黒い館
けいもく:作

■ 21.亜紀ちゃんの覗き趣味1

亜紀ちゃんは張り切っていました。

お館様が「香子は12時前にしか来ないから同じ時刻で良い」と言っているのに二時間も前から来ていました。もっとも、これには少しばかりの理由もあったのですが。

普通、夜伽の女性がお館様の部屋に入るのは10時でした。ただ、香子さんの場合は漫画家としての仕事を抱えているので、例外的に12時からということになっていたのでした。

だから、亜紀ちゃんは夜伽を勤める女性の定刻に入室しただけでした。お館様はテレビを見ながらゴロゴロしていたのであわてました。一瞬、他の用件かと思ったのですが、亜紀ちゃんの言ったことは「よろしくお願いします」だけでした。

仕方がないので、机とセットになった、部屋にひとつしかない椅子に亜紀ちゃんを座らせ、自分はベッドに腰を下ろしました。

亜紀ちゃんは、何気なく部屋を見回しました。部屋の広さに比較すればベッドが大きすぎる気がしました。その他は、きれいに片付けられている点を除いて、普通の男性の部屋と違わないのではと思いました。ただ、花瓶に百合の花が飾られていました。

「お掃除は誰がしているのですか?」

「ああ、裕美に頼んでいる」

「これからは、わたしも時々手伝いに来ましょうか?」

とんでもないと思いました。勝手に人の部屋を荒らされてはかないません。裕美さんだから任せられるのでした。

そのうえ、裕美さんの場合は、気が向けば押し倒してもかまわないという余禄が付いていました。だから、裕美さんが部屋に掃除機をかけているときも、お館様は胸を触り、スカートの中を覗きました。

「掃除の邪魔だから」と言われても、お館様のいたずら心は消えませんでした。ただ、そのいたずら心が欲望に変化した時に、裕美さんは犯されるのでした。

「もう、お掃除おばさんにまで手を出さないでよ」と裕美さんが言っても、欲しいものは欲しいのだから仕方ありません。

お館様は、またたく間に裕美さんを裸にしてしまい、身体中にキスをしていきました。そんな時、裕美さんは便利な存在でした。ほかの女性と違い危険日やらコンドームやらの心配をする必要がありませんでした。何をしても許される身体だと思いました。今までに何度、性欲の捌け口にしたのか、わからない身体でした。

「おれの服を脱がせてくれ」

お館様が言うと、裕美さんは背中にまわり、脱がし始めました。尻を浮かせ、パンツを抜き取ったところで、裕美さんは亀頭にキスをしてくれました。お館様は裕美さんの頭をつかみ、自分の股間に押さえつけました。

あるいは、お館様のものが喉にまで当たったのかもしれません。裕美さんは苦しそうな声を出し、股間から離れようとしました。でも、お館様は力いっぱい押さえ逃げることを許しませんでした。

『おれは裕美を愛していた。裕美を世界中で一番幸福な女にしたかっただけなんだ。それが、なぜこんな関係になってしまったんだ』と思いました。

喉の苦しさに耐えられず、裕美さんの頬を伝った涙を指先でぬぐいました。深く考えても仕方がありませんでした。

今は、裕美さんを犯して気持ちよくなればいいのでした。裕美さんをベッドの仰向けに倒し、股間を広げ、自分のものを挿入しました。舐めていた乳房を咬んでみました。

「うっ」と裕美さんが短くうめきました。でも、お館様は裕美さんを許しませんでした。裕美さんの眼から、もう一度涙がこぼれるまで咬み続けていました。

お館様のサディストとしての欲求は、裕美さんと香子さんの献身によって満たされているかもしれません。

今、亜紀ちゃんとふたりだけになって、お館様は戸惑っていました。唇に塗られたルージュにも、亜紀ちゃんのただならぬ決意の表れではないかと思いました。

でも、亜紀ちゃんから見れば少し違いました。亜紀ちゃんの処女を奪う、奪わないは、あくまでもお館様の意思でした。ただ、お館様がもしもそれを望んだ場合に、決して後悔させないでおこうと思っていただけでした。

処女だといっても亜紀ちゃんが経験していないことは、自分の膣に男性器を入れるということだけでした。

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