恥辱アルバイト
木暮香瑠:作

■ 夜の会議室は涙に濡れる1

 翌日、出社し、ロッカールームで大人し目の服に着替え、部屋を出ると、ちょうど織田の出社と重なった。二人は、笑顔で挨拶を交わしながら、事務所のドアを開けた。自分は何も出来ないと判っていても、綾香の頬は赤く染まった。そこを恵美子が見ていた。

 二日目のアルバイトも、相変わらず忙しかった。
 アルバイトの時間もそろそろ終わりに近づいたころ、綾香のところに恵美子がやってきた。
「山川さん、今日、ちょっと遅くなってもかまわないかしら?」
 伝票の整理を手伝って欲しいという話だった。
「月末でしょう。伝票が溜まってるのよ。8時頃までには終わると思うから……」
「8時くらいなら大丈夫です」
 綾香は残業を手伝うことになった。
「家に電話をしておいた方が良いわよ。心配するといけないから」
 恵美子の進めで、綾香は母親に電話を入れておいた。
「……。8時頃終わるから、家に着くのは9時頃になるから」
 その電話に、恵美子も出て、わたしと一緒だから心配要らないと伝える。

 伝票の整理も半分ほど終わる。時計を見ると6時半を少し周っている。残業をしていたほかの人も、みんな帰り、綾香と恵美子だけが残っていた。

「山川さん、少し休もう。コーヒーを入れてあげるわ」
 そういって、恵美子は給湯室に立った。

 しばらくして、恵美子がコーヒーを2つ持って帰ってきた。
「わたし、苦いのが好きだから、ちょっと苦いわよ。山川さんは、大丈夫?」
 確かに、恵美子が入れてくれたコーヒーは苦かった。好きになれない味だった。恵美子が入れてくれたのにおいしくないとも言えずに
「大丈夫です。おいしいです」
 そういって、全部飲み干した。

 二人は、残った作業を片付けようとパソコンに向かった。しばらくすると、綾香は、急に眠気を感じた。瞼が重たい。必死にパソコンに向かうが、どうしても瞼が閉じようとする。
「綾香さん、大丈夫? 少し休んでも良いわよ。初めてのアルバイトで疲れてるのよ」
 恵美子は、やさしくそう言う。
「いえ、大丈夫です」
 綾香は、そう答えてパソコンに向かったが、ついには、机に伏すように眠ってしまった。恵美子が揺すっても起きる気配はなかった。恵美子がコーヒーに入れた睡眠薬が効いたみたいだ。

 恵美子は携帯で電話をかけた。
「小林君、いいわよ。よく寝てる。早く入ってきて……」
 外で待っていたのだろう。髪を赤く染めた男が事務所に入ってくる。
「小林君、この娘よ。早く、会議室に運んで」
「オーライ。かわいい娘じゃないですか、恵美子先輩」
 小林は、恵美子がヤンキー時代の後輩だ。身体が大きく、2年程前まで、暴走族のリーダーをしていた。
 綾香は、ぐっすりと眠っていた。小林は、寝入った綾香を抱き上げ、
「華奢な娘だな。おれもの珍棒、ちゃんと入るかな。ウヘヘ…」
 小林が薄ら笑いを浮かべながら言う。
「女の身体は不思議なものよ。どんなものでも飲み込んじゃうんだから」
 恵美子はカメラを持って後に続き、会議室に入っていった。

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