母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 染み込んでいく官能8

 六時間目の終業を告げるチャイムが鳴った。授業が終り、耕平は急いで下校の準備を始めた。授業中も、ずっと嫌な予感が付き纏っていた。
(何もなければいいんだけど……)
 龍一だけでなく、及川、柴田も学校にいない。龍一がいないのはいつものことだが、午前中はいた及川、柴田までもが姿を消しているのが気に掛かる。モヤモヤした気持ちを抱えたまま、耕平は下駄箱に向かった。
「耕平、今日はバンドの練習、無いのか?」
 靴を履き替えている耕平に友人が話しかけてくる。
「う? ああ、今日は……」
「ゲーセンに行かないか。ちょっとハマッってるゲームがあるんだ」
「止めとく。今日はバイオリズムが悪いんだ。家に帰って大人しくしとくよ」
 クラスメートの誘いを断り、家路を急いだ。いつもの帰り道が、今日は嫌に長く感じられた。



「起きろよ。いつまで絶頂に浸ってるんだ。気持ち良かったのは判るけどな……」」
「……えっ?」
 まさみが顔を上げると、服を着たみんなが見下ろしていた。まさみが気絶している間にシャワーを浴びたのか、みんなきれいさっぱりとしている。日頃の溜まったストレスや性欲を吐き出し、顔もすっきりとしている。
「そろそろ耕平が帰ってくる時間じゃないかな」
「えっ?」
「耕平が帰ってくる時間だって言ったんだよ」
「えっ!? も、もう……そんな時間?」
 気絶していたまさみには、どれほどの時間が経っているのか判らない。
「そ、そんな。綺麗にしなくちゃ! 掃除しなくちゃっ!」
 まさみの目に映る床も自分の身体も、白濁液でドロドロに汚れている。パリパリに乾いているところもある。そのことが、まさみにもかなりの時間が経過したことを自覚させる。どれほどの時間が過ぎたのか判らないことが、まさみの不安を募らせた。
「雑巾……。耕平君が帰ってきちゃう。こんなとこ、耕平君に見せられないよ。綺麗にしなくちゃ……」
 立ち上がり、雑巾を求めて歩き出そうとするまさみを龍一が制した。
「何言ってんだ? お前の大好きなザーメンだぜ。全部、舐め取らなくちゃ、勿体ないだろ。なっ! 淫乱まさみちゃん」
「!?」
 龍一の命令に、まさみはビクンッと肩を揺らし硬直する。
「舐めてキレイにしろって言ってんだよ。耕平が帰ってくるまで、このままにしておく気か?」
 冷たい視線がまさみを射抜いている。拒否することを許さないいつもの視線。龍一の魂胆をさっしたみんなが、まさみを取り囲み行く手を遮る。まさみはガクッと頭を垂れた。
(耕平君にこんな姿……見せられない。ましてや先生に見られるなんて……絶対イヤ!!)
 まさみは諦めたようにゆっくりと跪き頭を床に向かって垂れていった。

 ペチャペチャと、まるで子犬が床に零れたミルクを舐めるように舌を這わすまさみ。半乾きのザーメンは床に貼り付き、舐め取るのにも一苦労だ。
(苦い……、それに生臭い……。喉に詰まっちゃう)
 舐め取るザーメンがこんなに苦く、喉通りが悪いなんてと途方にくれてるまさみに、龍一は追い討ちを掛ける。
「そんなにゆっくり舐めてちゃ、いつまでたっても終わらないぞ。もう、耕平が帰ってきてもいい時間だな」
「走って帰ってきたら、そろそろ着く頃だね」
 みんな、悪戯っぽくまさみを囃し立てる。
(そんな時間? は、早く綺麗にしなくちゃ!)
「そのうち、親父さんも帰ってくるぞ?」
 言葉の一つ一つがまさみを追い込んでいく。
「!? 先生?」
 まさみは、床に這い蹲り舌の動きを速くした。
(イヤッ! 耕平君が、先生が帰ってくる。は、早く綺麗にしなくちゃ……。あん、あそこも汚れてる……。舐めたはずなのに……)
 まさみは一心不乱に舌を動かした。
「あらら、舐め取った後から汚れちゃってるよ。ほら、マ○コからザーメン、垂れ流してる」
「ケツの穴からも……。みんな、いっぱい出したんだね」
 もうまさみに、みんなの揶揄う声も聞こえていなかった。
(耕平君が、先生が帰ってきちゃう……。耕平君の家……、先生の家……綺麗にしなくちゃ! 先生にこんな汚いとこ見せられない!!)
 耕平にこんな姿を見られたくない、先生にザーメンで汚れた部屋を見られたくない、その一心で床を舐めていった。

「まるでブタみたいだね。床を舐めるなんて……」
「これぞ本当の牝ブタってね」
「本当だ。セックス好きの牝ブタだね。ブヒブヒ言いながら舐めろよ」
 みんなの軽蔑の言葉も、まさみには遠くから聞こえる雑音でしかなかった。

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