鈴宮ハルキの憂鬱
なぎぃ:作

■ みくる編1

いつぞやかの休日。

暇を持て余し、部屋中をうだうだ転がり回ることにもそろそろ飽きてきた。
妹の勉強を教えるのも面倒だ。
かと言って、こんな貴重なお休み時に暇だ暇だと言っているのも珍しい方だ。
俺の携帯がなるなんて、もってのほか。

かかってくるとしたら……

ピリリリリリリリリリリリリ

どーせ……

『あ、キョン? あんたいつまで寝てるワケ? 私からの貴重な連絡には素早く反応しなさい!』

……やっぱり、我が団長様の収集電話か。

『今から3分以内に、いつもの場所に来なさい』

ブツッ ツー。ツー。ツー。

言いたいことだけを言って電話をきった団長様の後ろには、既に他の団員も集まっているのだろうと、そして、その団長様は機嫌を損ねているのだろうと、更に、遅れていった罰としてその後の飲料も全て俺の奢りになるだろうと……
頭の中がフルに回転した。

そりゃぁ、少しでもハルキの機嫌を軽いモノにしようと、努力はしたさ。
でだがな、3分以内は無理なんだよ。自転車飛ばしてやっと5分だぞ?
その前に準備やらなにやら、やることだって……

「ぐちぐち五月蠅いわね。まぁ良いわ。どっちにしろアンタのおかげでコーヒーが無料で飲み放題なんだから」

おい。飲み放題はやめてくれ。今月の金が減るじゃないか。

「当然の報いよ」

どうやら俺は、運命、もといハルキに決められた途を歩むしかないようだ。

「今日の活動は……」

ハルキは俺の事など全く無視して、活動の日程を話し始めるのだった。


今回の活動は野外探索というものだろうか。

普段は学校でただ奇怪な事件が訪れるのを待っているだけの俺たちだったのだが、む
しろその方が平和で良かったのかもしれない。

まずその事例に、俺の財布がそろそろ札を求めているのだ。
それだけじゃない。
小泉は良いとして、朝美奈さんの顔を見てみろ。どうせハルキのことだから、朝早く
に叩き起こしでもしたんだろう。可哀想に。

それにしても今日は休日だと言うのに何故か永戸はいつもと同じように制服を来てい
る。
たまには違うジャンルの洋服を買ってみれば良いのに。


さて

本題に戻ろう。

くじびきの結果、俺は前半永戸と共に行動することになった。

話しかけようにもその無表情な瞳に何を問えば良いのかも解らない。

「…こんなことしても何も見付からないと思わないか?」

永戸は答えなかった。



後半は一人一人の単独行動となった。

俺は最初からやる気などなかったので、公園のベンチで呑気に缶ジュースでも飲もう
と思ったんだ。

その時だった。

「あっ。キョンくん…っわ…ふわわわっ」

どこか聞き覚えのある声に振り向いてみれば、そこには栗色の髪の天使が地面にへば
りついていた。

「あ…ぃたた…」
「大丈夫ですか? 朝美奈さん」

今にも泣きそうな天使は鼻をおさえて顔をあげた。先輩と言えど後輩にしたいそのベ
ビーフェイスには俺も勝てる気がしない。
手を差しのべるしか選ぶ道は無いな。

「ぁはは…ありがとう」

いえいえ。朝美奈さんのためならこれくらいどうって事無いですよ。
手を差しのべても礼さえ言わない団長に比べたら…

「でも良かった。キョンくんがここにいて」

朝美奈さんはそっとはにかむように笑った。


朝美奈さんはこの暑い日にしっくりとあうソーダ水なるものを飲んでいた。俺はその
横でコーラを口にする。

「んで…朝美奈さん、収穫はどうでした?」
「はぁ…それが全然…」

まぁ、そうだろうな。
第一、こんな身近で宇宙人がうろついてても困るだろう。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊