母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 試される愛4

「ああ、いい……。いいの、もっと……。いい……」
 自分を納得させるように発する喘ぎ声が、虚しく部屋を満たす。
「あん、あん……、ああん……」
 先生が起きる心配も忘れ腰を動かした。上下に……、左右に角度を変えながら、ひたすら腰を動かした。
 龍一たちに官能を覚えこまされた媚肉は、無意識にもっと激しい責めを求めている。
「先生、感じさせたて! 来てっ、もっとうっ……」
 自覚のないまま、おねだりの言葉を吐いて越しをグラインドさせていた。
「あんっ、ああん……。う、動いて、も、もっと奥、もっと激しく突いてよ」
 激しい責めに慣れてしまった身体は、更なる高みを求めた。いつしか妄想は、先生に犯されている自分を思い浮かべている。しかし先生は、目下で悪夢に魘されているかのように額に汗を浮かべているが、動いてはくれない。まさみが自ら動くしかなかった。
「感じたいの、先生で感じたいの! 私を逝かせてよ。逝かせてっ!!」
 まさみは、胸に宛がった指に力を込めた揉んだ。
「先生……、揉んで、もっと強く……」
 自分の指で、大きく張り出した柔肌が、卑猥に形を変える。
「こんなんじゃダメ! もっと強く!! こっちも弄くって」
 もう一方の手を股間に持っていき、亀裂から頭を出した突起を指で転がす。
「もっと、もっと突いて! 先生! 激しく突いてよ!!」
 いくら願っても叶えられない願いを繰り返し、まさみは腰を動かした。
「も、もう少しで逝くの! もう少しで……逝けそうなの……」
 その時、膣内(なか)で怒張が膨れ上がる気配をまさみは感じた。それはまさしく、今まで何度も味わった射精の前兆であった。
「あん、だめっ、まだ……、まだなの……」
 先生の絶頂に追いつこうと必死で腰を揺するまさみ。
「だ、だめえーーー!」
 まさみの努力も虚しく、膣に白濁液が満ちていくのを感じ取った……。

 亀裂から外れた肉根が、だらりと力なく頭を垂れた。
「ねっ、先生……」
 硬さを取り戻して欲しいと、愛液とザーメンに汚れた肉棒に舌を這わせた。
「先生……、ねっ、もう一度、もう一度……お願い……」
 しかし、先生の夢の中で完結したエクスタシーは、ピクピクと僅かに反応を示すものの、再び硬さが戻ってくることはなかった。
「わたし……、まだなのに……。まだだったのに……」
 まさみは、涙を滴らせながら先生のパジャマを直した。まさみの流した涙が、先生の股間を濡らした。



 耕平は動けず、まさみの行動をじっと見ていた。あまりに悲しいまさみの自慰、それままさしく本当の肉根を使ったオナニー姿だった。まさみが後始末を始めるのを見て、慌てて自分の部屋に身を隠した。



 しばらくして、自室に戻ったはずのまさみの部屋のドアが開く音がした。そして階段を下りる音……。耕平が後を追うと玄関に、靴を履こうとしているまさみがいた。いまだに先生との情事に興奮が冷めやらぬのか顔を紅潮させている
「どうしたんだ?」
 耕平の問い掛けに、まさみは何も答えない。まさみがパジャマを着替え、ちゃんと服を着ていた。どこかへ出かけるのか、手には小さなバックを持っている。先ほど撮影に使ったビデオカメラが入っているに違いなかった。
「どこかへ出かけるのか? こんなに夜遅く……」
「う、うん……」
 もう一度の質問に、まさみは小さく頷き答えた。

「感じなかったのか? だから……」
「あっ……、耕平君。見てたんだ」
 感じなかったのかという言葉に、まさみは見られていたことを悟った。冷静を装ってはいるが、まさみの声が震えている。真実を見抜かれたことが、動揺を誘った。
「先生、寝てたから……。でもね、オチン○ンは大きくなるんだね、でも……」
 まさみは瞳を曇らせ、顔を切なそうに背けた。
「私がもっと先生のもの感じれば、もっと動けば……。私がもっと……」
 全ては自分を責めるように呟く。
「親父……、寝てたんだろ? 動かなかったからだろ? 頼めばいいだろ、抱いてくれって親父に……」
「そんなこと出来ないよ、。そんなはしたないまね、出来ないよ。先生との……約束だから。先生のこと……好きだから……」
 頼みたい、抱いてと頼みたかったが今はそれが出来ない。もし先生に感じることができなかったら……、眠っていない先生でも絶頂を迎えることが出来なかったら……、そんな不安がまさみの中に生まれていた。

「アイツのとこ、行くのか?」
「……」
 まさみはウンと頷く。証拠を見せろという龍一の言葉で、自分が望んで行くのではないと自分を納得させたつもりだった。
「行かなくちゃ……。このままじゃあおかしくなっちゃう、わたし……」
 絶頂まで達しなかった官能は燃え尽きることなく中心を真っ赤に火を残したまま、まさみを内側から焦がし続けていた。
「身体が疼くの……。我慢できないの、こんな気持ちのままじゃ……、わたし、壊れちゃう……」
 火照った身体はまさみに、嘘のない心の叫びを吐き出させた。
「オヤジが嫌いになったのか? 感じさせてくれないオヤジが……」
「ち、違う……。いやっ、いやあああ……」
 耕平は、小さな悲鳴を残し夜の街へと出て行ったまさみを見送った。なぜ止めなかったんだ、お前はまさみの幸せを望んでいないのか? お前に止める権利はあるのか? 全ての始まりはお前がまさみを襲ったからじゃなかったのか……。心の中で、もう一人の耕平が問いかけてくる。

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