ボクの中のワタシ
羽佐間 修:作
■ 第1章 目覚め1
―明菜との別れ―
――明菜を抱くの、2週間振りかあ?! ふふっ
月に2、3度、泊まりに来る山瀬明菜は、速水竜之介が勤めるゲーム制作会社 デジタル・システム・ワークスの後輩で、付き合って半年ほどになる。
シャワーを浴びながら、明菜の身体を思うと分身には血がみなぎっている。 濡れた身体を拭うのもそこそこに竜之介はバスルームを出た。
「明菜〜! 早くシャワー浴びておいでよ〜。 ボク、もうこんなに勃っちゃったあ」
「ねえ、竜之介クン、、、」
リビングに入るとガールフレンドの明菜が突っ立っていた。
――うへっ?! 何か怒ってる、、、
いつもはたっちとあだ名で呼ぶ明菜が名前で呼ぶ時は、ご機嫌斜めの時に決まっている。
「これ、なんなの?! 説明してよ」
その手にはベージュのパンストが握られ、目には涙が滲んでいた。
――あっ、、、
「えっ、、、 そ、それは、、、」
華奢な身体つきでそそり立つペニスを目にしなければボーイッシュな女の子のように見える速水竜之介は茫然と立ち尽くす。
「説明してよっ! どうしてこんな物があるの?! これっ、誰のなの?」
「あっ、、、ちっ、違んだ。 明菜、、、」
「じゃ、これは何なの!」
明菜がパンストを握り絞めていた手を緩めると、白い物がいくつかはらりと落ちた。 口紅やマスカラの付いたコットンパフだった。
「ゴミ箱の中にあったわ、、、 誰か他の女の人がこの部屋に出入りしてるんでしょ?!」
「あっ、、、 誰って、、、 あ、明菜、、、 違うんだ、、、」
「ひどいよ、竜之介クン、、、 信じてたのに、、、 うぅぅぅぅ、、、、」
「あ、明菜、、、 あのさぁ」
『それってボクのだよ』と喉元まで出かかった言葉を竜之介は飲み込み、明菜を抱き寄せようとした。
「いやっ! ごまかさないで! 大嫌いよ! 竜之介クンなんてっ!」
明菜は竜之助の胸をドンと突き放し、パンストを床に投げつけ、泣きながら部屋を飛び出して行った。
「ま、待てよ、明菜! それは、、、」
(バタン!)
――明菜、、、
竜之介はフローリングにぺたりと座りこみ、明菜が出て行ったドアをぼんやりと眺めていた。
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