黒い館
けいもく:作

■ 22.香子さんの処女喪失3

「亜紀ちゃんのおっぱいのほうがおいしいでしょ」乳首を咬まれながら、香子さんがトンチンカンなことを言いました。

そして、自らアイマスクをして手を後ろで組みました。その手をお館様が縄で縛っていきました。身体を倒すと責めを受ける準備ができていました。

いつもなら、香子さんのおっぱいにロウがかぶさる前に、名残惜しげに吸っておくのですが、手のひらで軽く触っただけにしました。欲しくなれば、亜紀ちゃんのおっぱいが吸えるからでした。

お館様は、ロウソクを亜紀ちゃんに見せ、「これは、アメリカ製でね、低温ロウソクという、マニア向けのものなんだけど、その中では熱くなるほうかな?おれがいろいろと比べて、香子を責めるには、これが一番良いと思ったんだ」と少しの自慢を加えて説明しました。

亜紀ちゃんには、お館様の言っていることの全てではないにしろ、何となくわかるような気がしました。

「手を出して」お館様はロウソクに火を点け、亜紀ちゃんの手の甲に少量のロウを落としてみました。

『熱い』と亜紀ちゃんは思いました。そして香子さんを見つめました。アイマスクで視界をさえぎられ、開いた股間を閉じることもできず、じっと動かないでいる香子さんの裸体がありました。もうすぐ、乳房にロウソクをたらされる裸体でした。

「わたしね、小学校の高学年の頃から香子さんのフアンだったんですよ」亜紀ちゃんは香子さんに言いました。

「ありがとう」裸でベッドに縛られている香子さんは、そんな話をされるのにふさわしい状況ではありませんでしたが、きっと『亜紀ちゃんなりにわたしをはげまそうとしているのだ』と思いました。

「なかでも『五島の百合』は、いつも発売日を心待ちにしていたんです」

香子さんは、大学生の頃に漫画を描き始めて、二十歳代前半には、もう名の通った漫画家でした。『五島の百合』は、第二作目でちょうど香子さんの卒業を挟む形で月間コミック誌に連載されたものでした。

「あれは、中学生からハイティーン向けだから小学生のフアンって少なかったのよ」

「わたし、ませてたんです。でも、最後はちょっと残酷だった。お父さんが火あぶりにされて、主人公が自害するシーン」

領主は、側室がキリシタンであることを幕府に隠そうとするのですが、お家を大切にする家来が、領主にはお咎めなしという条件で報せてしまい、結局、藩は取り潰されずに、側室の一家は全員が殺されて終わっていました。

香子さんは『五島の百合』を描くため、長崎県の五島列島に二週間の取材旅行に出かけました。内容は、江戸時代の封建領主と隠れキリシタンである百姓あがりの側室との悲恋物語でしたが、香子さんは風景をスケッチして、図書館で調べ、キリシタンに関係する文物を写真に撮りました。

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