ボクの中のワタシ
羽佐間 修:作

■ 第4章 翻弄17

 ―復讐―

 5時を少し過ぎた頃に内線電話が鳴った。

「速水さん?! 山瀬ですけど。 すぐ総務部に来てくれますか」

 電話は明菜からだった。

「えっ?! な、何か、、、」

――また何か企んでいる、、、

 竜之介はビクビクしながら明菜の言葉を待った。

 明菜の竜之介に対するいたぶりは日ごとにエスカレートしている。 給湯室やエレベーターの中で下着のチェックを受けるのは序の口で、昨日は危うく恥ずかしい姿を他の社員に見られてしまうところだった。

「いいから、来てっ! それとも昨日の商談室の方がいいのかしら?!」

 声を殺して明菜が言った。

「あっ、いや、、、 わかった。 すぐ行くから、、、」

 竜之介の脳裏に昨夜の商談室での恥辱がまざまざと蘇った。


   ◆

 この日、昼休みに下着をチェックされた時、商談室に8時に来るように明菜に言われていた。

「明菜、、、 明菜、、、」

 真っ暗な商談室の中に向かって竜之介は囁くように明菜の名を呼んだ。

――まだ来てない、、、

 灯りを点けて中に入り様子をうかがう。

 パーティションで仕切られた小間をひとつずつ覗いてみると、一番奥のテーブルに服が吊るされているのが目に入った。

――あっ、、、 あのワンピ、、、

 デスクの上に紙が置いてある。

 手にとってみると、明菜の恨みのこもった指示が書いてあった。

≪このワンピース、見覚えあるでしょ。 アンタがいやらしい目をして原宿で私に買ったボディコンワンピよ。 アンタみたいな変態に似合うはずよ。 これに着替えて私が行くのを待ってて。 上に何か着て隠しちゃダメよ。 絶対よ!≫

「なんてことを、、、 こんなこと出来るわけがないだろ、、、」

 明菜のメモをクシャクシャと握りつぶすと、その下に幾枚かの写真が置いてあるのに気付いた。

「うそっ!?」

 一瞥して竜之介は血の気が引いた。

――いつの間に、、、

 顔はマジックで黒く塗りつぶされているが、どう見ても屋上で明菜が立ち去るのを裸で見送っていた時の竜之介の写真に間違いない。

 思えばあの時は恥辱で高揚し一刻も早くネオンの明りから逃れ裸身を隠したい一心で明菜の様子に気を配る余裕などまったくなかった。

 顔が引き延ばされた写真を見ると愕然とする。 フラッシュなしで高感度カメラで撮られたからだろうか、粒子が粗く鮮明ではないが、黒く 塗られていなかったら被写体は竜之介だとはっきり分かるカットだ。

――言う通りにしないと修正なしの写真をばらまくぞってことか、、、

 竜之介はため息をつき、商談コーナーの椅子にへたり込むように座った。

 出入り業者や下請けが来て打ち合せをするのはほとんど夕方までで、夜に来社する会社は滅多にないことを竜之介は知っている。

――もしも誰かが来たら、、、

 どうするかしばらく悩んでいたが、手にした写真を見るとおのずと答えが出る。 今の明菜を怒らせたら何をするか判らない。

――少しの間だけ、明菜に嬲られれば済むんだ、、、

 竜之介は意を決し、部屋の電気を落として奥の小間へ戻った。


   ◆

――来るなら早く来て、、、

 竜之介は明菜のワンピースに着換え、直ぐに脱げるようにスタジャンを肩から羽織り、真っ暗な部屋の中でじっと明菜の到着を待っていた。

 本当に明菜が来るのか、、、 もし本当に誰かお客さんが来たらどうしよう、、、 こんな姿を見られたら会社には居られなくなる、、、 バカげたことは止めよう、、、 竜之介は指示通りに着換えてもなお迷い悩み、不安に苛まれていた。

「はっ?!」

 エレベーターが止まり、ドアの開く音が聞こえた。

――明菜?! 脱がなきゃっ、、、

 竜之介は慌ててスタジャンを脱ぎ、身構える。

 人の声が聞こえ、複数の足音が近づいてくる。

――うそっ?! まさか、、、

 竜之介は慌ててデスクの下に潜り込んだ。

 息を潜めていると、扉が開く音が聞こえ、部屋の灯りが煌々と灯った。

――あぁぁぁ、、、 どうしよう、、、 どうしよう、、、

「どうぞ。 こちらへ」

「はい」

 この部屋に来訪した男を連れてきたのは明菜だった。

 二人はパーティションを隔てた真横のブースに来た。

「ご連絡いただけてとても嬉しかったです」

「あけぼの事務機さんはとても熱心に通ってらしたから」

「ありがとうございますっ。 課長さんへの山瀬さんのお口添え、感謝します」

「うふっ。 後はあけぼの事務機さんの頑張り次第ですよ。 望月は直ぐにまいりますから」

 明菜は営業マンらしい男を残し、商談室を出ていった。

――ひどいよ、明菜、、、

 見知らぬ事務機屋の営業マンの真横で明菜のワンピースを着た恥ずかしい姿で這いつくばり身動きすら出来ないこの危うい状況に竜之介はなすすべがない。

 ほどなくドアが開き、人が入ってきた。

「待たせたね」

 声の主は明菜の属する総務部の望月課長だ。

「どうも! はじめまして。 あけぼの事務機の板倉です」

 望月が入ってくるやいなや、板倉という男が椅子を鳴らして勢いよく立ち上がった。 その音に竜之介は縮みあがる。

――ひっ〜!!

「まあ、山瀬が言うから話だけは聞くがね……」

 望月は見下したような横柄な物言いでどかっと席に着いた。

「ありがとうございます。 それでは早速、こちらの新製品のコピー機のご紹介をさせてください」

 卑屈といっていいほどの態度で板倉の商品説明が始まった。

 竜之介を嬲るために仕掛けられた商談に竜之介は身じろぎもせず、じっと耐えるしかない。


   ◆

 20分近く続いたコピー機の商談が終わり、望月たちが出ていくのと入れ替わるように明菜が入ってきた。

 明菜はテーブルの下に潜んでいた竜之介を窓際の床梁に立たせ、延々といたぶり続けている。

「あぁぁぁ、、、 明菜、もうそんなにしないで、、、」

 黒いブラジャーとショーツだけの竜之介の裸身を明菜に弄ばれ、せりあがる快感を明菜に悟られまいと懸命にこらえていた。

 しかしこぼれ出る鼻に掛かった甘い喘ぎは快楽に呑まれていることを隠しようもなく、ブラインドの隙間から洩れるわずかな光に竜之介の汗ばんだ肌が妖しく光る。

「あぁっ……あぁ……あぁ……」

 乳房への刺激に竜之介がひと際敏感に反応するのを面白がる明菜は、執拗に竜之介の乳房を揉みしだき、乳首を弄び続ける。

「アンタは他人に見て欲しくてこんなオッパイ造っているんでしょ?! ほらっ、見て貰いなさいよっ!」

 明菜はいきなりブラインドのフラップを直角に開いた。

「だめぇ……・あぁ……・あぁ……・」

 ブラインド越しに射し込むビル街の灯りで竜之介の艶めかしい裸身が浮かび上がる。

「さあ、見て貰いなさい。 ほらっ! たくさん人が歩いてるわよ」

 明菜は、竜之介の身体を荒々しくブラインドに押しつけ、ブラジャーのホックを外した。

「ああぁぁぁ 赦して、、、やめて、明菜、、、うあっ、あーうっ、いいあああっ」

 プルンとこぼれ出たバストに明菜の指が無慈悲に喰い込む。

「いやぁぁぁ!……ゃ、やめてぇぇぇ……」

「うそっ! 嬉しいくせに」
 身悶える竜之介の股間に明菜は手をねじ入れ、ショーツのクロッチの部分を激しく擦る。

「あっ、あう、、、 だめっ! やだっ。 いやあああああああ」

 竜之介は懸命に逃れようとするが、明菜の指はその中心部を嬲り続ける。

「あっ、なあ〜に、これ、、、」

 驚いたように明菜が股間から手を引っこめた。

「濡れてる、、、」
 明菜が指を擦り合わせながらぽつりと言った。

 長い時間、羞恥に晒されていたせいでタックの合わせ目から飛び出ている亀頭はおびただしいほどのカウパー腺液で濡れていた。

「ショーツに染みるほど興奮してたのね、、、 愛液のつもりなの?! ホントにいやらしい人ね、、、」

 再び竜之介の股間に突っ込まれた明菜の手はショーツのクロッチのクリ○リスを模した亀頭を探り当て、爪を立てて掻き始めた。

「あっ、ダメッ! んあゥ……あうんッ……」

 布越しにカリカリとペニクリを爪で弾かれる衝撃の快感は、一気に竜之介を押し上げ、甘く痺れる腰はクネクネと悩ましげに揺れる。

「なぁ〜に、その腰使いっ! いやらしいアンタをもっと見て貰いなさい」
 そう言うやいなやブラインドを昇降させる紐を握り、強く引っぱた。

「ひっ! いやぁぁぁぁ〜〜〜」

 目の前のブラインドが一気に引き上げられ、目の前に外の夜景が拡がる。

 思わぬ明るい光を浴び、被虐の快感は頂点に達した。

「あーっ、ああうっ、あっううっ、いいいうっ……いいいい」
 竜之介は頭が真っ白になり全身をガクガク震わせ床梁の上に倒れ込み、ショーツの中にはペニクリから白濁液がトク、トクと溢れ出していく。

「なっ、なんなのよ〜〜〜〜  逝ったの?! 逝ったのね! 変態っ!」

 明菜は後ずさりしながらヒクヒク痙攣する竜之介に汚らわしいものを見るような視線を向け、怒りの言葉を投げつけて部屋を出ていった。

 嗚咽を漏らし小刻みに揺れる竜之介の大腿に、クロッチから染み出した精液がトロリと伝い流れ落ちる。

――あぁぁぁ、、、 戻らなくっちゃ、、、

 いつまでも惨めな姿でこの部屋に居るわけにはいかない。 気力を奮い立たせ身体を起こすとショーツに拡がる精液の熱くヌルヌルした不快な感覚が竜之介を一層惨めにさせる。

 溢れる涙を拭おうともせず、竜之介は急いで服を身に着けていった。



   ◆

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