青い相姦
横尾茂明:作

■ 戯れ8

(このまま自分の部屋に行ったら…お兄ちゃん…傷ついてしまう…)
(もう…アズ嫌われてしまうの…?)
梓は本能的に感じた…。
(イヤだ…イヤだヨー……お兄ちゃん…アズもお兄ちゃんのこと大好きだもん…)

(お兄ちゃん…私が挑発したからいけなかったんだ…)


「お…お兄ちゃん…ごめんなさい…アズがいけないの…」
「ゴメンナサイ…ゴメンナサイ」

梓は切れ切れに言葉を発した…そして兄の言葉を待つ…。

「……………」

兄からは何の返答も無かった…。
梓の心は千々に乱れ…ついにはトイレの扉に縋って悲しそうに泣き出してしまった…。

兄の心を見失いそうで怖かったのだ…。

泣きながら…兄をなくすことがどれほど苦しいことかがアズの心に染みこんだ。
正直…母に捨てられるより、兄に嫌われる方が何倍も苦しいはずとこの時感じたのだ。

数分の時が流れる…殷々と寂しげな梓の泣き声が扉越に直人の耳に響く…。
直人には妹の悲しさが分かった…
一回でも梓に冷淡な言葉を返したことを悔やんだ。

「ガチャ…」

トイレの戸が静かに開けられる…。
直人は憔悴しきった顔で出てきた…。
梓は飛びつくように直人に抱きつく…。

「お兄ちゃん…ごめんなさい…アズ…アズ…エエーン」
まるで幼子のような泣き方で直人に縋り付いた…。

「アズ…ゴメン…俺…お前の裸を見て…我慢できなかったんだ…」
「妹の裸を見て…興奮するなんて、俺…恥ずかしくて…」

「いいの…お兄ちゃん…もういいの…私の裸ならいつでも見て…」
「お兄ちゃんが歓んでくれるなら…お兄ちゃんさえよければ…アズ…これからはお兄ちゃんの前ではいつも裸でいてもいいの…」

「何を馬鹿なこと言って…」

直人は梓を抱きしめる…
何て可愛いこと言ってくれるんだろうと嬉しく感じ…
心が氷解していくのを感じた…。

「さーおかゆができたころだよ…二人で食べようか…」

「……うん…お兄ちゃん…もう怒ってないよね…」

「ううん…怒ってないよ…俺の方こそ酷いこと言って…ごめんな…」

「お兄ちゃん大好き…アズ…お兄ちゃんのお嫁さんになるんだもん!」

「バカ! …俺たち兄妹だぜ…そんなこと出来るわけないじゃん」

「いいもん…兄妹だってこんなに好きなら結婚しても…」
「ねっ、お母さんに内緒でしようよ」

「ブワーカ」
「そんなことより早く食べて寝なくちゃ…また風邪がぶり返しちゃうぞ」

二人は縺れるようにキッチンに向かう…。

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