青い目覚め
横尾茂明:作

■ プロローグ1

 キラキラ光る眩しい少女、その名は由美……。
由美と由紀は校門の所で、お互い突っつき合いながら今日先生が話した意味の解釈を、「そうじゃなくてこうでしょ」と両者譲らずもめていた。
他の生徒達がその二人の光景を見て、微笑みながら下校していく。
二人は10分も揉めたあげく、あした先生に聞いてみようということで落ち着いた。

「じゃあ! 由紀ちゃんまたあしたネ…」
「由美ちゃん真っ直ぐ家に帰りなよ!」
「分かってる! あの借りた本読むの楽しみだもん!」
「うふふ楽しみ」
二人は幼稚園からの幼なじみ、まるで姉妹のようである。
由美はスラッと背が高く、その美しさは少女期から女に変貌する直前の光輝く色気さえたたえていた。
由紀は控えめなお嬢さん育ちの風貌で、理知的な眼差しをした少女であった。

「由美ちゃんさようなら」
「由紀ちゃんグッバイ」
夕日が二人の陰を長く延ばし、二人はいつまでも振り返りつつ、手を振りながら逆方向に歩いて行った。

由美は去年隣町に引っ越し、今は電車で通学をしている。
由美は時計を見ながら…
(まだ次の電車まで20分も有るんだ! あーどうして引っ越さなければいけなかったんだろう)
と暗い気持になっていた。 

父親は去年までプレス工場をやっていた。10年前バブルが弾けた辺りから仕事が少しづつ減少し、去年…遂に倒産に追い込まれた。

由美の家と土地は全て人手に渡り、逃げるように隣町のアパートに身を寄せた。

由美は引っ越し当時、2畳くらいのキッチンと6畳一間だけのアパートには驚愕した。
トイレは共同…風呂は無し…まるで独身寮のようなアパートを見たとき、目の前が暗くなり、母と二人で1日泣き明かしたことを思い出した。

父の幸夫は悪質金融の取り立てが厳しいため、母子に禍が降りかかるのを恐れて、引っ越しと同時に母と形だけ離婚し、行方をくらました。

由美は当初この引っ越しを機に、高校を退学し仕事をすると母に申し出たが…
母は「今時高校ぐらい出ないでどうするの! あなたはお金の事なんか考えず一生懸命に勉強なさい」と由美の申し出を窘めた。

それ以来、母は近くのスーパーにパートとして勤め、夜は隣町の割烹旅館の下働きとして精力的に働いた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊