Midnight Hunter
百合ひろし:作

■ 第一章 屋島学園4

同じ頃―――、地理の教師の小倉典子は帰宅する為に荷物をまとめていた。彼女は24歳と教師歴が浅い若い教師であるだけでなく、157cmの身長で幼さが残る顔立ちに可愛らしい服装、そしてふわっとしたボブカットの為、生徒と一緒に居ても普段着の生徒が混ざっている様にしか見えなかった。
典子は携帯電話が鳴ったのに気付くと発信元を確認した。ディスプレーには『りぼん』とあった。
「あ、もしもし―――。分かったわ」
電話を取って話した。話が長引いてくると目の前の席に掛けて待っている生物学の教師の新倉美幸が早く終わらないかな、といった表情で待っていた。
この2人の教師は年が近かった。美幸は2年先輩の26歳だった。そして典子が可愛いタイプで美幸が美人タイプ、更に典子が社会科で美幸が理科とベクトルが違う為不思議とウマが合った。
そんな2人なので大抵の時は一緒に居た。帰るのも美幸が典子を車で送っていくのである―――。

あれ?この間は―――?

勿論毎日が一緒な訳ではない。あの日は美幸が、
「ちょっと抜き打ちテスト作るから、今日は先に帰ってて」
と言ったので典子は先に帰ったのである。後はその場を覗いていた男子生徒(と一部ミッドナイトハンターも)が見ていた通りである。勿論テストは作っていたのだが、テストは残る為の口実で、あの日は用意までしてオナニーに耽っていたのだった―――。勿論そんな事は典子は知るよしも無い。
「分かった、それを流せばいいのね。私も調べてみるから。じゃあ」
長い会話の後、典子はそう言って電話を切った。すると美幸は、
「小倉ちゃん、長いよ。待ったんだから〜」
と苦笑いをして言った。典子は舌を出して笑い、
「先輩、ごめんなさい」
と言った。

3日後―――。
「生徒会長、空手部のスピーカー直したぜ。コーンがお釈迦だったからユニット交換だったな」
筋肉質でツナギのよく似合う長身で無精髭の用務員が生徒会室に入って来て言った。理彩はそれを聞いて、
「ありがとうございます。これで宮原さんは困らないでしょう」
と礼を言った。それから用務員が立ち去ると、役員に、
「多分大丈夫ですが、念の為今日も空手部はマークします。私が行きます」
と言った。役員は同意した。
そして部活終了時間に合わせて理彩は空手部に向かった。空手部に着くと同時に鐘が鳴り、葵は鐘に気付くと片付けを始めた。
「大丈夫な様ね」
理彩はそう呟き、道場の壁に寄り掛り、葵が出て来るのを待った。葵は、外で待っていた理彩に驚いたが、スピーカーを直す手配を取ってくれていたのでお礼を言った。理彩は、
「壊れてた事に気付かずに貴方を風紀を乱す生徒としてマークして悪かったわ」
と謝った。葵は、
「い、いえ。時計があるのに時間見て無かった私も悪いです……」
と言った。理彩はそれを聞いてから、
「何処かで食事しましょうか。たまにはいいでしょう。空手部に来年部員が来るように考えないとでしょうし」
と言った。部員が他に居ない葵にとっては死活問題―――、それでアドバイスを貰えるなら行かない訳にはいかなかった。
2人で歩きながら近くのレストランに向かったがその時突風が吹いた。葵も理彩もとっさにスカートを押さえた為にパンチラする事は何とか防げた―――。


食事が終わり理彩と別れた後、葵は寮に戻るや否や着替もせずにPCを起動して裏サイトにアクセスした。そして雑談スレに入ると、榊に接触したと言ってきた人物の書き込みは無かったが、1つ新しい書き込みがあった。匿名の裏サイトで態々"onirok"と固定ハンドルネームを付けて、である。
「おにろk―――?」
葵は訳の分からない名前に困りながらも本文を読んでみた。内容は世間話だが、今まで同様隠された内容に気付いた。
「最近夜中の風紀が乱れてるのでセイバイされた」
「まだ出るかも知れない気を付けろ」
「何があるか知りたければ夜中の校舎へ」
と書かれていた。葵はすぐに行こうとは思わなかった。大体榊の事についての情報のまだ前回書き込まれた返事が無いし、ラグビー部の生徒と榊とは交友関係が無い為の関連性が見えて来ないからだったが実際に榊に続いてラグビー部の生徒もやられているのは事実である。その為、その関連性も探る事にする事にしたが取りあえず榊の事を聞く為にonirokに対して同じ様に世間話の中に、
「榊君の事は何か分かりますか?」
と埋め込んで置いた。
しかし、こうやって複数の人と暗号のやり取りをしていると、益々榊は何かにはめられてしまったのでは?と思いたくなる。
「下着姿のハンターも本当にいるのかなあ……」
一瞬そう思い、いや、思わずには居られなくなり立ち上がって制服を脱いだ。ブレザー、ネクタイ、スカート、ワイシャツを脱ぎ下着姿になった。それから空手の基本動作をやり、最後に蛍光灯の紐をパシッと蹴った。青いリボンがついた水色の地にピンクの小さな花が散りばめられた可愛いブラジャーと同じく正面に青いリボンが付いた水色の地に、幅1cmと細いサイド以外の部分以外はピンクの小さな花が散りばめられた可愛いパンティ姿の自分が鏡に映ってるのを見てドキッとして赤面した。下着姿で闘うのはこういう事なんだと思って急に恥ずかしくなり急いでタンスから服を取り出して着たがドキドキは収まらなかった。
何故だろう?今迄下着姿になった事だけなら数え切れない程ある―――。着替える時や風呂入って服を脱ぐ時や逆に風呂から上がって服を着る時。つまり毎日必ず下着姿になる時間が存在するのだ。また、別に今初めて今身に着けている様な可愛い下着を身に着けた訳ではない。今迄だって沢山あったのだった。それなのに何故今だけこんなにドキドキしたのか―――?
今迄は服を着たり脱いだりする通過点に下着姿があったに過ぎなかったのだが、今は違ったという事だった。つまり下着姿で何かをやる、下着姿で長時間居るという下着姿自体が目的だった事が無かったからである。しかも「下着姿で闘うハンターが居る」という事を意識し、ハンターの彼女と下着姿で空手の型をやった自分と重ね合わせてみるなんて事をすれば、いままでそういった経験が無かったのだからドキドキするのも無理は無かった―――。今身に着けている様な可愛い下着が好きでそれを身に着けてそんな事をすれば尚更だった。
葵は立ち上がって自分の部屋から出て自販機に向かった。そこでジュースを買ってグイッと飲み、やっと落ち着く事が出来たが、今着ているブラウスとミニスカートの下には可愛いブラジャーとパンティを着けているんだ―――とどうしても意識してしまっていた。

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