鈴宮ハルキの憂鬱
なぎぃ:作

■ ハルキ編1

とある場所のとある学校。

その“北高”に、SXS団と呼ばれる(仮)部活動があった。

そして、今現在その場所には『団長』を名乗る一人の少女と、『雑用係』を命じられた一人の少年だけが残っていた。


「ちょっとキョン! これは一体どういう事なの!?」

大声で少年に怒鳴り散らしている少女。
名を『鈴宮ハルキ』

山吹色の髪飾りが特徴的な淡い焦げ茶の髪を掻き上げ、目の前にある机を左手で叩く。

キョンと呼ばれた少年は「俺に聞くな」とあっさり応えた。
その冷静さに嫌気がさしたのか、一方のハルキは腕を組み直し、浅く溜め息をついた。

どうやら、いつもの時間になっても、部員が二人しか集まらなかった事に腹を立てているようだ。

「今日はみくるちゃんのコスプレ披露会だったのに.........」
「俺は初めて聞いたぞ」
「当たり前じゃない。最初から知ってたら面白くないでしょ」

ある意味で、そのみくるとやらは今日部活動に参加しなくて幸運だったかも知れない。
何も知らずにのこのこと此処に来ていれば、真っ先にハルキに捕らわれ、人形のように扱われていただろう。

だが、そのコスプレ披露宴も悪くはない、とキョンは心の中で思った。

「折角たくさん衣装も用意したのに!」

ハルキがさげていた紙袋の中には、色鮮やかな布が入っていた。

「これとか見てよ。可愛いから買ってきたの。たまにはメイド服のバリエーションも増やそうと思ってね」

広げられたのは明らかに丈の短い、真っ黒なメイド服。
ハルキが『黒』を選ぶことは珍しく、それはそれでキョンにとって新鮮な事だった。

ハルキが机の上に衣装を並べて何か説明している事も気にせず、キョンはみくるにその服を着せたときのイメージを膨らませていた。

......どれも似合う。

キョンは顔をあげてハルキの顔を黙視した。

「何よ」

とキツい表情で睨まれたにも関わらず、キョンはこんな発言をしたのだ。

「折角だから、お前も着てみろよ」

「何いってんの、アンタ」

ハルキは顔をしかめ、キョンの顔を覗き込んだ。

「いや、だから.......」

キョンはしどろもどろに後ずさりする。
ハルキは腰に手をあて、

「まぁ良いわ。一応、みくるちゃんの立場に立つのも必要よね。団長なんだから」

と、勝手な言い訳を付け足して衣装を探り始めた。
最終的に手に取ったのは、一番最初に見たメイド服だった。

俺は直後、その部屋から退散し、しばらくの時間を暇にした。

5分ほど経っただろうか。

「もう良いか?」という問いに
「良いわ」という答えが返ってきたので

その扉を開けた。

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