黒い館
けいもく:作

■ 19.真菜親分1

普通は、香子さんのような売れっ子の漫画化にはアシスタントが付いているものでした。

香子さんにもやはり、アシスタントはいました。さすがに先生とは呼ばれていなかったにせよ、それなりに有能なアシスタントでした。裕美さんと亜紀ちゃんでした。

裕美さんの本職は画家でした。だけど収入はありませんでした。有名な展覧会で入選していても、売らなければ画家としての収入にはならないのかもしれません。

ただ、そういうこととは別に裕美さんは、香子さんのアシスタントが気に入ったようで嬉々としてやっていました。

時には漫画の内容まで、こまごまと指摘していたようですが、特別香子さんが怒ったような態度をとらなかったのは、裕美さんの批評する目も優れていたのかもしれませんでした。

その日、香子さんの漫画は、締め切りに追われていました。もちろん、遅れている原因は、お館様が徹夜で香子さんを責めてしまったことでしたが、いまさら文句を言っても仕方ありません。香子さんも当然そのことを覚悟してお館様の寝室にはべったのでした。

だから裕美さんも亜紀ちゃんも必死で手伝いました。

そして気になった、お館様が息抜きのコーヒーを持って様子を見に行くと、何とか作業を終わらせてグッタリとした三人の姿がありました。原稿はすでにファクスで送られた後でした。

三人はお館様よりもコーヒーが来たことを喜びました。

「亜紀ちゃん、お礼にキスをしてあげて」裕美さんが言いました。

亜紀ちゃんが、舌を絡めた濃厚なキスをしてくれました。そのわずかな時間にお館様はブラウスの胸ボタンをはずし、手をしのばせ、亜紀ちゃんの乳房を揉むことを忘れませんでした。

「きゃあ、もうエッチ」

亜紀ちゃんは怒ったふりをしましたが、口元は笑っていたのかもしれません。

お館様は亜紀ちゃんのそうした心の隙を見逃さず、残ったボタンも外して、ブラウスを身体からはぎ取ってしまいました。

そしておもむろに、みずみずしい果実でも味わうように乳房を舐め始めました。

いくらお館様でも、亜紀ちゃんの乳房に歯を当てるようなことはありませんでした。咬まれた痛さに耐えられず、涙をながす亜紀ちゃんの顔を見たいとも思いませんでした。

だから、亜紀ちゃんは館に若さと笑顔を振りまいて、お館様に処女のにおいを嗅がせてくれて、時々自分のものを頬張ってくれて、できれば飲み込んでくれれば、それ以上のことは望んでいませんでした。事実、亜紀ちゃんはそのとおりのことをしてくれました。

そこで、もう少し時間があれば、亜紀ちゃんのスカートをめくり、それも邪魔になるようであれば、脱がせて、膝を開き、まだ処女幕に覆われた子宮の入り口をゆっくりと舐めていただろうと思います。

とりあえず、お館様はそれ以上のことを亜紀ちゃんにしようとは思っていませんでした。今のままの亜紀ちゃんを大切にしょうと思っていました。

それは、裕美さんも同じ考えでした。

裕美さんが亜紀ちゃんに「お礼にキスしてあげて」と言ったのは、お館様には「少し亜紀ちゃんの身体で遊んでもいいよ」という許諾の意味があるのかもしれませんでした。

だから、キスだけのつもりが、上半身を裸にされ、大きく開いた口で乳房を吸われている亜紀ちゃんを裕美さんは笑顔で見ていました。あるいは『コーヒー一杯分以上のことをしてはだめよ』と言うアイコンタクトがあるのかもしれません。

でも、亜紀ちゃんの考えは、少し違っていました。

『今はまだ身体がお館様の要求に耐えられるまでに成熟していないから、おっぱいや、われめを舐められて弄ばれているだけだけど、いずれ、香子さんや、愛子さんや、歳もひとつしか違わない真菜ちゃんのように夜になると、お館様の部屋を訪れるようになるんだ』と思いました。

亜紀ちゃんにも、お館様の部屋で女性がどのよう扱われているか想像できないわけではありませんでした。もちろん、香子さんも愛子さんも閨房でのできごとまでつまびらかにしてくれるわけがありません。

ただ、真菜ちゃんだけは、むしろ積極的に話してくれました。それも真菜ちゃんが知っている言葉を駆使して「昨日は対面座位だった」とか、「後背位だった」とか時には「お館様がおっぱいをつねってきた」とまで。もちろん、真菜ちゃんがうそを言っているわけではありませんでした。

亜紀ちゃんから見た真菜ちゃんは、ある意味では、姉貴分のような存在でした。

最近でこそ受験勉強に追われて、穏やかな性格になってきたとしても、元はといえば博多の不良少女グループのヘッドでした。

亜紀ちゃんに「うちに付いといで」と言うだけの度胸ときっぷの良さを兼ね備えていました。

そんな真菜ちゃんを亜紀ちゃんは、あこがれと畏敬の念を持って見つめてきました。

亜紀ちゃんは、中学校も途中までしか行っていませんでした。高校には、一日も通いませんでした。

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