君の瞳の輝き
あきんど:作

■ 第二部6

 鎌田健司が来てから母に少しだけ心が戻ってきた。だが鈴を見る目はいつも冷やかだった。
「あの家に私の居場所はあるんだろうか・・」
 鈴はそう考えていた。
今日の出演料はかなりの高額だった。半分を母に、残りは鈴名義の通帳に振り込まれることになっていた。
中学を卒業したら・・このお金で・・家を出る決心は変わらなかった。

鈴「あのー、家には帰りたくないです。」
 鈴は倉田にそういった。どうせ帰っても居場所がない。それどころかあの男は私の身体を狙っている。鈴はそう考えたのだった。
 ちょうど今は夏休みで学校はない。鈴は少しでも外にいたかった。
鈴「どこか泊まるところはないですか?ホテルとか・・」
 倉田は運転しながら外に目を向けた。
 倉田はすぐにホテルを手配した。倉田が選んだのはラブホテルではなく普通のビジネスホテルだった。
フロント「あのぉ、お子様一人だけのお泊りはお断りしているんです。」
ホテルのフロントは倉田と鈴を親子だと勘違いしているようだった。

倉田「じゃあチェックインだけ2人にしとこう。後は明日迎えに来るよ」
 倉田はそう言い鈴と部屋に入った。
倉田「結構言い部屋だな。ここならぐっすり休めそうだ。それじゃ鈴ちゃん何かあれば・・」
 そう言いかけたとき倉田は背中にぬくもりを感じた。
鈴「行かないで・・一人にしないで・・お願い・・寂しいよ・・そばにいて・・」
 鈴が倉田の背中に抱きついていた。
倉田「こ・・こまるよ。」倉田は振り向いてそういいかけたとき鈴の目に涙があふれているのを見つけた。

倉田「わかった。そばにいるよ。だからもう身体休めて安心して練るんだよ。」
 鈴はこくんと頷いた。

 鈴はベットに倉田はソファーで寝ることになった。ソファーでうとうとしながら倉田はこれからのことを考えていた。本当にあのビデオを撮ってよかったのだろうか・・
 自問自答し倉田は寝付けなくてバスルームに入った。
 頭からお湯をかぶりどうしていいか悩んでいた。
 そのときバスルームのドアが開く音がした。振り返るとそこには鈴が立っていた。
鈴「倉田さん。あたしどうしていいかわからない・もうどうしていいか・・私っていやらしい女の子って見られた?今日ビデオに出たこと
 いけないことだったかも・・もうあたし、生きてる意味がわからなくなってきてる。お父さんといっしょに死んじゃえば良かった」
倉田「鈴ちゃん。そんな風に考えるのはダメ!行きてればきっといいことがあるから。我慢すればきっといいことがあるから。それに俺の方こそこんな世界に君を誘い込んで申し訳なかったと思う。すまない」
 その夜、鈴はずっと倉田に将来の夢を語った。
 倉田もそれに耳を傾け二人はやがて眠りについた。

翌日倉田の車に乗った鈴は神戸の自宅に戻った。

裕美子「おかえり・・早かったわね。撮影どうだった?楽しかった?」
 母にはアイドルのオーディションに合格してそのイメージビデオ撮りだと言っていた。
健司「おぉー、お帰り。撮影でかなりのことしたらしいじゃないか・・」
健司はいやらしい笑みを浮かべた。きっと内容は聞いているだろうなと鈴は思った。
2人とも上機嫌なのは私の出演料が多かったのだろう。
鈴はそんな2人に対してこういった。

鈴「これからビデオに出るときはこの倉田さんを通して。倉田さんがOKしないかぎり私出ません。」
倉田「鈴ちゃん。」
鈴「お願い。マネージャーになって。信じられるのは倉田さんしかいないの。あの夜ホテルで何もしないで私の夢を聞いてくれた倉田さんしか信じられないの」

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