Midnight Hunter
百合ひろし:作

■ 序章

私立屋島学園高校―――午前2時。学園の隣の小屋から音も立てずに人影が出てきた。そして校舎の壁伝いに歩き、それから狙っていたものを視界に捕えた。
「こそ泥さん、そこで何をしてるのかしら?」
女だった。その女はそこで不審な行動をしていた男に声を掛けた。男は手に持っていた懐中電灯を女に向けたが女の足元を僅かに照らしたのみで避けられた。
「こっちよ」
反対から声が聞こえた。男は慌ててその方を向くが既に女の姿は無かった。
「誰だ」
男が叫ぶとその瞬間後ろを取られ、柔らかい感触を背中に感じた瞬間腕を捻り上げられた。女は、
「フフッ、体操着を盗もうとでもしたのかしら?ブルマなんてとっくに滅んだのにまだ盗もうだなんて―――」
と言った。男は驚いた。何故この女がそんな事、自分の犯行動機を知っているのかと……、誰にも話す訳が無いのに。
そう思った瞬間、鈍器で殴られる様な衝撃を覚え、男の意識は遠のいて行った。崩れ落ちるその瞬間に見たものは―――。
ウエーブの掛った髪、顔の上半分を隠すマスク、そして―――体には濃紫のリボンが付いた薄紫色のブラジャーとパンティ、つまり下着しか身に着けていなかった。
男は女の足元に崩れ落ちローアングルで女の股間から胸を見上げる形になり、黒の靴下とスニーカーを僅かに視界に入れ、
「あ……あの噂……本当だった……のか―――」
と言った瞬間に止めを入れられ意識を失った―――。

ヒュッ

女が軽く指笛を吹くと何処からかもう一人、長身の男だろうか、暗闇に溶けこみ殆んど見えないがそこに現れ、泥棒を担ぎ上げてそのまま去って行った。女はそれを見届けた後、
「ふう……、そろそろ次を探さないとかしら」
とブラジャーとパンティに指を通して直しながら呟いた。

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