黒い館
けいもく:作

■ 20.亜紀ちゃんの興味3

たとえば、それはお館様が乳首を触ったとすれば、胸全体を突き出して、さらに触りやすくするというたぐいのことでした。香子さんは露骨にではなく、さりげない態度でしてくれました。もちろん、我慢ができないほどの痛さがともなえば、逃げたり、拒否することもありました。

だけど、香子さんは自分の身体がお館様のものであると思っていました。

ただ、この時は乳首をつまむ、お館様の指を無視するように話を続けました。

「でもねえ、明日ぐらいから生理になりそうなの」

「生理か」お館様は、天を仰ぐふりをしました。それは、あくまでもふりだけでした。

むしろ、生理という言葉を聞いて欲情していたのかもしれません。香子さんを見つめる眼が光りました。

お館様は、生理中の女性を抱くのが嫌いではありませんでした。シーツが汚れるといったところで下に薄いビニールでも敷けばいいことでした。

以前、ふたりだけで生活していた頃には、裕美さんが生理中であっても抱けていたのが、一時期、夜伽が当番制になって、生理中の女性がお館様の部屋にはべることがなくなりました。

それが、たとえ女性の希望であったとしても、お館様には不満でした。

「生理中であっても抱けるようにしてくれないか」と裕美さんに頼みました。

頼まれた裕美さんも困りました。いまさら『けがらわしい』だとか『ヘンタイ』だとか言ってみたところで、お館様のそうした性癖は以前からよく知っていることでした。

そこで、女性が全員集まっている時に相談してみました。みんなの意見が否定的なら、裕美さん自身が生理の時に抱かれようと思いました。生理の時だけ抱かれるというのも変な話ですが、とりあえず、自分が犠牲になるよりありませんでした。

だけど、裕美さんの憂いは杞憂でした。

「生理中の女も抱きたいのだって」と言った時、香子さんや愛子さんが見せたのは、意外なことに笑顔でした。

もちろん、単純に喜ぶといった笑顔ではなく、あきらめたような、あきれたような複雑な笑顔でした。

普段、香子さんや愛子さんは、お館様にどんな風に抱かれているのかと思いました。あるいは、裕美さんが思っている以上に酷いことをされているのかもしれませんでした。

ただ、真菜ちゃんだけは不満そうな顔をしていました。

「わたしと香子さんはいいとして、真菜ちゃんはかわいそうだわ」

愛子さんはふたりの顔を見比べながら言いました。

「わざわざ、女が苦しんどる日にそげなことせんでも」

「男は、生理中であっても女を欲しがるものよ」

愛子さんの説明は必ずしも、的を射ていませんでした。生理中であっても女が欲しいのと、生理中の女が欲しいのでは、意味が違いました。

だけど、真菜ちゃんはそれ以上、何も言いませんでした。

所詮、生理中でも女が抱きたいなどというのは男のわがままでした。それを受け入れるのもまた、女の優しさでした。

ただ、その日から香子さんと愛子さんは、生理中でもお館様に身体を与えなければならなくなりました。それは、たとえば経血を舐められることもありえるということでした。

お館様は、そのまま床に尻を付き、立ったままの香子さんの脚の間に自分の膝を割り込ませて、スカートをたくしあげました。パンティをはいていない香子さんの三角地帯があらわになりました。

じっと見つめ、陰毛に鼻を触れさせて、においを嗅ぎました。直接、舌を触れさせ、味わってみても、明日には生理になりそうだという兆候を感じ取ることは出来ませんでした。

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