ボクの中のワタシ
羽佐間 修:作

■ 第2章 新しいボク13

 -嫉 妬 -


《あざ〜っす! もちろん先輩のおごりっすよね!》

 竜之介から返信メールが届いた。

――あのやろっ! ざけんなよ

 橋本が竜之介に顔を向けると、Vサインをして悪戯っぽく笑っていた。

――うへっ! か、可愛い、、、 ウィンクで返事しやがった、、、

 橋本はまだ何人か残っているスタッフに内緒で、久しぶりに竜之介を飲みに誘うメールを送っていた。

――あいつ、マジで女に見える時があるよなあ、、、 

 竜之介のふとした仕草に、ドキッとするほどに女を感じる瞬間があった。

 元々、竜之介は美少年というタイプなのだが、髪を伸ばし始めてから頻繁に感じる。

 眉毛は細くカットしているし、髪を結わえ露わになった襟元の遅れ毛などは女のパーツにしか見えない。

――ふぅ、、、 何でウィンク付きのVサインだよ、、、 調子狂っちまうなあ、、、

   ◆

「おうっ、明菜。 久しぶりだな。 元気か?」

「あっ、橋本さん。 おはようございます」

 明菜は、竜之介の属する開発チームの橋本チーフとエレベータホールでばったりであった。

「橋本チーフはいつお会いしてもお元気そうですね、、、」

「はははっ。 それが俺の唯一の取り柄だからな〜。 でも今日は宿酔いで頭がガンガンするけどな」

「あのぉ、、、 速水さんとですか?」

「ああ。 昨夜は久しぶりに奴とバカ話しながらタラフク飲んだなあ」

「そうですか、、、」

「ん?! 何だ、明菜?! まだ竜之介に惚れてるのか?」

「そんなこと、、、 もう随分前のことですよ、、、」

「ふふっ。 あいつとの間に何があったか知らないけど、どうも新しい女が出来たみたいだぜ」

「えっ?! そうなんだあ、、、」

「最近は飲みに誘っても付き合いが悪いし、なんだか雰囲気が凄く変わったぞ。 女の影響だな、あれは」

「そうですか、、、 私には関係のないことですけど」

「だったら、明菜。 俺と付き合わないか?」

「え〜っ?! 本気で言ってるんですか?」

「ああ、本気だとも! 前から愛してるって言ってるじゃん」

「もぉ〜、橋本さんたら〜、、、 誰にでもそんなこと言ってるじゃないですかあ」

「そんなことないよ。 俺は明菜一筋なんだぜ! 可愛い後輩の竜之介の彼女だから遠慮してただけさ」

「もう、そんな調子のいいことばっかり。 そんなことより健康診断を受けてないのは橋本さんのグループだけですよ。 忙しいとは思いますけど早く受診してくださいね」

「ほいほい。 わっかりましたよ、総務のマドンナさん。 でも、明菜〜。 いま言ったこと本気だからね〜っ。 考えておいてくれよ」

「もう、いい加減にしてください。 橋本さん、エレベータ、来てますよ」

 既に他の社員たちが乗っているゴンドラに二人は慌てて流れ込む。

――ふ〜ん、、、 たっち、、、 彼女出来たんだ、、、

 明菜は、忘れたつもりにでいた竜之介に新しい彼女が出来たらしいことに少し苛立っている自分に驚いてしまった。

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