青い目覚め
横尾茂明:作

■ 旅立ち4

「由美ちゃん…もう泣かないで…今日からおじさんと一緒に住もう」

「由美ちゃん…おじさんのこと好きと言ってくれた、お嫁さんになってくれると言ったネ」

「お母さんを許して上げようよ! お母さん大好き人が出来たんだ! 由美ちゃん分かるだろ…邪魔しないで自由にして上げようよ。由美ちゃんだって…おじさんとの仲を邪魔されたらイヤだろ…ネッ…お母さんを当分の間、そーとしてあげようよ!」

由美はいつしか泣きやみ…幸夫を振り返り、
「由美分かった…お母さんの好きにさせる」

「由美…おじさんがいるから平気だよ。これから毎日おじさんと一緒なら平気だもん」

幸夫の全く論理性の無い説得で…この少女を騙した事に心が痛んだが…思わぬ方向に事が進展したことで心の痛みは相殺された。

(この少女が手に入った…)
幸夫は正直…小躍りしたいほどの喜びで目眩さえ感じた。

「さー由美ちゃん、これからは何時もおじさんと一緒だよ…よろしくね」

「こちらこそ不束な娘ですが…宜しくお願いします…?」

二人は顔を見合わせ笑いあった。

「由美ちゃん…お腹減ったね、何かスゴク美味しい物を今日の記念に食べにイコ」

「由美ちゃん、なに食べたい?」

「オムライス!」
………またもや二人は顔を見合わせ笑いあったのである。

車は走り、国道沿いのファミレスに入った。

「由美ちゃん…本当にオムライスでいいの?」

「うん、由美…毎日でもオムライス食べたいの」

「へー…じゃぁーおじさんもオムライスにしよ」


幸夫と由美は店員の運んできたオムライスを食べ始めた。

「おじさん! ここの美味しいね…でも由美が作ったオムライス…もっと美味しいよ!」

「由美ちゃんのオムライスおじさんも食べたいな」

「由美何時でもおじさんに作って上げる」

「オムライス以外も由美いろいろ作れるんだよ!」

「へー…おじさん楽しみだナ」

「由美ちゃん…今日からおじさんと一緒に住もう!」

「エッ! …いいの…由美…由美…嬉しい…おじさんと毎日一緒にいられるなんて…」
由美の大きな目から涙が湧いてきた。
幸夫と由美はオムライスを平らげ、腹ごなしにとファミレスに続く裏山の小道に脚を向けた。
辺りは木々が鬱そうと茂り…都心から僅か1時間足らずの所にこんな自然が有るのかと驚いた。
小池に行き当たり…それを迂回すると山道が有った。

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