黒い館
けいもく:作

■ 9.初恋とSM3

「裕美は、子供を産めないのだ。だから、いつここに入れてもいいのだけれど」
 お館様のものを乳房で刺激するために、シックスナインのかたちで、またがった裕美さんの膣部を触りながら言いました。
「でも、おれがセックスをするのは、夜だけと決めているのだ」

 実は、今、言ったお館様のことばには、ある重要な嘘が含まれていました。その嘘こそがこの館の存在する真の理由といえるかもしれませんでした。それは、ほんとうは、お館様も裕美さんも子どもが欲しかったということでした。

 裕美さんは、お館様の性器を握り「明日香さんに大きくしてもらえてよかったね」とつぶやき、石鹸を塗った乳房に挟み、もむように滑らせていました。その行為は、お館様にかなりの快感を与えているはずでした。裕美さんの女性器はお館様からよく見え、いつでも口で味わえるところで広げられていました。

 お館様は気持ちよさそうに裕美さんに乳房に精液をかけていました。

 わたしは、ふと、裕美さんのそうした技能がたくみすぎると思いました。お館様のために習得されたものではないような気がしました。

「裕美は、小学校、中学校の同級生だった」

 お館様は、石鹸とタオルで裕美さんに身体を洗わせていました。

「綺麗で、成績がよくて、お嬢様で、輝いていた。もちろん、おれなんか相手にされるはずもなかった」

「そんな頃もあったのかな」

「それから、裕美は、地域では有名な進学校、おれは、並以下の高校にしかいけなかったけど、たまに朝、道で会うと『おはよう』と言ってくれて、おれも下を向いて、『おはよう』と言い返していた」

「うそ、ろくに返事なんかしなかったじゃないの」

「してたんだよ、心の中で。笑顔が忘れられなかった。裕美の制服がまばゆかった。裕美に会った日の夜、決まって、裕美を思い出してオナニーをしていた」

 裕美さんはお館様の手を取り、指の一本一本をていねいに、宝石でも磨くような優しさで、洗っていました。

「おれがそんなにおまえのことを思っているってことを知っていたのか?」

「もしかすれば、と思うことはあったわ。でもあまり気にしていなかった」

「おまえは、女王様だったもんな」お館様は、笑いました。

「修学旅行の時、密かに何枚かの裕美の写真を撮った。それを焼き増しして、雑誌のヌードグラビアの顔のところだけ裕美の写真と貼り替えた。その自作の裕美のヌード写真を見ながら、おれはオナニーをしていた」

「それは、知らなかったわ」

「当たり前だ、そんなこと、知られてたまるか」

 お館様は、裕美さんの乳首をつかんで、一度憎々しげにつねりました。それはささやかな仕返しでした。不意を突かれた裕美さんの顔がゆがみました。

「その後、裕美は大学から海外に留学したと聞いていた。おれは、三流大学から電機メーカーの子会社に勤める事ができた。

 それから、4年目だった。近所の情報通のお袋が、裕美が病気になって実家に帰ってきてると言った。さすがにその頃になると裕美のことをあまり思い出さなくなっていたが、おれには、お袋の何気なく言ったひとことが、ひどく気になった。どのような病気だろうか、いたたまれなかった。

 だからといって、裕美を家に訪ねる度胸もなかった。毎日のように裕美の家のまわりをとおり、様子をうかがうくらいだった。

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