黒い館
けいもく:作

■ 4.信じられない訓練4

 たとえ、1メートルでもその動き方をじっくり観れば、結果は明らかであったのに、ボールをほうり投げるという行為を何度か繰り返したのは、それ自体が面白い見世物であったという以外に、お館様自身の問題もあるのだろうと思いました。

 香子さんが上目づかいにお館様を見つめました。お舘様は、つかんだ髪の毛を離し、ゆっくり、小柄な香子さんの縄のかけられた小さな背中をさするようにしました。

 それは、「ゴー」の合図だったのかもしれません。

 お館様は、椅子の背もたれに深く倒れかけ、顔を上向け目を閉じました。香子さんが、研ぎ澄ませた神経で、唇と舌を使い与えてくれる最高の快楽を自然のままに享受すればいいのでした。

 一睡もさせず、なぶりつくした女の懸命な奉仕、どれだけ泣かせてもつくすことを忘れない、脳裏にそんな香子さんの華奢な姿態を浮かべ、射精する快感に酔いしました。

 お館様は、喉を鳴らして精液を飲もうとする、香子さんを見下ろし、悲しそうな顔をしました。そして、ポツリとつぶやきました。

「罰しなければならない」

 香子さんにも、自分が罰せられることは、わかっていました。そしてその本当の理由も具体的な手段も知っていたのでした。

「ハーイ、おしまいだ」

 香子さんは、おやかた様の精液を胃袋に収めたのでしょうか、香子さんが飲み込んだ瞬間、このくだらないゲームは必要でないものになっていました。

 それは、アダルトビデオを観ながらオナニーにふけっていた少年が、射精の瞬間にビデオを止める、その程度の意味でしかありませんでした。

 お館様は両手を広げ、大きな声で叫びました。

 さすがに疲れたのか、裕美さんも愛さんも1番元気であるはずの真菜ちゃんでさえ、ほっとした表情でため息をついていました。

 そして、眼差しを厳しくして「朝食の後、愛と香子と裕美の3人を鞭で打ってみる」と付け加えました。

 この、いきなりの宣告に真っ先に反発したのが愛さんでした。

「エー、どうしてよ、一所懸命だったのに」

 愛子さんの性格の明るさは、相手がお館様であっても、変わることがないようでした。

「何を言っているのだ。散々に無様な醜態を見せておいて」
お館様は笑って愛子さんの抗議を一蹴しました。

「でも」
 真菜ちゃんが言いました。真菜ちゃんの言いたいことはわかっていました。真菜ちゃんの作ったプランで、自分だけがなにもされないで、愛子さんと裕美さんが鞭で打たれると言うのはつらい事でした。

 お館様は、真菜ちゃんの顔を見て、その覚悟を読み取ったように「じゃあ、今日は、真菜も鞭で打ってみる」と言いました。

 真菜ちゃんは、唇をかたくむすんで頷いていました。

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