黒い館
けいもく:作

■ 4.信じられない訓練2

 いくら真菜ちゃんでも、例え割れ目に指をいれられていないとしても、そんなところを弄ばれ続けたら、立っていられなくなったに違いありません。

 でも、お舘様のそのときの真菜ちゃんに対する行為は、単なるいたずら心でした。

 心は別のものに奪われていました。それは、自ら縄を打った身体でした。

 手を離すと、プランを立てた真菜ちゃんにお礼を言いました。

「よし、真菜ありがとう」

「ハイ」
 お館様の予定外の行動にとまどった表情を見せた真菜ちゃんも、ほめられたことは、嬉しそうでした。

「まず、全員、首輪をつけて」

 本当に犬用のものかその種のプレイ用のものか、わたしにはわかりませんでした。お館様は、真菜ちゃんが持っていた紙袋からとりだして、全員に配り始めました。愛さんは不思議そうに、亜紀ちゃんは不安そうに、首輪を付けていきました。

 ただ香子さんだけは、両手首を縛られていたので、お館様が膝の上に乗せ、付けてあげていました。必要もないのに乳房を触り、腹部をなぜ、まだ、昨夜の濃厚な交わりが糸を引いているのかもしれませんでした。

 全員が鎖をつけ、端をお館様に渡しました。左手に握り締めた鎖は、引けば首をしめることができる危険な鎖でした。

 そして、お館様は、女性たちの所有権を堂々と主張しているような気がしました。

 ただ、真菜ちゃんのたてたプランは、こっけいで幼稚で、そして普通の女性ならば、耐えられないくらいに屈辱的なものでした。

 お館様が力いっぱい放り投げたボールを四つん這いの女性が口にくわえて戻ってくるというものでした。

 もちろん、本当の犬の訓練なら、こういうやり方もあるということは知っていましたが。

「それ、行け」と、お館様が言って鎖を話すと、女性たちはボールをめがけて競いだしました。

 奇妙なドッグレースでした。4人の若い女性が、全裸で犬の首輪をつけ、鎖を引きずり、懸命に這い回る光景はこっけいなはずでした。

 もしそれが、SMプレイと称するアダルトビデオであったとしても、一部の低俗なマニアを除いて、本当のサディストならば、苦笑するより他にないナンセンスで、取るに足りない物であっただろうと思いました。

 しかし、一部の低俗なマニアはここにいました。お館様は単純で熱心な見物者でした。そしてそれは、支配欲を充分に満足させるものでした。ただ、「お館様がほんとうに支配欲にとりつかれているとすれば」のことでした。

 そして、たとえ取るに足りないナンセンスなものであっても、女性たちは手を抜きませんでした。それは、女性一人ひとりの眼を見ればわかることでした。

「わたしたちが、これからどうするのかよく見ておいてね」と言った裕美さんのことばが思い出されました。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊