淫辱通学
木暮香瑠:作

■ 謂れなきお仕置き4

 恥かしがる有紗をからかうように店員は、はっきりとした大きな声で製品の説明を始める。
「どれにしますか? これなんかどうです? シャフトが振動しうねるような動きが評判ですよ」
 店員がバイブを手にとりスイッチを入れる。バイブは、それ自身が生きているかのように動き出す。ウイーーン、ウイーーンとバイブの発する音が、呻き声のように有紗の耳の奥ませ染み込んでくる。
「こちらは、イボイボが壁の隅々まで刺激してくれますよ」
 新たなバイブのスイッチが入れられ、有紗の目の前に置かれた。頬を染め俯いた有紗の目の前で、二つのバイブが不気味な唸り声を上げながら蠢いている。どちらも、有紗のお尻に挿入されているものよりずっと太い。
「いやっ……。こんな……」
 有紗は思わず目を背けてしまう。
(これで嬲られるんだわ……。それを自分で買わなくちゃいけないなんて……)
 恥かしさと悔しさから滲み出てくる涙で、バイブがぼやけて見える。

 有紗は、少しでも早くこの恥かしい空間から逃れたくて雄一の命令した物を探した。
「いっ、一番太いのはどれですか? 一番太いのをください、太いのを……」
 有紗は、消え入るような小さな声で訊ねた。
「一番太いのですか? あ、そうですか……。少しお待ちください」
 店員はそう言うと、いったん店の奥に退いた。

 しばらくすると店員は、一つの大きな箱を持ってきた。
「これが、当店で一番大きなものですね。日本人には少し太すぎるかと思いますが……」
 店員は、そう言いながら箱のふたを開ける。中には、人の手首ほどの太さがあるバイブが入っていた。形は男根そっくりに作られていて、色も赤黒い肌色をしている。
「アメリカ向けに作られた日本製で、太さと言い動きと言い最高のものですよ」
 店員はバイブを手にとり、有紗に見せる。有紗の瞳が大きく見開く。
(こ、これを買わなくちゃいけないの? こんなに太いのを?)
 有紗が目にしたバイブは、想像を遥かに越えた太さだった。形と言い太さと言い雄一の怒張を思わせるが、単体で見るそれはさらに大きく感じさせた。
(これでお仕置きを受けなくちゃいけないの? いやっ!!)
 自分への責め具を買わされる悲しさが、有紗を包み込む。
「ただ大きいだけじゃなく、日本製のムーブメントを使用し最高の動きをしますよ。このシャフトに刻まれた皺が動いて、膣内の皺を掻き回してくれるんです。昇天すること間違いなしのものですよ」
 スイッチを入れ、動きを確かめながら製品の優秀さを自慢した。

 店員は華奢な有紗の体形をチラッと見て、少し戸惑ったような表情を向ける。
「でも、大丈夫ですか? こんなに太いもの……。他にも良い物がありますが……」
「いっ、いえ、一番太いのがいいんです。そうじゃなくちゃいけないんです。そっ、それを……ください」
 一番太いのを買わなかったら、雄一に更なる責めを負う事は明白だ。お尻に埋め込まれたアナルプラグも抜いてもらえないだろう。有紗は、一時も早く店から逃げたくて思わず声が大きくなった。

 いつのまにか集まってきた客たちが、有紗の後ろからバイブを見て目を丸くしていた。
「ねえちゃん、これを買うのかい?」
 ヤンキー風の男が声を掛けてくる。有紗が振り返ると、店にいた全ての客が有紗の肢体と買おうとしているバイブを見詰めていた。
(み、見られてる……。いやっ、見ないで……)
 客たちの視線に包まれ、押さえつけられるような重圧を感じる。有紗の膝が、恥辱と緊張で震えた。有紗は、集まった客の中に自分を知った人間のいないことを願った。

 客たちは、バイブの大きさに驚きの表情を浮かべながら会話をしている。
「あんなに太いのは、とても無理だろう。太さも長さも、俺の倍はあるぞ」
「いや、判らんぞ。最近の女は成長がいいからな。エロいなー、今の女子高生は……」
 あどけなさの残る有紗と、買おうとしているバイブの大きさのアンバランスを不思議そうにヒソヒソ話をしている。しかし、その声は有紗にもはっきりと届いていた。
「好きもんだね。学校帰りにバイブを買いに来るなんて……」
「制服姿で、よくこんな店に来れるよな」
 客たちの嘲りの声が聞こえてくる。
(違う……、わたし……、エロくなんかない、好きもんなんかじゃない……)
 有紗は、唇を噛み締め俯いた。

 レジの前で言葉もなくただ佇んでいる有紗に、からかうように声が掛けられる。
「バイブだけじゃ、満足できねえだろ。俺が相手してやっても良いぜ」
「ねえちゃんなら、五万払うぜ。どうだ?」
(わたし……、そんな女じゃないのに……。違うのに……)
 頬を涙が伝う。有紗は、手の甲で涙を拭い、大きな瞳を店員に向けた
「そ、それ……、ください」
 有紗の悔しさを秘めた眼差しに、店員は一瞬たじろぎ作業を始める。
「こ、こちらですね。しばらくお待ちください」
 店員が、手錠とバイブを袋に詰めている。その時間が、有紗にはとても長く感じる。

 有紗はお釣りと袋を受け取り、客たちの壁を掻き分け逃げるように出口に向かった。両手で袋を胸に抱え、顔を真っ赤にして店を後にした。客たちからは、相変らずからかいの声が掛けられていた。緊張した有紗には、ただの雑音としか感じられなかった。

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