人妻の事情
非現実:作

■ 人の妻として17

「大丈夫、決して触らないからサ」
「で、でも……アッ、アノッちょ、ちょっとっ!?」

目の前で突然しゃがみこんだ田崎さんに、私は堪らず悲鳴に似た声をだした。

「み・る・だ・けだからサ、見るだけ」

(そ、そんな事言われても……ソコで座られたら私ぃ)
田崎さんの視線の目の前は、大事な大事な部分である。
プレゼントしてくれたショーツは隠すという機能を果たしていない。
寧ろ女性の身体を淫らに仕立てるだけの物なのだ。
どうしたって見えてしまう事態ではあるが、理性の拒否反応で自然と内股に力が入る。
(やだぁぁ、す…凄く近いぃぃっ!!)
数値にして10センチ程だろう、下半身の大事な秘所には田崎さんの興奮した鼻息が掛かっていた。
(きっ、き、気持ち悪ぃっぃ!)
夫にもここまで近付かせた事すらないのに、他の男性にこんな事をされている。

「ん〜ぅ、い〜い臭いだぁ」
「なっぁ、何をいきなりっ!?」

もう我慢できなかった。
私は飛び退いて、両手で下半身を隠して言った。

「な、何て……何て事をするのですかっ!!?」
「え、何って」

言葉に詰まった田崎さんだったが、直後にはイヤラシサ全開の笑みでこう切り替えしたのだ。

「ねぇ奥さぁん、何したか言って欲しいの?」
「ぇ?」

今度は私が言葉に詰まる番だった。

「ねぇねぇ理紗ちゃん、僕が何をしたのかをさぁ〜僕の口で聞きたいんだ?」
「そっ、そんな事っ……聞きたくもありませんっ!」
「フフン、言ってあげるよ〜そんなに聞きたかったなんて知らなかったよ、僕」
「ゃあっぁ!!」

耳を塞いで拒んでは見るものの、やはり田崎さんは一枚上手だった。
(こ、この人……何て頭の切れるっ)
聞こえない私に対して、田崎さんは部屋の窓を全開にしてしまったのだ。
意図は直ぐに解った、それをされたら生きてはいけない。
塞いだ耳を元に戻すしかないのだった。

「んふっふっふ、理沙ちゃんて以外にアレだねぇ〜〜。
墓穴を掘るタイプ?。」
「〜〜」
「聞きたい事ネ、聞かせてあげるからね理沙ちゃん」
「ぅう」
「でもね〜その前に〜その感覚忘れちゃったからさ、もう一回だね。
理紗ちゃん、こっちへ来て起立の体勢になって。」

もう逆らう事は出来ない。
肩膝付いている田崎さんの目の前まで、震える足を運ぶしかなかった。

(こっ、この辺りで堪忍してぇ……)
「さっきより距離があるけどサ、僕も我慢強い方だと思うけどねぇ?。
限界っていうものもあってネ、あんまり奥さんが反抗的だとどうにかしちゃうよ?。」
「ごっ、ごめんなさいぃ」

慌ててさっきの位置ら辺まで修正する。
田崎さんと私の下腹部の秘所まで数センチ……粗い鼻息と狂った視線が間近な場所。
数回大きく息を吸い込んだのち激しく鼻を鳴らしながら、ワザとらしく臭いを嗅ぐ田崎さんが再び口を開いた。
聞きたくもない悪魔の言霊。

「ん〜〜ぅ、更にイヤラシイ臭いになってきたねぇ〜奥さんのコ・コ。
外見もピンク色で奇麗だし形も申し分無いねぇ〜〜。」
「……も、もぅっ許してぇぇ……」
「やっぱり上流家庭出だと違うのかねぇ、オケケの生え方も濃すぎず薄過ぎず上品だ」
「うっぅっぅ…うぅ」
「何よりもヤッパリ……この臭いだねぇ、実に芳しいよ奥さん。
初めての刺激でグッショリと濡れちゃってるんだろうねぇ〜〜。」
「許してぇ……」
「この甘美で淫猥さも兼ね揃えてる清楚な感じのあま〜〜い臭い。
アロマとしてセックスレスの夫婦に売れるんじゃない〜?。」
「ぅっぅくっ……ひ、酷ぃ」

ボロボロと涙が出た。
私、今……酷い事をされている。
軽く考えていた私は馬鹿だ。

「あ〜あ〜あ〜泣かない泣かないのぉ、り〜さ〜ちゃん。
風俗で働く事になってたらこんなんじゃぁ済まないよお?。」
「ぅっく……ひっぅく、ンぅくっふっぅぅ」
「上流家庭の奥様ってのは事の重大性ってものに危機管理が欠けてるねぇ〜」
「ぅっく、んぅふぅっふうふっぅ」
「でもねぇ?」

立ち上がった田崎さんが、この後で悪意の篭った言葉を言い放ったのだった。
それは私と田崎さんとの契約であり、私は弱い立場であると再認識されるものであった。

「まずはペナルティを与えないとね、理沙ちゃんにはサ。
その意味解るよねぇ、そのブラ。」
「ぇ?」
「でもだぁでもネェ〜、やっぱりブラはペナルティ与えないとねぇ〜」
「ぇっぇ、そ…そんな!?」
「ん〜〜〜残念だった奥さぁん、でも出来なかった事に対してはペナルティだよぉ?」
「も、う……恥ずかしい事はっぁ」
「OK〜OK〜〜、もっと着け易いブラを持って来たからサ、これ今着けてよ、ねぇ」
「ぇ?」

田崎さんがセカンドバックから取り出した。

「ぇ、と?」

それは私にとって知識あれど益々理解出来ない代物だった。
肩のストラップと背中に伸びるであろうベルト部分、決してカップとはいえない布地……だけど私はソレをブラと認識した。
何故なら…… …… …… ……
夫に内緒で私はHなサイトに入り浸り、こういうセクシー下着があると知っていたからだ。
色はドキツイ紫、私でも思いっ切り力を込めば千切れそうな位の薄い布地。

「ささ、さ〜さぁ〜、着てみてよお仕置きのを・さぁ!?」
「ぅっくぅ!」

逆らえない立場だが、これを着たらどうなるかを私はネットの写真でよく知っていた。
そう、ソレは隠す為の物ではないという事を。
手にしたがいいが実が震え、ブラと田崎さんを交互に見返す私。
怖い… ……貞操はどこまで守られるの……?。
肉体関係は皆無と言ったけど……もし、もし……欲情されたら私は……。
震える手でブラの肩紐を当てた。

それは悪魔との再契約だったという事、人妻理紗には到底重いもよらなかった事。
…… ……だった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊