ボヘミアの深い森
横尾茂明:作
■ プルゼニの陵辱2
かすかな金色の産毛が際だち、柔らかな恥丘がピンク色に輝きはじめた。
(あぁぁ綺麗…)
少女はしばし自分の性器に見とれ、性器から太腿に至る美しいラインを眺めていた。
ふいに扉の鍵を開ける音がした。
男が大きい袋を下げてドアを勢いよく開ける。
「プラハに行って来たぜ! 仕事は終わりだ」
「お前腹が空いたろう、旨いもの作ってやるからな」
男は袋をテーブルに置き、光に浮き上がる少女の裸像を感心した様に目を細めて見る。
そしてフッと気付いたように洗面器へと目を転じた。
「オイ、こりゃースゴイ量だなー」
男は言いながらベットに進み、しゃがんで洗面器を持ち上げ匂いをかいだ。
そしてトイレに流しながら…。
「綺麗な躯をしてても…小便の匂いだけは差別はねーや」
「ウンコもやっぱり臭いんだろうな…」
「おっと…しまった、オマルを買うのを忘れたぜ」
男は独り言の様に言いながら、少女の赤面顔を嬉しそうに眺めては尿を音を立てて少しずつトイレに流していく。
「昨夜、お前は俺の女ですと言ってくれたが…俺はまだ信用していねーのよ」
「当分は手錠に繋がれるんだな」
「それと、明日から俺は二日ほどミュンヘンに帰るが…」
「危ねーからお前は連れてはいけん」
「寂しいだろうがここで留守番してろ!」
「なーに、食料はたっぷり買ってきたから安心しな」
「さー昼飯にするか…」
男はトイレを流すと洗面器をシャワーで洗い始めた。
袋からジャガイモを取り出し、皮を器用に剥いておろし始める、ブランボラークを作るようだ。
それが終わると小麦粉を団子にして茹で始める、先のジャガイモは早々にフライパンで焼き始め、同時進行でシチューの準備にかかる…その手際のよさに少女はつい見とれてしまった。
「俺はなー…陸送前はミュンヘンでコックをやってたんだぜ」
「しかしよー…酒癖が悪くてなー、女房にも逃げられて…」
「まっ、昔のことはいいやな…」
「お前トラチェンカは食べられるか」
少女は急に質問され、何故かドギマギし赤面する。
「は…ハイ…好きです」
「そーか…俺はこいつが好物でなー、ライ麦パンにつけて食ってりゃ何にもいらねーのよ」
テーブルに並んだ料理はチェコの粗末な家庭料理だったが、空腹の少女には御馳走に見えた。
男はライ麦パンにトラチェンカをたっぷり乗せてくれた、そしてシチューもクネドリーキもブランボラークもとろけるほどおいしかった。
少女は満腹感に幸せを感じた…。
男が旨い料理を作ってくれ、夜はあんなに気持ちいいことを毎晩してくれる…。
寒風のなか、街角で客に罵倒されて売る惨めな行商よりどれほど幸せかとも想った。
親子ほど歳の離れたオジサンだけど…心は若いと感じたし、プラハに綺麗なアパートも用意してくれると言ってた。
(どうしよう…)
(でも…おうちにも帰りたいな…)
ビール瓶を乱暴にテーブルに置く音で少女の空想は中断された。
男はピルゼンのプラズドロイを立て続けに4本飲み干し、汚くゲップをしていた。
目つきが次第に変わってきている。
昨日の昼過ぎのような怖い目…。
先ほどまでの優しい眼差しはいつしか消え…少女の全身を舐め回すような卑猥な眼差しで見つめだす。
その燃えたような眼差しは少女の胸と股間に注がれた。
少女は目の行き先を感じた刹那、自分が全裸であったことにはじめて気付く。
急速に羞恥心が湧き上がり…股間と胸を手で隠し震えた。
「コラー、隠すんじゃない!」
男の声音が完全に変わった、目も血でギラギラと濁ってきている。
あの時と同じ目…。
(あぁぁぁ…痛いのは…いやー)
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