母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 妄想を誘う肢体4

「耕平君、ご飯よ」
 部屋でぼんやりしている耕平に、階下から声が掛けられた。ダイニングに行くと、暖かい香気と共にテーブルの上に料理が並べられている。男二人の普段の夕食とは違う華やかな雰囲気が感じられる。遠くなってしまった記憶だけれども、母親が生きていた頃はこんな感じだったんだろうと、ふと思う。
「お前一人で作ったのか?」
「そうよ。料理は得意なんだって言ったでしょ。ふふっ」
 エプロン姿のまさみが、得意げに微笑んだ。パステルピンクのエプロンがとても似合っている。
(そうか、今日はコイツと二人だけの夕食なんだ……)
 新婚みたいなシチュエーション、それにまさみは耕平より年下だ。五年後、この風景を見たら新婚家庭そのものだ。二人だけの食事、耕平に居心地の悪さを覚えさせる。それが嫌なのか、照れなのか判らないが、女性と二人で食べる食事に戸惑った。
「どう? 口に合うかな? おいしい?」
 まさみはちょっと心配そうに、首を傾げ耕平に尋ねる。
「まあな。まずくはない」
 まさみの作った料理は、どれも美味しかった。
(でも認めないぞ。母親はかあさんだけなんだ)
 耕平は、エレクトーンの上に飾られている写真を思い浮かべた。十二年前から、ただ微笑つづけている母親の写真を……。

 夕食を食べ終えた耕平は、二階に上がろうとした。自分の部屋で、昼間に龍一が持ってきてくれたDVDを見るためだ。いやっ、このシチュエーションが居た堪れなかったのかもしれない。まるで新婚家庭のような空間、目の前には誰もが認める美少女・星野奈緒がいる。母とは認めたくない、いやっ、それとは違う感情が芽生えそうだ。まさみの笑顔に、はちきれそうな肢体に魅了されそうになる。

「えっ、もう上がるの?」
 これから親子の会話をしたいと思っていたまさみが声を掛ける。
「ああ、宿題が残ってるからな。バンド練習で、何もやってなかったから……」
 耕平は体裁の良い言い訳をした。
「お前、学校は……。宿題はないのか?」
「私は通信制の高校なの。宿題は毎日、少しづつやってるから。もう終わってるよ」
 まさみはそう言うと、
「何か飲み物でも持っていこうか?」
と、言葉を続けた。
「いらない。気が散るから……」
 耕平は、まさみが上がってこないよう釘を刺した。



 耕平は、龍一が持ってきてくれたDVDのジャケットを見ていた。内容は、人妻が主人が出張中の家でレイプ犯に犯されるというものだった。ノートパソコンを開き、ドライブにDVDをセットする。音が漏れないようヘッドホンも準備する。そして再生をクリックした。

 画面の中では、一人の家で風呂に入っている女性を、侵入してきた男が今まさに襲いかかろうとしている。龍一の厳選らしく、女優の質は高い。何も気付いていない人妻は、肌に雫を滴らせながら風呂のドアに手を掛ける。そして、鼻歌を歌いながら風呂のドアを開けた。そして、驚き目を見開いた彼女に男が襲い掛かる。

 アダルトビデオの定石どおり、女は軽微な抵抗を示した後、男に犯される。挿入の場面も、挿入された怒張もモザイク無しに映し出される。そして、派手な喘ぎ声を上げている。
『ああん、許して……。そ、そこ……だめなの、感じちゃう。だめえ、ああん……』
 ヘッドホンの中に、女の喘ぎ声が響く。そして画面の中の女は、イヤイヤと言いながらも拒む素振りは見せていない。それどころか、官能に顔を蕩けさしている。
(オヤジとアイツも……こんな風にやってるのかな……。アイツもこんな顔、するのかな……)
 画面の中の犯されている人妻の顔が、耕平の妄想の中、一瞬、星野奈緒の顔になる。
(やりてえ……)
 耕平は、握り締めていた自分の分身を扱いた。先走り汁が指に絡み付いてくる。
(なに考えてんだ、オレ……。アイツはオヤジの嫁さんだぞ)
 しかし、昂ぶった妄想は後戻りを許さなかった。肉棒を握り締めた手の動きが早くなる。
「ああ、な、奈緒……。うっ、あうっ……」
 耕平の分身は、その先端から熱い白濁液を噴火させた。

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