歯型
田蛇bTack:作

■ 4

≪第四話≫

ヒロ君…?
夜の闇がぼんやりと青く燃えていた。その中に私とヒロ君がふたりポツンといる。
ヒロ君は何もしゃべらなかった。ただ、二人とも裸だった。裸なのに恥ずかしくない。きっと裸というより、うまれたままの姿、というほうがしっくりくるような気がした。

ヒロ君の股間は燃えるように赤く黒く、そしてまっすぐ天に向かって勃ち上がっていた。心なしか、ヒロ君の呼吸が軽く乱れている。

「これが…勃起…なの?」

私はヒロ君のそれにおそるおそる触れてみた。思っていた以上にカタイ…。
先のほうが三角錐のようにとがっているのはきっと、女の子のアソコに入れやすいために進化したからなのかな…と、ついつい学術的に考えてしまう。

両手で包みこむ。血管がうかびあがり、ドクドクと波打っているのがわかる。
見上げるとヒロ君は優しく微笑んでいた。

そっと口に含むと、かすかにヒロ君の体が痙攣した。そのままのどの奥へとヒロ君を誘導し、今度は強く吸いついてみた。ヒロ君の体がひくひくと動く。ヒロ君の顔は快感に歪んでいるように見えた。

視線がぶつかった。思わず口に含んでいるものを出してしまった。
これだけ舌をつかってしごいてもまだヒロ君のそれは元気に勃ちあがったままだ。

ヒロ君は、私の肩に優しく触れ、そのまま覆いかぶさってきた。
今度は俺の番だよ、と言わんばかりにヒロ君は舌を出し、私の足の甲を舐めはじめた。
足の甲からふくらはぎ、すね、膝の皿、裏、太ももをゆっくりとあがり、もう熱くてねばる液体がしたたる性器をいとおしそうに舐めはじめる。
…私が一番感じるところをはずさずに…。

私の呼吸がどんどん乱れ、心臓が音をたてて鳴る。その切なさに全力であえぎたくなる心を抑え、私は声を押し殺して鳴いた。

ヒロ君の舌はへそ周辺をなぞり、脇にを通り首筋へ。一瞬キスをしてくれるかと思ったが、期待ははずれて、乳房のほうへおりていった。

右乳房。歯型の跡…。
ヒロ君はそれにすぐに気付いたようだった。延々と私の右乳房をみつめる。
そしてその舌はゆっくりと歯型に沿って動き始めた。

「あ!!!!」

自分の叫び声で目が覚めた。時計を見ると朝7時。起床時間は6時半だから、かなりの寝坊だ。

「さやか、だいぶうなされてたね」
里奈が面白そうに言う。一瞬背中に冷たいものが走った気がしたが、ここは笑ってごまかすことにした。
「悪い夢を見ていたのよ。」

そう言った瞬間、体に違和感を感じた。どうやら寝ている間にブラジャーがとれてしまったようだ。
あわててつけなおそうとしたとき、右乳房が目に入ったが、なんと歯形がきれいになくなっていた。
驚いて上半身裸になり、鏡を見てみたが、やはり、ない。
奇跡が起きたようだった。

「ほら、さやかも里奈も、もう朝ごはんの時間だよ、いそげ!!」
「わー! 大変!!」

しぃちゃんの言葉に、みんなはバタバタと部屋をでていき、そこにはつけっぱなしのテレビだけが取り残された。


「昨晩遅く、神奈川県C市の路上で、ひき逃げ事故が起こりました。発見次第、すぐに救急隊員がかけつけたとのことですが、被害者の男性はすでに死亡していました。死亡したのは県内高校二年生、S田ヒロさん、17歳です。…」

≪完≫


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