緑色の復讐
百合ひろし:作

■ 第三話5

しかし希美の取った行動はそういう事では無かった───。希美は背中に回した手でブラジャーのベルトを摘むと少し寄せてホックを外し、肩からストラップを外してカップを乳房から退けた。巨乳でも貧乳でも無いバランスが良い大きさで、形もお椀を伏せた様な張りのある乳房が晒されたその瞬間、希美は軽く体を震わせて乳房を揺らし小さく声を出した。まるでそうしたかったのを我慢して我慢してそしてその想いが漸く叶い、悦びを感じていたかの様だった───。そして外したブラジャーを手から放して地面に落とした。ブラジャーは生き物の様に本体をくねらせながらゆっくりと落下し、着地すると動かなくなった。それはまるでスローで見ている様な錯覚に陥った───。
遥は訳が判らなくなった。自分が忍術を習う意思を見せたら、何故か師範である希美は風を確認した後ブラジャーを外したのだから全く意味が解らなかった。
「ど、どういう事……?」
遥は混乱していた。すると乳房を晒した希美は、
「桜流は風を感じ、自然と一体になる術よ。普段は目に見えていたものに頼って生活してたでしょう。多分ここに来るまでに何も見えない事への恐怖心があった筈よ」
と説明した。確かに車の中は真っ暗で音だけの世界だったにも関わらず、霞は遥の動きをいい当て、経過時間も誤差範囲内でいい当てた。どちらに対して聞いても霞は、
「そういう特訓してたから」
と答えていた事を思い出した。それが忍術の成果という事だったが、しかしそれでも態々遥の目の前でブラジャーを外し、パンティ一枚姿になって面を着けている必要性は感じなかった。事実、横で半分呆れた顔をしながら寝転がっている霞は普段着のままで、師匠である姉が来ても服を脱ごうとしないのだから───。
希美は左、右と足を出し二歩前に出た。全く音を立てず、そして乳房も全く揺れなかった。右手をパンティに通して直し乍ら、
「原因は───見えない事だけじゃないわ。その、見えない時。青山さんは何を感じてたの?」
と聞いた。遥は首を振った。それを見て希美は、
「それが普通の人間よ。何故なら、人間───服を着るようになって風との触れ合いを無くしていったから」
と答え、パンティをいじっていた右手の人指し指を抜き、腰から乳房、そして肩へとボディラインを伝わせた。
「でも、全ての感覚を鍛えればこれだけ暗くても昼間の様に動けるわ。だから私は全身の感覚を鍛える為に───」
希美はそう説明して両手をパンティに戻し、中央の左右についているリボンを摘んだ。
「こういう格好───パンティだけでやってる訳。更に実際この面を着けてる間は普段の一割も見えてないわ」
希美はそう説明した。その時の希美の仕草が非常にエロティックで遥は聞いてる自分が恥ずかしい気分になって顔を赤くした───。しかし、この忍術を学ぼうというのだから今正面に見えている希美の姿は将来の自分の姿だと思った───そして妹の霞が脱いでいないのは子供だからだ、と思うしか無かった。。
「見え辛いと言っても貴方が今恥ずかしがってる事位は判るわよ。毎日訓練すればその位は見える様になるわ」
希美はそう付け加えた。遥はとりあえず納得して、
「私も今……脱ぐんです……か?」
とゆっくりと立ち上がり、真っ赤な顔を伏せたまま上目遣いで聞いた。すると希美は、
「そうね───でも今日"は"いいわ。貴方の生の実力知りたいから今から一回私と闘って貰うけど、服が無いと身体中生傷だらけになるでしょうから」
と言った。遥はいきなり初日から脱がなくて良いから安心───は出来なかった。要は今から貴方をボコボコにします、と宣言されたのだから。
すると今まで静かにしていた霞が立ち上がり、
「いきなりお姉ちゃんとは闘えないから、あたしがサポートするよ」
と言った。そしていきなり仕合という状況になった。

希美と遥は川の側の一番足場が良い所に移動して向き合った。遥の横、少し離れた所に霞が立ち、
「いつ行ってもいいよ」
と言った。しかし、希美は遥の方を見てるもののまるでノーガードで隙しかなかった。遥は、
「でも……希美さん、構えて……ないけど」
と言った。霞は、
「構えたお姉ちゃんに突っ込める?あたしだって一撃で負けるよ、無理無理」
と答えた。遥は今の霞の言葉に納得するしか無かった───ナリはどうあれ一つの流派の師範である。まともな勝負を挑む方が間違っているという世界であった。だからと言って無策で突っ込むのは如何なものかと思った。遥は少し考えた。
先ず"忍術"と名乗っている事についてと今までのまとめ。音を立てずに移動したり、風を読んだり、そして視覚に制限を掛ける事。次に幾等強いとはいっても希美も人間であり、必ず隙はある───希美の癖はなんだったか。
それを考え、思い付いた結論は───。

希美が左手を尻にやり、人指し指でパンティを直した瞬間、遥は素早く一歩前に出て希美の頭に向かって蹴りを出した。踏み込んだ勢いと右足を高く上げた事でスカートは大きく捲れて空色の可愛いパンティが丸見えになったが、相手の姿を考えると恥ずかしいなんて言ってられない───。兎に角一撃を入れるチャンスは最初しか無いと思った結論だった。
格闘経験なんて無いのでリーチが少しでも長い蹴りを。バトミントンで鍛えた反射神経で一気に前に出る。風の動きを体で感じる事を重視し面で視界を塞ぐ事から狙うは頭部。そして希美の癖は風が変わったらまず風向きを確認する事と、お洒落なのか唯一身に付けているパンティの状態を凄く気にする事───。そこから導き出した攻撃だった。

その直後───。遥の視界から希美の姿が消えた瞬間、遥の体は吹っ飛ばされた。吹っ飛ぶといっても普通は"実際に全身が宙を舞う事は殆んど無く、それだけの威力があった"という喩えに用いられるものだが、この時の遥の体は実際に宙を舞った。そして地面に後頭部から背中にかけて叩き付けられ、そのまま勢い余ってパワーレスラーのラリアットを食らった時の様に足と腰が跳ね上がり、倒立に近い状態になった。スカートは完全に捲れ上がってパンティが丸見えになった。そしてそのまま崩れ落ち、足が一回跳ねて大の字になった。ボブカットの髪はボサボサに乱れて横向いた顔を隠し、ブレザーのボタンは外れてはだけ、スカートは捲れたままで空色のパンティが見えていた。

「あっちゃー、一撃……セコンドの意味無かったかぁ……」
霞は額に手をやり、姉の手加減の無さに呆れた。希美は、
「思ったより踏み込みが良かったわ。その分浅く入ったわ」
と言って川の中に放り込めなかった事を残念がった───とはいっても放り込むのは上半身だが。そして音を立てずに遥の横に移動した。その時、希美の乳房は全く揺れていなかった。それから遥の頭の横にしゃがみ、意識があるか確認した。
「う……くっ……」
遥がうめき声を上げたのを聞いて希美は、意識を失わないのはたいした根性だと感心した。

遥は希美との仕合でとっさに立てた作戦通りに踏み込んだら希美の姿は目の前から消え、その直後、河原に叩き付けられた。それからも意識はあったのだが体は全く動かせなかった。
漸くして体に感覚が戻って来て、目を開けてみると、飛込んで来たのはパンティ姿の希美の股間だった。桜流だから桜という洒落なのだろうか?今までは暗い中、離れていたので模様までは分からなかったが、僅かな光でもここまで近ければ分かるといった塩梅だった。フロントは桜の刺繍があり、中央上側左右にリボンが二つ、そしてクロッチとサイドは無地で色は全て桜色───。遥は何とも恥ずかしくなって視線を上に動かした。
二つの乳房の向こうに見える面をつけた顔が見えたが面は不思議な光を放っていた。

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