青い目覚め
横尾茂明:作

■ 羞恥戯3

二人は30分くらいで店を出た。

「おじさん…有り難う…こんなことされる謂われがないのに………」

「由美ちゃん! いいの、いいの…気にしなくて」
「おじさんが楽しくてやってることだから、気にしないでネ」

「………」

「さてと…何処で着替えようか?」

「おじさん! 由美…駅のトイレで着替えてくる」

「汚くないかい?」

「紙袋を下に敷いてすればいいもん」

「じゃ…着替えてらっしゃい」

由紀は駅に向かって走り去った。
男は思った…
(俺は一体何してるんだ…あの子の躯が目的なのか?)

(あんな無垢の子供を俺は汚そうとしているのか…)

(しかし…あんなに泣いた子が…今日の態度は一体どうしたことか)

(警戒心が全く失せている…また両親が11時以降に帰ってくるなんて…)

(高校の2年生ぐらいと思ったが…話しをしてみると中学生の幼さが残っている)

(今時…あんな無垢な子が居るだろうか?どんな環境に育った子なんだろう)
男は首を傾げたくなる思いであった。

(まっ、きょうは楽しくあの子と過ごそう…躯目的なぞとゲスの想いは捨てよう)


「おじさん!おまたせ」

男は振り向いてビックリした、目の前で肩で息をしながら微笑んでいる女性と先の少女が同一人物とは思えないほどの変わり様だったからである。

「由美ちゃん?……」

「そーだよ! …おじさんどうかしたの?」

「………」

「うーん驚いた…由美ちゃん着替えると…大人だね」

「由美ちゃん! あんまり綺麗だからおじさんドキドキしちゃった」

「おじさんありがと…おせいじでも由美嬉しいな」

由美は服を変えたせいか、それとも服を買って貰えたせいか心は浮き立っていた。
おじさんの腕に手を廻し、頭をおじさんの肩に触れさせ、甘える仕草で
「おじさん!何処に連れてってくれるの?」
と聞いた。

「うーん…この時間では…お酒を呑む所しか…おじさん知らないからなー」

「おじさんの家に行こうヨ!」
由美は快活に問うた。

「うーん…だけどおじさんの家は由美ちゃんの駅を通り越して2駅向こうだよ!」

「いいよ! 由美遅くなってもいいもん」

「ご両親に怒られても知らないぞー」
「怒られないからいいもん!」

「よし分かった!おじさんちにイコ」
由美とおじさんは駅に行き、下りの電車に乗った。


おじさんの名前は幸夫…佐川幸夫…年齢46才…建築設計事務所経営
妻は13年前に死去…子供無しの一人暮らし

由美は電車の中でおじさんのプロフィールを、あらまし聞いた。

また由紀も、おじさんにいま由美のおかれた状況を語った。

「由美ちゃん…お母さんのこと心配だね」

「由美…今度の日曜日…その旅館を尋ねてみようと思ってるの…」

「おじさんが付いて行ってあげようか」

「いいもん! 一人で行けるもん」

「由美ちゃん! 困った事が有ったら、悩まずにおじさんに相談してね」

「おじさん! ありがとう…いい人…ネ」

二人は電車を降り、閑静な住宅街を5分程歩き、おじさんの家に着いた。

「さー入って」

「わーっ! おじさんの家ってスゴク大きいんだ!」

「おじさんが設計した自慢の家なんだよ」

「へー…、一人で住むには…何か…勿体ないナ」

「そうだね、使ってない部屋が沢山有るからね…」

「エヘヘ…、由美もこんなお家に住めたらいいなー」

由美は居間に通され…キョロキョロ辺りを見回した。

「由美ちゃん、おじさんの部屋見せようか」

「あー…、見たいナ!」

「じゃあこっちに来て!」

「由美は広い廊下を歩き、奥に向かった」

おじさんは、頑丈そうな扉を開け、さーどうぞと由美を部屋に案内した。

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