黒い館
けいもく:作

■ 13.レイプ パートU1

 廊下に出てみれば、お館様の欲情を静めてくれる女性が、あちこちの部屋いるのに気付きました。もちろん、お館様が自由に夜這いをかけていた頃の名残で、女性の部屋には鍵がついていません。

 お館様は、真っ先に裕美さんを犯すことを考えました。裕美さんとは、一カ月に一度しかセックスができていませんでした。避妊具の心配もいりません。

 大柄で、おうとつにとんだ裕美さんの体つきを思い浮かべただけで、相好が崩れました。そして、お館様の裕美さんへの思い入れも尋常なものではありませんでした。

『しかし、待てよ』
 裕美さんは、お館様が自らの欲望のため裕美さんの身体をどのように、さいなもうとまず文句を言うことはなかったのですが、ただ、館のルールとかに妙にうるさいところがありました。
『あとで、怒られるかもしれない』

 次に、愛子さんの姿態を思い浮かべました。愛子さんの豊かな肉付きと柔らかさ、お館様の愛撫に最も激しく反応する肉体にも、まったく、不満はありませんでした。しかし、突然、襲えば、勝気な愛子さんのことだから、取っ組み合いになるかもしれないと思いました。あるいは、大声を出されても困るとも思いました。

 あらかじめ、「セックスをさせろ」と言えば、応じてもらえるはずでした。でも、そんなことをすれば夜這いの醍醐味がありません。

 そう考えれば、やはり香子さんだと思いました。

 お館様にしても、香子さんの優しさ、できた人間性に甘えすぎているな、という自覚はあったのですが、自分が今からやろうとしているレイプの被害者に最もふさわしいのは、香子さんだという気がしました。

 音をたてないようにドアのノブをまわして、薄明かりのともる香子さんの部屋に忍び込みました。久しぶりに入る香子さんの部屋でした。

 香子さんが気付いていないようなので、安心したお館様は、少しだけ布団をめくってみました。

 意外なことに香子さんはパジャマも下着も付けていませんでした。香子さんの素肌のお尻が見えたとき、涙を流したくなるほどの感動を覚えました。

 以前、今のように夜伽が当番制になる以前のことです。館の女性は眠る時、衣類を一切、身に付けていませんでした。

 それは、お館様が自由に女性の部屋に入り、好きなように犯してもかまわなかったからでした。

 服は、きっと防御の手段でもありました。全裸のほうが、手間が省けました。布団をめくるだけで、欲望をかなえてくれる女体にありつけました。

 それは、女性にもそれだけの覚悟が強いられるということでした。

 お館様は、亜紀ちゃんや真菜ちゃん、それに愛子さんまでが、今ではパジャマを着て眠っていることを知っていました。

 でも、香子さんはちがいました。自らが当番以外のときも、お館様に身体を捧げる覚悟をしていたのです。

 それは、自分の身体がお館様のものであることを認めていたからでした。所有者は、自分の身体でどのように欲望を満たそうとかまわないのでした。

 お館様は、もう一度香子さんの丸いお尻を見つめました。

 どれだけ責め、苛んでも自分に尽くしてくれるお尻でした。さわりたくて、舐めたい衝動にかられても、今は我慢すべきでした。

 お館様は、カレンダーを探しました。以前の香子さんは、カレンダーに危険日と安全日と生理の日を記号で書いておいてくれたからです。

 それは、香子さんの細やかな気配りであり、お館様が香子さんを犯すとき、大変重宝なものになっていました。さすがにカレンダーはありませんでした。

 しかし、机の引き出しを開けてみれば、その片隅に香子さんを縛る縄とコンドームが入っていました。棚の上から紙袋を取れば、準備は整いました。あとは素早さが勝負でした。

 お館様は、もう一度香子さんの寝顔をうかがいました。

「ありがとう」
 今から自分の快楽のための犠牲になってくれる香子さんに、声にはならない声でつぶやきました。

 そして、行動は、俊敏でした。

 紙袋が突然、香子さんの頭を覆い、うつぶせにされた香子さんは、手首を背中の後ろで縛られていました。

 香子さんは、わずかに足をばたつかせた以外、抵抗らしい抵抗をしませんでした。

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