人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず5

あれから3週間が経ったとある昼過ぎ。
3週間ぶりに田崎さんから呼び出された私は、田崎さんのお店の店長室で下半身だけを剥き出しにして待っていた。

「よしよしっと、これでセット完了〜」

私は目で田崎さんに訴える。
と、それを察知したのか、田崎さんが再び口を開いた。

「大丈夫大丈夫〜音は録れないようになってるからサぁ。
フレーム位置は下半身しか撮ってないよ、理沙ちゃん〜。」
「…… ……」
「う〜〜〜……ん、じゃあコッチ来て見てご覧、今までの録画」

私はその場から動いてはならないと決められた所定の位置から外れ、下半身を両手で隠しながら真正面にあるデジタルカメラへと歩み寄った。
隣の田崎さんが言う。

「ではでは〜さっきまで録画したのを、いくよ〜?」
「……は、ぃ」

一瞬で巻き戻ったデジタル画像が再生される。
それは、直視するにはあまりにも酷な映像だった。

「何〜何ぃ〜理沙ちゃん〜〜ちゃんと見ないとぉ」
「でっ、でもぉ」
「確認、したいんでしょぉ〜?」
「…… ……」

これは私。
改めて見るととんでもない事をしていると気付かされる……。
映像は、音声は無いものの明らかに私の下半身のみが映し出され、撮られているという状況で私はスカートとパンティを一枚ずつ脱いでいっている。
命じるままに私は下半身を露出し、そのまま隠さず立っている映像で砂嵐に変わった。

「ね、ねね、ねぇ〜〜音声も無いし、下半身しか撮ってないでしょぉ?」
「ぇ、え……ええ……」
「憧れの貞操帯を嵌めるまでの記録だからねぇ〜。
解ってくれたら、ホラホラ〜所定の撮影ポジションに戻って戻って。」
「……た、田崎さん……」
「大丈夫だってぇ〜ホラホラッ」

田崎さんが私の背中を押して、撮影ポジションへと戻された。

「あ〜ホラホラ、手で隠さない隠さない」
「ぅっぅう!」
「後で編集するけどさ、一応撮っているってのは解ってよねぇ?」
「…… ……」

私は両手を股間から放す。
今までの信頼にすがる他無いが、ここは信じるしかなかった。

「むふ、むふふふ、ふっふっふふっふ……じゃぁ……ねぇ。
次はお待ちかねの理沙ちゃん専用の貞操帯着用動画だよぉ?。」
「はぁはっぁ……はぁ……た、田崎さん…」
「世界で1つしかない、理沙ちゃんのスタイルに完璧フィットした特注品だよ?」

田崎さんがゆっくりとダンボールを開封する。
私の眼もそれに奪われてゆく。
そして私は貞操帯なる物の実物を知る。


幾重にも保護の包みに守られて現れた貞操帯、田崎さんが両手で掴み上げて翳して見せた。

「……っっ!」

何というか…… ……言葉が出なかった。
それは初めて見る貞操帯。
両手で掴んだ田崎さんの腕は確かに力が篭っていた。
事務室のやや薄暗い蛍光灯ですら煌びやかなに反射させ、その存在をアピールさせている。

「ふっふっふ、凄いでしょ理沙ちゃん〜んっふっふ」
「…… …… …… ……」
「金に惜しみを掛けなかった超オーダーメイド製の理沙ちゃん専用だよ?」

私は思考がどうにかなりそうだった。
……いえ、もう既にどうにかなっていたのかもしれない。

(凄い……これを私穿くの、コレ穿いたら私……!?)

不安と期待が交錯する中、私は貞操帯に目を奪われていたのだった。

「じゃぁじゃあねぇ〜さっそく穿いてみよっかっねぇ〜〜奥さんン?」
「……ぁ、ぁっぁ」

改めてソレを着けるとなる次第に……私は後ずさりしていた。

「あっぁ、駄目駄目ぇ駄目じゃないっか、所定の場所に戻ってっ!!」
「で、でぇ…でもっ!?」
「…… ……ん、ンんんぅ〜〜〜アレ、奥さん?」
「……?」

田崎さんが貞操帯をガラステーブルに置いた。
ガッシャァっという明らかに重たそうな異音がした。

田崎さんはソファーに座り、徐に煙草を吹かせて言う。

「これね、ウン十万したんだよね……返品期間はまだ過ぎてないけどさ。
奥さんさぁ〜〜〜…… …… ……いい加減素直になったら?。」
「っっ!!?」
「……えとね、もう一度言うよ、もう一度ね?」
「……」

田崎さんは吸いたての煙草を揉み消し、再び口を開いたのだった。

「僕とさ……まだ関係持ちたい、の?」

その質問はずるい。
私は今の夫との生活に満足してはいる……だけど刺激は物足りない。
それを田崎さんは知っている。
だから……だから…… …… ……

「ぉ、ぉ……ぉ、お……ねが…いしま、す」

そう答えるしかなかった。


私の性癖を満たしてくれる田崎さん。
その為に私財を掛けてくれている。
私のみが満足してしまう快楽はいづれ、裏切りに変わりかねない。
それに…… …… …… …… …… …… …… …… …… ……

貞操帯なる物には興奮冷めやらぬ興味があった。

私はマリオネット。
言われるがまま、説明されるがままに黒光りした鋼鉄の器具を全てを受け入れた…… ……。

田崎さんが最初に手にしたのはウエストベルトなるものだった。
片手で持ち上げた田崎さんは、空いた右拳でステンレス製のウエストベルトを叩いてみせる。
コンコン……

「持ってみる?」

私は頷き、片手でそれを受け取ろうとした。

「ああっと、駄目駄目、駄目だよちゃんと両手でしっかり持たないと〜」
「ぇ、っぇえ……は、はいっ」
「ちゃ〜んと、ちゃ〜んと力入れて持ってよね、いきなり壊すとか無しだよ〜?」
「っう、こんなっに重いぃ…の!?」

田崎さんの忠告は脅しでもなんでもなかった。
ズシリと来る重量感はそう……夕方の半額セールでお買い物し過ぎた時の買い物袋の重量並みだ。

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