狂牙
MIN:作
■ 第2章 ゲーム8
男達は秋美に狙いを定め矢を放つと、矢に巻き付いていた布が空中で発火し、火矢になる。
その燃えた矢が秋美の直ぐ横の木に刺さり、その炎を見て秋美は男達の意図を理解した。
秋美の引きつった顔が、モニター一面に映し出され、直ぐに全体像に変わる。
秋美は必死に逃げようとしたが、ガス中毒を起こした身体は思うように動かず、何度も躓き蹌踉めいた。
全裸の秋美の身体に、土が付き木の葉が張り付いて、汚して行く。
秋美の腹は胃袋の辺りから、大きく膨れ上がりパンパンに成っていた。
それは、浣腸液が詰まっているのでは無い。
人体には害に成るだけの、プロパンガスが詰まっているのだ。
そして、何本目かの矢が、秋美の側をすり抜け、何本かの矢が、秋美の手足を貫く。
足を貫かれ転んだ秋美の大きな腹に、ついに火矢が突き刺さった。
ドンと言う大きな音と供に、画面全体が揺れ、火球がモニターの真ん中に現れる。
火球は直ぐに消え、辺りの木々に小さな炎を植え付けて居た。
焦げた地面に小さなピンク色の破片が幾つも散らばり、その間に濃い色の赤い花が咲いている。
遠く離れた下生えに、矢が刺さった白い棒が転がっていた。
棒の付け根には、見覚えのある字体で[良]と言う漢字が彫られている。
秋美の右足だった。
ガサガサと木の枝を鳴らし、何かが落ちてきた。
それは、偶然撮られた映像だったろう。
狙って撮れる類の物では無い。
それがどう動き、どのタイミングで、どこに落ちてくるかなど、誰にも予想出来ないからだ。
音を立てて落ちてきて、ゴロゴロと斜面を転がる黒と白と赤のまだら模様。
その映像を見て、俺は目眩を覚え、乙葉は嘔吐を堪え、優葉は腰を抜かし失禁する。
コトリと止まった丸い物は、秋美の頭部だった。
美しかったその顔は、グシャグシャに崩壊し、肉親が見ても判別など出来無いだろうが、状況から言って秋美の物でしか有り得なかった。
秋美の身体は爆散し、焼けこげた肉片に一瞬で変わった。
俺は愕然としながら、モニターを見詰め、何が有ったか暫く理解出来なかった。
考えが纏まらず、立ちつくすだけだった。
だが、そんな俺の背中を冷たい物が駆け抜ける。
今現在、同じようにゲームをコントロールしている、和美と千恵の存在を思い出したからだ。
俺は絶望感に身体を押しつぶされながら、和美と千恵に連絡を取った。
しかし、2人の声を聞く事は2度と出来無かった。
何故なら、俺が見ているこの映像は、本部により加工され24時間の時差が有る映像だからだ。
実際、秋美が爆死したのは、昨日の事なのだ。
そして俺は次の日、千恵の消息を知る。
千恵はどこかの地下牢に繋がれ、拷問を受けていた。
秋美は素直に認めて、俺との関係を話したが、千恵は頑なに俺の名前を出さなかった。
その結果、千恵は拷問を受け始める。
それは、凄惨の一言に尽きた。
千恵が受けた拷問は、最新型の[骨砕き]と言う物だ。
千恵の身体は金属のベッドに縛り付けられ、各関節が厳重に固定されていた。
手と足首は機械に呑み込まれ、身動き一つ出来無いようだ。
男が1人質問しながら、機械を操作すると、千恵の右足首を呑み込んでいた機械が、ユックリと回転し始める。
膝関節を固定されている千恵の右脛が、ミチミチと音を立て始めると、千恵の喉奥から苦鳴が漏れ始め、有る瞬間それが絶叫に変わる。
千恵が絶叫すると同時に、千恵の右膝から下がグンと5p程伸びた。
俺はその意味を知っている。
千恵の脛骨と腓骨が折れたのだ。
いや、正確に言うと[裂けた]だ。
人の骨は、圧を掛けながら捻られると縦に裂ける。
その痛みは、骨折の比では無い。
勿論こんな破壊のされ方をすれば、元通りになる事は絶対に無い。
骨髄も神経も全て破壊されるからだ。
痛みを与える事に長けたサディスト達が、修復の心配をせず、狂った道具を使って千恵に痛みを与える。
千恵は激痛にのたうち回り、身体を破壊されていった。
それでも、何も話さない千恵に、サディスト達は過熱し、責めを強めて行く。
スピーカーのような物を千恵の回りに配置し、スイッチを入れる男達。
俺はその機械を組織のカタログで見た事があり、虫酸が走った事を思い出す。
この機械は音波の共鳴を使って、特定の硬度を持つ物質を粉砕する装置だ。
男達はその機械を使い、千恵の首から下の骨だけを破壊する。
千恵は、神経繊維が繋がったまま、筋繊維も血管も損傷せず、骨格だけを粉々にされた。
グニャグニャの肉袋のようにされた千恵は、その状態で男達に陵辱される。
折り曲げ捻られ、粘土細工の人形のように、全身を歪められる千恵は、想像できない程の激痛と絶望感を感じた筈だ。
何時間も掛けて責め抜いたサディスト達は、千恵の強情さに舌を巻き、とうとう諦めた。
だが、その時には千恵は生きているのが不思議なぐらい、身体を破壊し尽くされていた。
全身の骨を砕かれ、肉袋のように成った千恵の小さな身体は、更に縮んで1m程しかなかった。
人間の身体は、骨格が支えている事が良く判る映像だった。
虫の息の千恵を男の1人が引き摺って連れて行き、鉄製の扉を開ける。
その奥はどう見ても製鉄工場で、熱が画面の奥から伝わってきそうだった。
男は金網で出来た通路を進み、先が途切れた場所で立ち止まる。
画面が傾いで、通路の下を映すと、そこには大きな鉄の鍋が有った。
その中は、マグマのような赤い液体で満たされている。
熱で溶かされ、液化した鉄だった。
男は千恵を無造作にその通路の先に向かって、投げ捨てた。
千恵の身体は、グネグネと有り得ない動きで宙を舞い、通路の先から落ちて行く。
画面の中で千恵の身体がドンドン小さくなって行き、鍋の中に落ちた。
恐らく高さは10m程有ったのだろう、驚く程長い時間千恵は宙を舞い、そして白い煙を残して消えた。
千恵は灼熱の鉄に取り込まれ、その命を終わらせた。
俺の目の前が、ユラユラと揺れている。
画面の輪郭がぼやけ、焦点が定まっていない。
俺は煙になった千恵の映像を見て、涙を流していた。
そんな時、俺の元に和美が帰ってきた。
そう、変わり果てた姿で、和美は俺の元に送られて来たのだ。
それは宅配業者が持ち込んだ、1.2m四方のスチロール製の箱、通称[トロ箱]と呼ばれる物だった。
送り主は俺のゲームの相手であり、俺は緊張しながら蓋を開けた。
そして、そこに入っていた物を見て、俺の膝から一瞬で力が抜けた。
その箱には、和美が入っていた。
和美の全てが、その箱の中に収められていたのだ。
そう、タチの悪い冗談のように、全てバラバラな状態で。
手足は全て関節から分解され、切り裂かれた腹の中には、内蔵がプラスティックのような物でコーティングされ、形を整えて整然と収められていた。
それぞれの臓器に、名前が書かれ、まるでプラモデルのようだった。
物言わぬ和美の頭の中には、加工された脳みそまで入っている。
清涼飲料水のペットボトル4本に、和美の血液まで詰められていた。
俺は和美の頭を抱え、強く抱きしめて和美に謝罪した。
だが、俺は和美がされた事を見て、死ぬ程後悔した。
言葉や行動の謝罪など、和美がされたどんな事より温すぎる。
和美がこの姿にされたのは、全て生きている状態で行われたのだ。
手足の指から始まり、四肢を順番に関節から解体され、加工されていった和美は、腹を割かれ内臓を取り出されても、生かされていた。
狂った鬼畜達は、和美が生命活動を続けられるように、維持装置を取り付け、血液を循環させながら、和美の身体を解体して弄んでいた。
和美の目の前でジャンケンし、負けた者が切り取ったばかりの子宮に電極を付け、電気を流し筋反射で動かしながら、オナホールのようにチ○ポを差し込んで射精した。
泣き叫ぶ和美の内臓を直に嬲りながら、ダルマのように成った、和美の歯の無い口を犯し、痛みを与えて弄んでいる。
殆どの臓器を外された身体や顔を、根本から外され加工された和美自身の舌で鞭のように打ち付けられている。
和美が死ぬ事を許されたのは、首から上だけに成った状態で、頭皮を剥ぎ取り、頭蓋骨が開かれて、脳髄を取り出された時だった。
白衣を着た男が、頭蓋骨を外した頭の中に、無造作に両手を突っ込んで、脳髄を引き抜いた。
和美の口が大きく開き、何も無い口の中を見せながら、眼球がクルリと裏返る。
ピクピクと頬が数度痙攣し、和美は2度と動かなくなった。
俺はそれ以降の映像を見ていない。
俺の家のメインモニターは、サイドテーブルが刺さり画面がブラックアウトしたからだ。
だが、その内容は見なくても判る。
恐らく和美はこの鬼畜達に箱詰めされたのであろう。
俺は直ぐに本部に連絡し、bQの行動をルール違反と訴えた。
だが、本部から返ってきた返答は、[不問]だった。
秋美、千恵、和美の3人は、奴隷として登録して居らず、関係者と認められなかった。
関係者と認められない以上、その生死がゲームに関係する事は無いのである。
犬死にだった。
3人の死は、組織の強引と言える裁定に、犬死にされた。
俺の中で憎しみが膨れ上がり、怒りが爆発した。
俺はその怒りにまかせて、bQを追い詰め、ロストに追い込んだ。
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