人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず2

両サイドに衣服の森の中、ズンズン前へと進んでいった田崎さんから遅れつつ、今まで着た事の無い服に目移りする私。
どれもこれも興味はあったものの、結局買う事のなかった華やかなる衣装の数々。
これを着たらどうなるんだろう…… ……心奪われる。

「ん〜ナニナニ、へっぇ〜理沙ちゃんこういうのが好みなんだ?」
「え、いえっ、そのっ!?」

思わず手にしていた商品を後ろにして隠してしまった。

「いいじゃんいいじゃん〜〜理沙ちゃんの趣味、見てみたいよ僕も」
「ぁっちょっ!!」

田崎さんは強引に隠した服を取り上げるのだった。
何気無しだがチョット可愛いと思ったスカートは私にとって十分過ぎるほど大胆な物で、自ら手に取ったという羞恥で逃げ出したい思いだった。

「なるほどなるほど、こういうのがお好みなんだぁ〜?」
「まぁ……その……よ、よく見掛けるので……その」
「ウンウン、いいよね〜いいじゃない〜」

大きな黒革のベルトが特徴な裾の短いチェックのギャザーミニスカートをしげしげと眺めて田崎さんもご満悦な表情だ。
学生時代流行っていたガールズバンドがこういうファッションをしていてたのを思い出して、つい手に取ったのだった。
当時は両親も厳しくて、バイトも許されていなかった身分だったのでただ憧れていた服だった。
(これで……ちょっと冒険してもいいかな。
最近では再流行しているらしく、街中でもよく見かけるし……。)
だが田崎さんは冷静だった。

「ん〜〜膝上10センチ位、それに生地がなびかない位に固い素材かぁ〜〜。
感じとかは良いんだけど……ねぇ店長ぅ?」
「はいはい、なんでっしょ〜?」
「これよりもっと短いの無いの?」
(えぇ!?……これ以上短いのとか……無理っ!!。)

私が止めに入ろうとした時、やる気無さそうな店員さんが馴れしたんだ口調で言うのだった。

「勘弁してください田崎さん〜うちは現物しか置いてないって知ってるじゃないっすかぁ」
「だよねぇ〜……短くする方法ってない?」
(だからっ、だから何で今のから短くするのよぉ!?)
「えっぇっとぉ〜〜これはウエストが固いベルトで作られてるんですよ〜。
だからウエストを織り込むとかも無理なんでぇ、ちょっとソレは厳しいっすよ田崎さん。」
「あそ、じゃあ…… ……こっちにしよう」
「ぇえ!?」

こうして私が選んだスカートは瞬殺されたのだった。
そして、代わりに持ってきた田崎さんの選んだスカートは…… ……。

「むっ、無理ですっ!!!」

一目見ただけで拒絶体勢だった。
それはスカートしての役目を果たしていていない程の丈で、股下10センチも無い程のプリーツスカートだったのだ。
試着しなくとも大体予感は出来る。
ヒラヒラした裾は危なげで、太股殆どを露出するだろうし、段差のある所ではスカートの中は隠しようの無い状態になるだろう。

「こんなの……無理、です…よぉ!」
「えぇ〜理沙ちゃん〜〜冒険するんじゃなかったのぉ?」
「ぼ、冒険にも…ほど程がありますっから!」
「大丈夫大丈夫〜、理沙ちゃんは可愛いんだからさぁ。
それにサァ〜〜あんな事とかこんな事とか出来たじゃない。」
「やっぁだ、止めてくださいっ!!」
「そんな恥ずかしがってぇ〜?」
「いやっです!!」

確かにそう……。
私達はお互いの趣向の元、損益無い自らの欲望の為に再び逢瀬した。
だけど……まだ、まだ私には殻を破くだけの決心は無かったのだった。
悪しき例えだが、どんなに悪さをしても帰れる所がある雛。
もしかしたら田崎さんは…… ……今までの生活を掛けた覚悟をしているかもしれない。
だけど、私は……。

「店長ぉ〜コレ良いよネェ?」
「ええ、これ位のって結構売れてるし、中々の人気アイテムなんっすけどねぇ」
「これ……これはチョット短過ぎますってばっ!」

女子高生達はスカートを織り込んで相当な短さで街を闊歩する。
普段着でお洒落に決めている子達も、大分短いスカート姿をよく見かける。
(だけど……これは無いわよ……)

「こんなの服って云えないわ」
「て、言うんだけどさぁ〜〜このスカートをちょっとエレガントにならないかなぁ。
この方は淑女さんで見栄っ張りなんだ〜〜だけど相当なエロで露出狂さんなんだぁ〜。」
「っ!?」
「じゃあ懇意にしてもらってるんで、サービスという形で……待っててください」
「た、田崎さんっ、わ、私これはちょっとっ!!」
「ンふっふっぅ〜理沙ちゃんはねぇ〜ふふっふ。
今ここでネェ……僕の手でねぇ〜生まれ変わっちゃうんだよぉ?。」
「そ…んな、のぉ!?」
「大丈夫大丈夫〜〜僕はねぇ〜女の子をより引きたせる能力はあるんだよぉ?」

店長が奥に消えている間、田崎さんは余裕の笑みで続け様に言うのであった。

「この弾ける時間ってサぁ、この時間帯しか無いんだよねっぇ?。
だったらサ、自分が楽になるその一時ってのサぁ、結構大事じゃない?。」

脳内麻薬という言葉はマズイのだろうか…… …… ……。
私はその言葉でハッと気付いてしまった。
露出という危ない快楽を得る一時は……確かに今この時間でしか得られないという事を。
この快楽を与えてくれるパートナーは、愛するあの人では無いという事を。
私は何の為に…… ……。

両手は、確かな意思を持ってミニスカートへと伸びた。

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