人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず14

「ンねぇ……?」

隣で眠る夫の肩を叩いた。

「んっ……く、ぁあ……んん……んぁ……何?」
「ねぇ…… ……あの……今日は?」
「……ぇえ、と」
「ねぇンン」
「ごっ、ゴメン」…… ……悪い……今日ハードだったんだ……。
……だからサ、また今度に……して。」
「んんんぅ〜〜〜」

予想通りの言葉だった。
後生のつもりで、私は甘える仕草で夫の袖をクイクイッと引いた。

「悪い……ホントゴメン、今日はちょっと……」

そういうと夫は反対側を向いてしまい寝る体制になってしまったのだ。
(イジワルぅぅ……)
理不尽だとは思うが、ちょっとだけ夫を憎んだ。
この疼く気持ち……どうしたらいいの?。
「男」を求めてしまった身体はもう制御が利かず、かといって隣で自慰することもできず。
結局…… ……私は眠る事も出来ずに性欲に支配されたまま一夜を過ごしたのだった。

「はぁはぁはぁはぁぁぁ〜〜〜ぁぁ……」

のそのそと重い身体を傾け、手元にあるティッシュを数枚抜き取った。
自慰で絶頂を迎えてから数分間が経過しているが、未だに私の脳も身体も夢心地。
この思い出しながらスル、自慰は最高だ。
シタ後も、また直ぐにしたくなってくる位に…… ……。

私と田崎さんの密会は半年が経っても途切れる事は無く続いた。
お互いに立場というものがある為、最初の約束で取り決めた月2回の逢瀬。
田崎さんの命令もどんどんとエスカレートしてゆき、その命令を私は羞恥心を堪えながらも満足ゆく快楽を味わっていた。
今ではもう、田崎さんの呼び出しが待ち遠しくて仕方が無い。
(やっぱりこの契約をして良かったわ……)
田崎さんは露出プレイは命じるが、当初の契約通り一切私の身体を求める事はなく、最初の頃の不安感は今はもうない。
だから私は思いっきり露出プレイを楽しんでいる。
……

もう秋も深まる11月……
既に私の生活は180度変化した……。
結婚してからもう2年が経ち、田崎さんと出合って半年が過ぎた。
この半年間、私と夫の間では夜の営みは皆無。
元々セッ○スに対して全く感心が無い夫は、どうやら1人で処理をしているらしい。
女としてのプライドは傷付くが、私には新たな露出プレイという快楽がある。
お料理教室も辞めた。
あの頃は精神的に参っており、没頭出来る何かを求めていたが今は全く必要ない。
夫を送り出して掃除洗濯を済ました後の厖大に長いお昼時間、今は有効に使っている。
……Hサイト巡りに…… ……。
夫には見せられない趣向のサイトが、お気に入りに数え切れないほど記憶されている。
午後から夕食を作るまでの長時間、私はパソコンの前に座り、厳選されたサイトを巡り自慰に耽るのだ。
勿論、田崎さんとの露出プレイを思い出しながら……。
夫に嘘をついて庭に施錠付きの小さな倉庫を設けた。
その中にはクローゼットが3つと等身大の姿見があり、過激過ぎる衣服や下着・アクセサリーといった田崎さんのプレゼントが入っている。
最近では私自身でも、田崎さんが気に入りそうな過激な物を買っては隠し置いている始末だ。

「なぁ、あの倉庫……は?」

当然、夫が不審に聞いてきた。
なんて説明しようかは既に決めてあったのだが、嘘を付く事に抵抗を感じ、たどたどしくなっていたのは今でも覚えている。

「……あ、ぁあ…アレねっ!?」
「家庭栽培でもするの?」
「ぁと、違うの違うの、アレは…ね、その……」
「何を恥ずかしがってるのさ」
「あ、うん……ちょっと言うのが恥ずかしくて。
ど、独身時代に気に入ってた物を置いてるの…よ。」
「?」
「ホッホラ、たまに懐かしくてもう一度見たくなる時とかあるじゃない?。
それで……手元にあれば直ぐに見られるし……。」

ちょっとどころではない焦りようだったが、夫は以外にも感心してくれた。

「物を大事に取って置く人は好きだよ」

…… ……と。
私は何度も心の中で謝りながら、背中の嫌な汗を感じていた。
夫の前では貞淑な良妻を演じ、倉庫から出る時は妖艶な悪女となる。
無論夫を愛しているし、夫に対する背徳感はずっと変わらない。
だが、私はもう止められない所まで足を踏み込んでしまっている。

(いけないっ、もうこんな時間?)
濡れた股間をティッシュで入念に拭い、質素な衣服を身に付け直して、私は倉庫へと足を運ぶ…… ……。

今日はそう……田崎さんと会う日なのである。

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