおるの?」と訊ねられ「折り紙だから」と答える二月




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