母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 試される愛1

 今日もまさみは、龍一の部屋にいた。ドラマの撮影が終わった後、マネージャーに送られるのが龍一の家となっていた。

 まさみは、龍一にまた逝かされた悔しさと、絶頂を迎えた脱力感に全身を包まれベッドの上で身を横たえていた。タバコに火をつけながら、まさみとのセックスを終えた龍一が声を掛ける。
「そんなに気持ちよかったか? 今日も意識が飛んだみたいだな」
 龍一の声に、まさみはシーツを掴み悔しそうに視線を壁に向けていた。今日も龍一に絶頂を迎えさせられた、身体が龍一に染まっていくのが辛かった。
「もう、こんなこと止めて。ドラマの撮影も始まったし……」
「いいストレス発散になるだろ。ドラマの撮影で溜まったストレスも、飛んじゃうんじゃねえか? 俺とのセックスで……」
「くっ!!」
 まさみは悔しそうに唇を強く噛んだ。

「マネージャーとしたのか?」
 龍一が嫉妬の籠もった質問を投げ掛ける。
「してないわ。でも……」
「でも? 口でしたんだろ?」
「……ええ」
「逝ったのか? 口でしても……」
「逝く訳ないじゃない。口でするのも嫌なのに……」
「でもアイツはやりたがっただろ、奈緒のマ○コの中で……」
「あなたがそうしろって言ったんじゃない。口だけは許すって……」
 龍一は、まさみが言付けを守ったことにニヤッと笑顔をまさみに向ける。
「オマ○コでしたかっただろ、アイツのはでかいからな。逝きたいってマ○コが疼いたか?」
 嫌味たっぷりにまさみを言葉で虐める。
「そんなこと、あるわけ無いじゃない!」
「ふんっ、どうかな? チ○ポ突っ込まれると、誰とでも逝くすけべなマ○コだからな、奈緒は……」
 龍一は、ふうーーっと紫煙を吹きかけた。
「止めて! タバコの臭いが付いちゃう」
「臭いが付くと先生に疑われるってか? 撮影現場で付いたって言えば疑われねえよ」
 再び龍一の吐く煙がまさみの髪に吹き付けられる。
「もう嫌!! あなたの言うとおりになるのは……」
 まさみは、涙で潤んだ瞳で龍一を睨みつけた。
「いいのかい? 芸能界を辞めなくちゃいけないぜ」
「辞めるわ、あなたとずっとこんな関係でいるよりは……。そして、先生と耕平君と……三人で暮らす……」
 いつもの脅し文句にも、まさみは気丈に反論を返す。しかし龍一は、まさみの甘さを鼻で笑った。
「三人で暮らす? そんなこと、出来る訳ないだろう。元アイドルで淫乱な女が住んでるって判ったら、すけべな男たちが放っておくかな?」
 さらに龍一の脅しが続いた。
「俺がお前の痴態をネットに流せば、みんな、おまえを犯すために集まってくるぜ。犯されても言い訳は出来ないよな、チ○ポを見たら腰振る淫乱女、ザーメン塗れになって喘ぐ牝ブタなんだからな。警察も、お前の痴態を記録したDVD見たら、レイプだって信じてくれるかな?」
 龍一は、まさみの弱みを的確についてくる。ねっとりと執拗に攻めたてた。まるでセックスの時のように……。
「俺なら、そんなお前を愛してやるぜ。……そして、淫乱な奈緒を満足させてやれるのは俺だけだぜ。この前も七人を相手にして、誰が一番感じた? 俺の名前を呼びながら、イクイクって喘ぎ声上げながら気を失ってたっけ……」
「うっ……」
 反論できない真実を告げられ、まさみは息を飲み込んだ。
「俺に一番感じたんだろ? お前を満足させてやれるのは……俺だぜ!」
 悔しそうに目を伏せるまさみの髪を、龍一はやさしく撫ぜた。かわいいペットの頭を撫ぜるように……。
「せ、先生がしてくれたら……もっと感じるわ、絶対!! わたし、先生を愛してるから……」
 まさみは、髪を撫ぜる龍一の手を振り払うように頭を挙げ、龍一に向かって言葉を吐いた。
「ふんっ、どうかな?」
 龍一はニヤリと笑みを浮かべると、タバコを深く飲み込んだ。

「亭主とはセックスしてないのか?」
 タバコの火を灰皿に擦りつけながら、龍一が言う。
「先生は……しないもん。身体だけを求めることなんか……しないわ。あなたとは違うわ」
 表情を悟られまいと、壁に視線を向けたまま、まさみは答えた。
「してもらえないのか、耕平のオヤジ、固いからな」
 ふんっと息を吐きながら、龍一は机の引き出しの取っ手に指を掛けた。
「顔にしたいって書いてるぜ、してもらいたいって……。じゃあ、させてやるよ」
 そういうと龍一は、引き出しからアルミパックに包まれた一錠の錠剤を取り出した。
「この薬を飲ませれば出来るぜ。液体にすぐ溶けるから、水でも酒でも溶かして飲ましてやりな」
 投げられた包みを拾い上げるまさみに、龍一が話を続けた。
「飲ませれば、三十分後にはぐっすりだぜ。少々のことじゃ目は覚めない。三時間は眠り続けてくれるって訳だ。少々動いたり喋ったりするかもしれないけど、意識は飛んでるから、目が覚めたときには全て忘れてるって優れものだぜ。後はお前のしたい放題だ。」
 拾い上げた薬をじっと見詰めるまさみ。
 あと一年待てば……、十八歳になれば先生だって抱いてくれる。正式に籍を入れて、結婚して晴れてお嫁さんになれる。そうしたら……。一瞬に色んな思いがまさみの脳裏を駆け巡る。
 一年待てるだろうか。身体はすでに龍一を迎え入れている。感じさせられている。心は……、あと一年先生を好きで居続けられるだろうか……。不安が大きくなっていく。
 初めての耕平とのセックスは痛いだけだった。それが今では、龍一に抱かれて気を失うほどの絶頂を味合わされている。一年後でも先生を好きって本当に言えるだろうか。自分に自信が持てなくなっていく。一瞬の間に考えるには難しすぎる悩みだった。

「奈緒が、俺とのセックスより先生に感じたら、もう解放してやる。二度とお前を呼び出したりしないと誓ってもいい。ただし条件がある。先生とのセックスを撮影して来い。感じたことを証明する記録をな!」
 今、先生に抱いて貰えたら間に合うかもしれない。先生ならきっと、私を感じさせてくれるはずだ。龍一に抱かれる時と同じように……。いや、もっと感じさせてくれるはずだ。まさみは唇を真一文字に結び、薬をギュッと握り締めた。
 その姿を見つめ、ニヤリと龍一は笑った。
(ふんっ、肉人形相手にセックスしても逝けるわけねえ。所詮オナニーと一緒さ。後には虚しさが残るだけさ)

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