Midnight Hunter
百合ひろし:作

■ 第一章 屋島学園2

次の日―――、生徒会は用務員からの要請を受けて夕方の見回りを強化することにした。夜中に校舎内にいる生徒が時々いるから、という事だ。その為急遽生徒会報を印刷し午後のHRで配る事にした。
そして夕方―――、ラグビー部。ここにもミッドナイトハンターの噂を知る者が居た。彼はその事を部の後輩―――1年生に話した。
「先輩、マジで!?」
「下着姿でうろついてたら犯して下さい、ってなもんじゃん」
1年生2人はそう言った。先輩―――2年生の男子生徒は、
「榊はタバコじゃねぇ。それに昨日のヤツも口封じられたと見るが。多分気絶させられて後でそこを通り掛った用務員に御用だ」
と言った。後輩は、
「スゲー推理です」
「でも根拠は?」
と口々に言った。男子生徒は、
「榊がタバコやってないのはみんな知ってる。あと昨日のヤツが捕まった場所―――職員室さ」
と言った。昨日の男子生徒は「ミッドナイトハンターは居なかった、居たのは用務員」と書いた書き込みに置き土産として暗号を残していた。ラグビー部の男子生徒は鞄からその書き込みを印刷した紙を出して、2回に渡って投稿された書き込みの内容を見せてから、該当する文字を丸で囲った。すると、
「次の文を1文字置きに縦読み」
「美人教師が激シいおナにい」
の文が出来上がる。
「直接捕まえたのは用務員じゃ無い筈だ。ヨボヨボなら兎も角まだ30代だろ?もし見てたらヤツと一緒にオナるだろ」
と言った。つまり用務員に見付かったとしても気まずくて捕まえられない、その為彼を捕まえるのは女で無ければならないということだった。
「夜中に何かやってりゃ出てくるみたいだから俺達は待ってりゃいい。解るだろ?俺等押し倒すのは専門だよなあ」
男子生徒が舌舐めずりすると後輩の2人は勢い良く何度も頷いた。ミッドナイトハンターの正体を暴けるだけでなく、更には犯してしまおうという訳だ。
「しかし、誰だろうね。オナってたセンセーって」
3人はその後その話で盛り上がってた。美人といえば数が限られてしまうが、こういう話には必ず美人とかそういう言葉が付く。週刊誌とかでも「美人〜」とか良く書かれているが実際見てみたら大した事無い、平均より少し上なだけじゃないか、と思うことは幾等でもあるのだった。

部活動終了の鐘が鳴った。それと同時に生徒会が動き出す―――。前回葵はその鐘に気付かず生徒会長の理彩に注意を受けた為にマークされていた。理彩は空手部道場の入り口の横で鐘が鳴るのを聞いたが、道場内からは聞こえて来なかった。それを確認し、生徒会室に連絡した。
「試しに何か放送してみて」
と指示をすると、全校に、
『部活動の時間は終了しました。至急帰宅して下さい』
とこれまた違和感を感じさせない放送が入った。理彩はこの機転を利かせた放送にクスッと笑い、空手部道場に入った。
「宮原さん、放送入ったわ。もう終わりよ。2日連続は頂けないわ」
理彩はそう言って葵の反応を待った。葵は、
「済みません。でも聞こえませんでした。スピーカーのボリューム上げといたんですが壊れたんでしょうか」
と答えた。理彩は、
「そういう事なら不問にします。明日、用務員に頼みますから」
と言った。葵は、
「よろしくお願いします。急いで着替えますから―――」
と言った。理彩は、
「解ったわ。生徒会室に戻るけど少し待ってて頂ける?」
と言った。葵は、
「あ、はい。でも……私に何か……?」
と聞いた。理彩は、
「いくつか聞きたい事があるわ」
とだけ答え、生徒会室に向かった―――。


葵は空手道着からブレザーの制服に着替えて道場の入り口で待っていた。憧れの生徒会長と一緒に帰るのは緊張し赤面していた―――。
理彩は戻って来るなり、
「待たせたわね。行きましょう」
と言って2人は帰路についた。

「あれ?あそこ確かラクビー部ですよ。まだ電気ついてるなんて」
葵が遠くに見えるクラブハウスの1室を指差して言った。理彩は、
「良く気付いたわね。行きましょう」
と答え、ラグビー部の部室に向かった。先程の生徒会での報告会ではラグビー部は異常無しだったのだから。因みに空手部はスピーカー故障と報告を上げたが。
―――正直驚いた。葵は体育会系なので同じ体育会系の部活の部室が何処にあるのかは知っていても不思議はない。しかし200m以上離れた先の混み合った部室の中からラクビー部の部室の位置を正確に言えたのは、相当に視力が良くて更には観察眼も無ければ出来ない事だった。
「宮原さんは視力いいのね、いくつ?」
理彩は聞いた。葵は、
「1.5です。2.0狙ったけど届きませんでした」
とはずかしそうに笑顔で答えた。理彩は、
「羨ましいわ」
と言った。葵は、
「赤城先輩は―――コンタクトなんですか?」
と聞いた。理彩は、
「そうよ。宮原さんは目を大事にしなさいよ」
と言った。葵は、
「はいっ、ありがとうございます」
と返事した。

ラグビー部の部室に着いたので理彩はドアをノックした。
「あ、はい?」
と間の抜けた声がしてドアが開いた。理彩は、
「もう下校の時間ですよ。早くして下さい」
と注意した。2年生の男子生徒―――先程1年生2人にミッドナイトハンターについて話していた生徒である―――は、
「生徒会長でしたか。急いで帰ります。俺達忘れ物したんだけどなくなっちゃってさがしてるんスよ」
と答えた。理彩は、
「解りました。急いで下さいね」
と言ってドアを閉め、待っていた葵とそのまま一緒に帰った。

男子生徒は1年生に指示を出した。
「生徒会長校門出たか?」
と聞いた。1年生は、
「はい、出ました」
と答えた。すると男子生徒は、
「よし、ならば電気を消せ。9時までだ」
と言った。1年生は、
「何でですか?」
と聞くと男子生徒は、
「帰った事にするんだよ。万が一生徒会長が戻ってきても電気消えてりゃスルーだろ」
と答えた。1年生2人は納得した。男子生徒は、
「それから電気つけてミッドナイトハンターをおびき寄せる。夜中に電気がついてりゃ事件の匂いだろ?」
と言った。1年生2人は高速で頷いていた―――。

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