光梨の奇妙な日常
煙突掃除屋さん:作
■ AM6:15 起床2
「星歌さん。もう駿ちゃんは起きてるの?」
窓から反対側の建物の2階の窓を見上げる。 ライトグレーのカーテンはまだ閉まったまま…寝坊がちな駿介のことだからまだ寝てるのか、それとも誰かが起こしている《最中》か…。
「駿介様はまだお休みだと思います。さきほど加奈お嬢様が起こしに行かれたようですよ?」
星歌はまだ光梨のぬくもりの残るベッドシーツを手早く交換して小脇に抱えると光梨の方に向き直ってニコリと微笑んだ。
「また加奈お嬢様に先を越されてしまいましたね。」
「ん〜 もうちょっと早起きしなきゃいけないかぁ〜。」
光梨は駿介の部屋の窓を恨めしそうに睨んでみた。
「最近、加奈お嬢様は学校でもおもてになるそうですね。昨日も男の子が加奈お嬢様の帰りを玄関のトコロで待ってたみたいですよ。」
そうそう…確かにいた。クラブ活動を終えて帰ってきた光梨に加奈のことを聞いてきた男の子がいたっけ…。
「ずっと待ってらしたんですけど… 昨日は加奈お嬢様はピアノのレッスンの日でいらっしゃいましたから…」
加奈は本格的に音楽を勉強している。学校では吹奏楽部に所属し、学校から帰れば夜遅くまでピアノのレッスンをしているのだ。
「可哀相に…いつまで待ってたんだろうね。」
光梨は駿介の部屋の窓を見上げながら呟いた。同級生の男の子に告白されても加奈は興味ないんじゃないかな?だって……グレーのカーテンの向こうで行われているであろう行為を想像して光梨は微笑んだ。
「加奈お嬢様も凄くお綺麗になられましたからね。」
シーツを抱えたまま星歌が光梨に微笑みかける。そうなのだ…光梨も加奈も近隣では有名な美少女だった。2人が高校生になった頃からラブレターは数知れず…呼び出しを受けて告白されるのもほぼ3日に一度…色々な男性が声を掛けてくる。中にはずっと年上の男性もいて時々困ってしまうのだが…。
「あ…駿ちゃん起きたみたいね。」
2階の窓のカーテンが揺れて加奈の顔が覗いた。可愛いポニーテールが少し乱れ、少々上気した顔でカーテンを開けている。
「今朝は激しかったみたいね。駿ちゃん元気だなぁ〜。」
窓を開ける加奈と目が合うと、光梨はおもむろに手でピストルの形を作って恥ずかしそうに微笑む加奈に向けた。
「BAN!!☆」
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