緑色の復讐
百合ひろし:作

■ 第一話3

遥は小夜子グループに囲まれた状態で体育館に入った。上履きから体育館履きに履き替えて、小夜子達に引っ張られバレーボールのコート内に立たされた。授業でやった時と同じ状態である───。あの時は全員、いや、小夜子を除いた人で片付けたのだが、また出したのだろうか。遥は他人事の様に考えていた。そうしないと突然訪れた今の状況に混乱してしまうからだった。
と、その考えは中断させられた。小夜子が一歩前に出て命令したからだった。
「制服、脱ぎなさいよ」
それに対して遥は首を振った。今ここで脱いだらどういう事だかは考えなくても解る。しかし、小夜子はもう一歩間合いを詰めて、
「制服で体育やるつもり?体操着"忘れた"のだから解ってるでしょ?」
と言って遥の顎に人指し指を掛けた。遥は一歩下がったが、グループのメンバーに当たったので突き飛ばされて転倒した。
顔を上げると目の前に小夜子がしゃがんでいて、
「先生がこういう事やると後々問題になるから私達が代わりにやってあげるわ」
と言い、遥の顎に指を掛けてグイッと自分の方を向かせた。それと同時にグループのメンバーも間合いを詰めた。
「どうしても嫌なら私達が手伝うけど?」
小夜子が甘い声で言うとグループのメンバーは冷たく笑った。遥は逆らう事も逃れる事も出来ないと悟った。きつく目を閉じ首を左右に振った。そしてゆっくりと立ち上がって両手を腹に持って来た───。
ブレザーのボタンに指を掛けて外し脱いだ。その後蝶ネクタイをほどき床に落とした。それからワイシャツのボタンに指を掛けてゆっくりと1つずつ外して行った。視線は下を向いている訳ではないが、誰にも目を合わせずに少し細めていた。
全てのボタンを外すと、スカートに手を掛けた。ベルトのバックルを外し、スカートのホックを外してチャックを下ろしてから手を離すとスカートは重力に任せてフワッと落ちた。それからワイシャツを脱ぐと薄いピンク色の下着姿になった───。
「これで……いいの?」
遥は恥ずかしそうに顔を赤らめながらも小夜子だけをじっと見据えて聞いた。両腕で胸をかばう事など意味無いし、そうすると逆に小夜子に喜ばれて手を退けさせようとするに決まっているので遥は普通に両腕をダラリと下げて、逆らう気は無い意思を示した。
小夜子はクスッと笑い、
「ピンクの可愛い下着ね───、白のリボンがいいじゃない。あなた顔も可愛いし似合ってるわ。意外と解ってるじゃないの」
と言いながら、スッとパンティのリボンを触って褒めた。勿論遥は嬉しい訳がなかった。小夜子は暫く遥の周りをぐるぐる回ってじっくりと鑑賞した後グループに体育の授業でやったことを復習するように指示した。
グループのメンバーは言われた通りに遥にやらせた。軽く体を暖めるランニング、ストレッチ、そして対人パス等───。ここまでは普通だった、遥が下着姿でやっている事を除いては。
しかしここからは違った。小夜子はバレーボール部に入部しているグループの一人に指示をした。
「青山さんは運動神経良いから普通じゃ物足りないわ。レシーブ練習では部活と同じ位思い切り打ってやって」
そして自らネットの側に立ち遥に向かって、
「それで私にレシーブしてね」
と笑顔で言った。この事が何を意味するのかと言うと遥が捕れない様にキツク打ってきてレシーブ出来なかったら馬鹿にしたり、もしくは態とボールを当てて楽しんだり、下着姿で床に這いつくばったりするのを鑑賞しようとしているのは解っていた。

小夜子が遥を下着姿にしたのは遥に恥をかかせた上に鑑賞するためだけでは無かった。そうすることで逃げられなくなるからという理由もあった。遥がこのグループの囲いを破って制服を手に取って逃げたとしても着ている時間がない、まさか下着姿のまま人前には出られないだろうと踏んでいたからだった。
更に真由羅に遥の制服を見張らせていた。但し真由羅には遥が脱いだ状態のままにして手を触れるなと指示をしていた。綺麗に脱いだにしても脱ぎ捨てられた制服が床に散乱していたら、遥の視界にそれが入る度に羞恥心や恥辱心、屈辱心を擽ると思ったからだった───。

早速始まった。遥に対して容赦無いスタンディングでのスパイク攻撃───。ここでいいようにやられてしまっては小夜子の思う坪なので何とか返してやろうと頑張ったが、幾等運動神経が良いと言っても専門の人間が打つスパイクを受けきれる筈はなく、何本かは小夜子の方に返るものの、殆んどは返らずその度に小夜子から嫌味を言われ、グループのメンバーには笑われた。

遥に疲れが出てきた所に強烈な1球が飛んで来た。遥は何とか避けようとしたものの避けきれずボールが側頭部に直撃した。遥は崩れ落ちる様に尻餅をつき、そのまま後ろに勢い良く倒れた。

ゴツッ……!

床に頭をぶつけ動かなくなった───。その音は離れて制服を見張っていた真由羅の耳にも入った。真由羅は遥の散乱している服の横に座って見張っていたが、立ち上がって心配そうにその方向を見た。グループのメンバーが遥を取り囲んでいた為良く見えなかったが、紺の靴下に白い体育館履きを履いた遥の左足だけは見えていた───。

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