母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 不幸の包囲網9

 学校から帰宅した耕平はリビングのソファーに座り、ビデオのリモコンを操作する。朝に予約したまさみの出演番組、録画していたビデオを再生した。

 画面にはまさみの姿、いや、星野奈緒の顔が大きく映し出されている。メガネを外し、三つ編みにした髪を解きストレートのサラサラヘアーのまさみ。家での明るく快活な姿とは違い、おとなしい清純派の女性の姿がそこにある。テレビの画面ではのインタビュアーが『女らしくなったね』って、まさみに言っている。言われたまさみは、頬がほんのり紅く染まっている。妙に色っぽい星野奈緒の姿があった。
(やっぱりカワイイ……)
 恥ずかしげな表情に改めて星野奈緒の、まさみの魅力を再認識する。俯きかげんで頬を染め、上目遣いの瞳が潤んで可愛さと上品な色気を匂わせる。その表情は憂いを秘めた女を、耕平に感じさせた。まさみの表情に女を感じた耕平を、妄想が包み込む。
 純白のブラウスの下には、豊満なバストが隠されている。紺の膝丈のスカートの中には、耕平が処女を散らした恥丘が隠されている。ふと、そんなことが頭の中に浮かぶ。
 耕平の見詰める画面の中で、一瞬、まさみの表情が曇った。まさみの眉毛が折れたように見えた。
「?!」
 音は聞こえてこなかったが、『あんっ!』と喘ぎ声を発しているような表情にも見えた。「変だぞ?」と思うと同時に、それ以上に計り知れない女をまさみに感じてしまう。頬を紅く染めたまさみを見て、隆平は下半身で血が熱く滾るのを感じた。目線を下に移すと、ズボンの前が膨らんでいる。その下で、肉径が勃起していた。

 ちょうどその時、まさみが帰ってきた。

 股間を気にしながら、耕平は振り返った。その先には、まさみとマネージャーが立っていた。
「ここまでは送らない約束じゃなかったっけ。近所に怪しまれるとマズイから……」
 股間を熱くしてるのを気付かれるのじゃないかという気まずさも手伝って、耕平はマネージャーに嫌味を言った。しかし、マネージャーの田中は返事もせずに、フンッと鼻で笑いを返した。文句の一つも言おうと田中に視線をやつと、マネージャーの手がまさみの肩に廻っている。そして、まさみの頬が恥ずかしそうに朱に染まっている。
「……?」
 不審に思い二人をよく見ると、マネージャーのもう一方の手がまさみの胸を揉んでいた。
「てめえ!! 何すんだ、まさみに! マネージャーだろ、そんなことして良いのか?」
 耕平はソファーから立ち上がり、声を荒げた。
「オッパイも気持ちいいが、マ○コはもっと気持ちよかったぜ。」
 まさみの胸の弾力を楽しむように、指を食い込ませながら言うマネージャー。そこには、耕平が知ってるマネージャーの顔は無かった。ただ性欲に狂った牡の顔をしている。
「こ、この野郎!!」
 耕平は田中に殴りかかる。その耕平のお腹に田中の前蹴りが食い込んだ。
「うぐっ、ううう……」
「耕平君!!」
 まさみは田中の手を振り払い、蹲った耕平に駆け寄った。
「お前がバカな真似した所為だろ。恨むんだったら自分の愚かさを後悔するんだな」
 田中は、腹を押さえ床に跪く耕平を見下ろし罵った。
「!?」
「バカな息子が、奈緒の処女を奪ったりするからこんなことに……、小林に付け込まれるんだ!! こんなに気持ちいいオッパイとマ○コを、最初に味わったのがお前だったとわな」
 田中は、二人を見下ろし言い放った。
「うっ……」
(知られたんだ……、龍一との関係……。俺とまさみのことも……)
「全ては自分の所為だと反省しろ! 何も文句が言える立場じゃないんだよ、お前は!! フンッ!!」
 田中は吐き捨てるように言うと帰っていった。

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